東京都写真美術館では、展覧会「総合開館30周年記念 ペドロ・コスタ インナーヴィジョンズ」を、2025年8月28日(木)から12月7日(日)まで開催する。
ペドロ・コスタは、ポルトガルを代表する映画監督だ。1989年の長編デビュー作『血』により、ヴェネチア国際映画祭で注目を集めたコスタは、『骨』や『ヴァンダの部屋』で国際的な評価を確立。その後、『ホース・マネー』でロカルノ国際映画祭最優秀監督賞、『ヴィタリナ』で同映画祭金豹賞を受賞し、2023年には、短編ミュージカル映画『火の娘たち』がカンヌ国際映画祭で特別招待作品として上映され、高く評価されている。
コスタは、映画制作を軸に、美術とは距離をおきつつも、自身の映像作品を展覧会の形式でも発表しており、国際的に高く評価されてきた。展覧会「総合開館30周年記念 ペドロ・コスタ インナーヴィジョンズ」は、日本最大規模にして東京初となる、コスタの美術館での展覧会となる。
コスタの特徴は、ドキュメンタリーとフィクションの境界を揺るがす、独自の映像表現にある。たとえば『ヴァンダの部屋』は、旧ポルトガル領アフリカのカーボ・ヴェルデから移住し、リスボンのスラム街で暮らす女性の過酷な日常を映しだした作品であり、日本でも新たなドキュメンタリー表現として大きな反響を呼んだ。明暗のコントラストと、静謐で緻密な画面で構成されるコスタの映画は、社会構造に対する鋭い視点を提示してきたのであった。
コスタの作品を展覧会形式で紹介する本展では、映画『ヴァンダの部屋』などの撮影時の素材を用いたヴィデオ・インスタレーション《少年という男、少女という女》、映画『溶岩の家』の引用からなる《火の娘たち》、そして映画『ホース・マネー』の音楽シーンから構成された新作映像作品などを紹介。映画ではひとつの流れとして編集される映像を空間に散りばめ、映像、写真、音が交わる展示空間を繰り広げる。
また、コスタの作品と関わる、東京都写真美術館のコレクションも。映画『ホース・マネー』の冒頭には、アメリカにおけるフォトジャーナリズムの先駆者ジェイコブ・リースが、19世紀末から20世紀初頭にかけてニューヨークの貧困街を撮影した写真が登場する。会場では、同館所蔵のリース作品を交えるなど、コスタの映像表現とその背景にある歴史的・社会的文脈に光を当ててゆく。
展覧会「総合開館30周年記念 ペドロ・コスタ インナーヴィジョンズ」
会期:2025年8月28日(木)〜12月7日(日)
会場:東京都写真美術館 地下1階展示室
住所:東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
開館時間:10:00〜18:00
※木・金曜日は20:00閉館、8月28日(木)から9月26日(金)までの木・金曜日は21:00閉館
※入館はいずれも閉館30分前まで
休館日:月曜日(月曜日が祝休日の場合は開館し、翌平日に休館)
観覧料:一般 800円(640円)、学生 640円(510円)、高校生・65歳以上 400円(320円)
※( )は有料入場者20名以上の団体、同館の映画鑑賞券の所持者などの割引料金
※中学生以下、障害者手帳の所持者および介護者(2名まで)は無料
※サマーナイトミュージアム割引:8月28日(木)から9月26日(金)までの木・金曜日の17:00以降は、学生・高校生無料、一般・65歳以上は団体料金(学生証や年齢を確認できるものを要提示)
※オンラインで日時指定チケットを購入可
【問い合わせ先】
東京都写真美術館
TEL:03-3280-0099