東京都写真美術館主催の「第4回恵比寿映像祭」の地域連携プログラム参加作品としてインスタレーションアーティスト、志村信裕の個展が東京・恵比寿にあるTRAUMARIS|SPACEにて2012年2月10日(金)から3月11日(日)まで開催される。「あいちトリエンナーレ2010」、「黄金町バザール」、「TERATOTERA祭り」などの芸術祭にて庇や道路、お風呂、屋根などあらゆる空間を駆使した映像作品を展示してきた。そして今回は久しぶりのギャラリースペースでの個展でも、彼の本領とも言える力作が展示される。
ring ring 2010 (c)Nobuhiro Shimura
今回の展示では、2009年に横浜美術館で展示された「Dress」を新たに上映する。Dressという動詞には「整える、仕上げる」という意味がもあり、女性だけでなく空間を変身させると試みた作品。無数のリボンでしつらえた光沢のある紗に投影されるのは、水面の波頭が永遠につくりだす襞(ひだ)。乱反射するゴールドと虹色の光が、白い空間を幻惑的に変える作品だ。注目の新作は、土地柄に因んだ「えびすさま」が、いつも通りの「あの」場所で、釣ったばかりのイキのいい鯛を抱え、満面の笑みを浮かべる極小の映像だ。見つけるとハッピーになれそうなえびすさまをを探してみよう。
またNADiff apartビルのエントランスの地面に、これまでの自作を違った趣で投影するセルフカヴァーの試みも展開する。アートマーケットの動向に影響を受けず、パブリックな場所に自身の世界観を投入してきた志村の強さは、町並みや建物をありのままに曇りのない眼差しで見つめ、そこへ彼のヴィジョン(幻燈)を放り込むための、緻密なリサーチと現場での創意工夫にある。しかしその視点には地域社会や時代への批評的な態度はなく、あくまで「表現者」としてその場所を眺め、空間や素材と親しむ志村のしなやかさが表現されている。「王様ははだかだ」と無邪気に歌う子どもの目がもっとも鋭角的に状況をとらえるように、志村の作品は図らずも展示場所の本質を照射し、そのデリケートな部分をやわらかな幻燈の光で浮かび上がらせる。
【展覧会情報】
志村信裕「恵比寿幻燈祭 Dress」
期間: 2012年2月10日(金)~3月11日(日)
場所:TRAUMARIS|SPACE
〒150-0013 渋谷区恵比寿1-18-4 NADiff A/P/A/R/T 3F
TEL: 03-6408-5522
時間: 16:00~24:00 (日曜14:00~22:00)
定休日: 月曜日
URL: http://www.traumaris.jp
NADiffビルエントランス(屋外)での上映: 2/10(金), 2/19(日), 2/26(日), 3/4(日), 3/11(日)
*日時や時間帯によって上映作品が異なる
恵比寿映像祭 地域連携プログラム
URL: http://www.yebizo.com/#pg_partner5
【アーティスト情報】
志村信裕(しむら・のぶひろ)
1982年東京都生まれ。2007年武蔵野美術大学大学院映像コース修了。身近な素材を被写体とした映像を路地裏や街の隙間、建造物の中に投影する、インスタレーションアートを展開する。「赤坂アートフラワー08」「黄金町バザール2009」、AIMY2009志村信裕展「うかべ」(横浜美術館グランドギャラリー・美術情報センター)にて作品を発表してきた。
URL: http://nshimu.blogspot.com/