建築家フランク・ロイド・ライトの展覧会、豊田市美術館で -「帝国ホテル」を軸に活動の展開を紹介

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企画展「帝国ホテル二代目本館100周年フランク・ロイド・ライト世界を結ぶ建築」が、愛知の豊田市美術館にて、2023年10月21日(土)から12月24日(日)まで開催される。その後、東京のパナソニック汐留美術館、青森県立美術館に巡回予定だ。

アメリカ近代建築を代表するフランク・ロイド・ライト

フランク・ロイド・ライト《帝国ホテル二代目本館第2案横断面図》
コロンビア大学エイヴリー建築美術図書館フランク・ロイド・ライト財団アーカイヴズ所蔵
©The Frank Lloyd Wright Foundation Archives (The Museum of Modern Art | Avery Architectural & Fine Arts Library, Columbia University, New York)

アメリカ近代建築の巨匠フランク・ロイド・ライト。ライトは、「カウフマン邸(落水荘)」や「グッゲンハイム美術館」などで知られる一方、現在その一部が移築保存されている「帝国ホテル二代目本館」や、東京の「自由学園明日館」など、日本でも作品を手がけた。とりわけ、1923年、関東大震災の発生当日に落成した帝国ホテルは、災禍を生き延び、ライトに大きな名声をもたらしている。

フランク・ロイド・ライト《『リバティー』誌のための表紙デザイン案柱サボテンとサボテンの花》
1927-28年米国議会図書館版画写真部蔵
Photo: Library of Congress,LC-DIG-ppmsca-84873

帝国ホテルは、広大な敷地に客室、劇場や舞踏会室などを備えた壮大なプロジェクトであり、ライトがふれてきた多様な風土や文化が反映されている。のみならず、ここでの試み、たとえば建築と周囲の景観の有機的な繋がり、あるいは部分と全体の呼応などは、以後のライト建築や都市計画において豊かに展開されてゆくこととなる。この意味で帝国ホテルは、ライトにとって重要な位置を占める建築であったといえる。

フランク・ロイド・ライト《ユニティ・テンプル正面『フランク・ロイド・ライトの建築と設計』》
1910年豊田市美術館蔵

企画展「フランク・ロイド・ライト世界を結ぶ建築」は、帝国ホテルを中心に、ライトの活動を紹介する展覧会。日本初公開となる建築ドローイングや図面などの展示を通して、さまざまな文化と交流しつつ、先駆的な活動を展開したライトの軌跡に光をあてる。

ライト建築、地形と風土

ライトにとって、地形や風土は建築と密接に結びつくものであった。たとえば、アメリカ中西部で着想したプレイリー・スタイルは、深い軒と水平的な広がりを特徴とし、建築の内部と外部が有機的に繋がる建築の例だといえる。また、「山邑邸」をはじめ、日本の変化に富んだ地形での設計体験は、代表作「落水荘」へと結実している。本展の序盤では、プレイリー・スタイルの代表例として「クーンリー邸」や「ロビー邸」を取り上げるとともに、「山邑邸」や「小田原ホテル」といった日本での実践を紹介する。

帝国ホテルとライト建築

帝国ホテルは、広大な敷地にさまざまな付属施設を備えており、その設計は都市計画にも似た壮大なものであった。そこには、アメリカ中西部からラテンアメリカ、ヨーロッパ、日本まで、ライトが経験した多様な風土と文化の要素の応用を見てとることができる。また、ライトが建築のみならず、家具や食器などのデザインにも総合的に携わった点も特徴だ。会場では、帝国ホテルの図面やドローイング、実際に使われていた家具などを展示し、その特徴に光をあててゆく。

全体と部分の呼応

フランク・ロイド・ライト《ゴードン・ストロング・プラネタリウム計画案透視図》
米国議会図書館版画写真部蔵
Photo: Library of Congress LC-DIG-ds-104232023

ライトの建築の特徴として、全体と部分の呼応関係を挙げることができる。小さなものから大きなものにまで展開できるユニット・システムによる建築は、その一例だ。また、ライトは地域に根ざした材料を用いる一方、コンクリートの可塑性にも目を向け、「グッゲンハイム美術館」に代表される一体型の巨大建築も手がけている。ミクロとマクロの振幅に迫る本章では、ライトが考案した工法によって実現可能となった、手頃な価格のコンパクト住宅「ユーソニアン住宅」、コンクリート・ブロックにレリーフ模様を施した「ミラード夫人邸(ラ・ミニアトゥーラ)」などを紹介する。

ライトと教育

フランク・ロイド・ライト《クーンリー・プレイハウス幼稚園の窓ガラス》
1912年頃豊田市美術館蔵

ライトと教育には深い関係があり、その背景として教育者であった母や祖母たちの影響、幼少期に自身が受けた教育などを挙げることができるとされる。本展では、ライトの教育思考にも着目し、「クーンリー・プレイハウス幼稚園」のためのドローイング、実際に使用されたステンドクラスや家具を展示するとともに、「自由学園」の図面や模型、同校の教育資料も紹介する。

展覧会概要

企画展「帝国ホテル二代目本館100周年フランク・ロイド・ライト世界を結ぶ建築」
会期：2023年10月21日(土)〜12月24日(日) 会期中に一部展示替えあり
［前期 10月21日(土)〜11月19日(日) / 後期 11月21日(火)〜12月24日(日)］
会場：豊田市美術館展示室8
住所：愛知県豊田市小坂本町8-5-1
開館時間：10:00〜17:30(入場は17:00まで)
休館日：月曜日
観覧料：一般 1,400円(1,200円)、高校・大学生 1,000円(800円)、中学生以下無料
※( )内は前売および20名以上の団体料金
※前売券の詳細、観覧料の減免対象者および割引などについては、美術館ウェブサイトを確認のこと

■巡回情報
・パナソニック汐留美術館
会期：2024年1月11日(木)〜3月10日(日)
住所：東京都港区東新橋1-5-1 パナソニック東京汐留ビル 4F
・青森県立美術館
会期：2024年3月20日(水・祝)〜5月12日(日)
住所：青森県青森市安田字近野185

【問い合わせ先】
豊田市美術館
TEL：0565-34-6610