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それでも毒や刺激を孕んだ表現は、多くの人々に向けた表現というよりは、少しアングラ・サブカルチャーの印象を受けます。長い間、その時々の若者にどのようにアプローチして、人気を集めたのでしょう?

これは、一言で説明するのが非常に大変でして(笑)。

僕は、僕のクリエーションを愛してくれる少数派のファンがいてくれればいいと考えていますし、僕も実際そういった少数派のファンの方に向けてイラストを描きたいと思っています。だって街行く人全員が僕のバッグを持っていたら、それはそれで気持ちが悪い光景でしょう(笑)?

だから、1960年代に化粧品会社の広告を手掛けていた時も、全ての人から共感を得るモノを作ろう!なんて微塵にも思ったことがなかった。“自分と宇野亞喜良の接点が一番深い”“私だけがこの作品を理解できる”というような、幻想を抱いてくれる少数派のファン達がいてくれればいいなと漠然と考えていました。それでも、僕がこうして長くやってこられたのは、そういう“少数派”だと思っていた人達が、全国のあちらこちらを探してみると、実は沢山いらっしゃったからなのかもしません。

宇野亞喜良にインタビュー - “笑わない”少女絵を描く理由、毒と耽美の世界に迫る|写真4

近年ですと、2016年には資生堂の「マジョリカ マジョルカ」とコラボレーションされていました。若年層からの反響もあったかと思いますが、その時代の“流行”を意識してから制作に取り掛かることはありますか?

昔はファッション雑誌を手にとることもあったけれど、最近では“さぁ、流行を調べるぞ!”なんてことは一切行わなくなりました。

先ほどの「メアリー」の衣装にも通じる話ですが、分析的に流行を取り入れるのではなく、その時の気分や頭に浮かんだ曖昧なイメージを形として描いています。例えば、街や電車の中で目に入った女の人たちのイメージが、僕の頭の中でごちゃ混ぜになって、1つの絵に繋がっていったり……。

宇野亞喜良にインタビュー - “笑わない”少女絵を描く理由、毒と耽美の世界に迫る|写真9

街の女性たちを見て、現代のファッションにどのような印象を持っていますか?

最近のファッションを見ていると、過去の流行に回帰することがありますよね。例えば、70年代に流行したものとか、その時代に一世風靡したものなんかが、今一度見直されていることがある。

定期的に、過去に回帰したファッションが流行りますよね。

そうなのですが、面白いところは、現代のファッションは、その当時に流行したものを全て取り入れている訳ではないんですよね。“あの時代の、ああいうところが好きだったな”みたいな、部分的な要素をピックアップしている。

だから、“今っぽい”イラストレーションを手掛ける時には、“きっと最近はこんな要素が欲しいんじゃないかな”って、僕がふと思いついた、現代のファッションの断片的なイメージから、部分的な要素を取り入れて洋服を描いたりしています。

宇野亞喜良展「言語的絵画」より
「怪奇小説を書く少女」原画8S
宇野亞喜良展「言語的絵画」より
「怪奇小説を書く少女」原画8S

少女の“顔”を描くときも、その時々に合わせたイメージを想像しながら描かれているのでしょうか?

そうですね…その割に僕が描く少女の顔って、あまり変化がないなぁなんて思うんですけど(笑)。それでも、僕が感覚的に掴んだ時代のイメージで、女性を描いてみたい、という意識はあると思います。

時代を感覚的に掴んで描く“顔”というのは、想像が難しいですね……。

例にとるならば、大正時代に流行した叙情画というジャンルの作品です。当時は竹久夢二や、中原淳一内藤ルネといった作家が活躍されていて、彼らが描く少女の絵は大変人気だったのですが、ここだけの話、僕には最初同じ顔に見えていたんですよね。

けれど、よくよく観察してみると、その時代によって少女の顔にニュアンスが加えられている。例えば、最初は細かった眉毛が、オードリー・ヘプバーンが出て来た時代に、濃くなっているとか。そういう彼らが感覚的に掴んだ時代の取り入れ方は、僕の中に通じるものを感じました。

宇野亞喜良にインタビュー - “笑わない”少女絵を描く理由、毒と耽美の世界に迫る|写真17

普遍的なスタイルと時代性をうまく取り入れた絵だからこそ、それぞれの時代で魅力的に見えるということですね。

結局何を面白がってもらえるかは、分析的には分からないことですけどね。未だに僕も、“きっと、こういうものが今いいんだろうな”と手探りの状態で作品を手掛けています。自分が良い!と直感的に感じたものを適当にやっていて、それを面白がってもらえれば一番嬉しいですけれど(笑)。

自身初となるブランド「QXQX-クスクス-」

多方面で活躍する宇野亞喜良は、2017年に自身初となるブランド「QXQX-クスクス-」もスタートさせている。店頭を飾るのは、ガーリーでスタイリッシュ、少しだけキャンダラスで劇的な世界観を投影したアイテムたちだ。続いて、そんなブランドが誕生した背景について詳しく話を聞いた。

「QXQX-クスクス-」より
QXQX-クスクス-」より

今までのお話からすると、ファッションや、文房具などの日用品と、宇野さんの手掛ける世界とは距離があるように思うのですが、「QXQX-クスクス-」をやろうと思ったのは何故でしょう。

昔デパートに「少女趣味コーナー」というものがあったのですが、着想源はそこからだと思います。その売り場には、少女がいかにも好きそうな、過剰な装飾を施したアイテムが並んでいたんです。例えばバラの花があしらわれた電話機とかね。

ある時、三島由紀夫さんのご自宅にも、バラの絵が付いた古風な電話機があったなんて話を伺って。僕は、三島さんが「少女趣味コーナー」に行って買い物をしている図を思い浮かべるわけですよ(笑)。どこか装飾趣味のある人は、「少女趣味コーナー」に行っていたわけだから、そこには確かな需要が存在していて。僕もそんな “日常とはちょっと違う”アイテムを売る自分のブランドを持てたら面白いなって思ったんです。

“日常とはちょっと違う”アイテムを作るにあたり、具体的なイメージはあったのでしょうか?

例えば、日常の文房具店では手に入らないような、ちょっとヨーロッパ風で、アンティックまがいのノートブックとか。可愛いとか、面白いとか多少怪奇趣味があるとか、僕が思い描くアイテムはそういうものでした。

大の大人から見ると“趣味が悪い”と馬鹿にされてしまいそうだったけれど、洗練されたジョークでも、冷やかしの笑いでも“クスクス”と思わず笑ってしまうような、そんな非日常的な空気を孕んだアイテムを作ってみたかったんです。

宇野亞喜良にインタビュー - “笑わない”少女絵を描く理由、毒と耽美の世界に迫る|写真5

実際に「QXQX-クスクス-」を手掛けてみて、どのような感想をお持ちですか。

あまり言葉にしたくない部分もあるんですが、やはりファッションもビジネスの側面があるから、決して一筋縄にはいかないこともあります。けれど、これはクスクスに限定したことではなくて、ファストファッションの店だとしても、その時代や流行によってメリット・デメリットが生じているのだと思う。

ファッションの仕組みを理解したうえで、モノを作っていくというのは、もちろん先が読めないようなリスクも存在するけれど、それでもやはり面白いと感じています。

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