企画展「和書ルネサンス 江戸・明治初期の本にみる伝統と革新」が、東京の印刷博物館にて、2021年7月18日(日)まで開催される。なお、4月28日(水)から臨時休館していたが、6月1日(火)より再開。
日本では、江戸期に本格化した印刷出版が、古典の伝統を継承する重要な役割を果たした。平安盛期に紫式部が書き残した『源氏物語』はその一例だ。原本が失われたのちも学者によって校訂校閲が繰り返され、中世のあいだ、数系統の手書き写本が書き残された。そして、絵巻や能などへと展開を見せつつ、江戸期の出版文化により、武家から町人まで幅広い人びとが『源氏物語』を楽しむようになったのだ。
企画展「和書ルネサンス 江戸・明治初期の本にみる伝統と革新」では、古代ギリシア・ローマの古典をいきいきと蘇らせたヨーロッパのルネサンスに喩えて、江戸期から明治初期にかけての印刷文化を「和書ルネサンス」として紹介。3つの部から、古典文学と印刷出版の関係性を探る。
第1部では、江戸初期に出版された『源氏物語』や『徒然草』などの古典作品を紹介。印刷本が浸透しつつあったこの時期、絵巻のような手写本がなおも作られていたのだ。
本展では、国内外に散逸して“幻の源氏物語絵巻”と呼ばれる「盛安本」のうち、2019年にフランスで発見された「夕顔」断簡を、大本山石山寺が所蔵する「末摘花」上巻とあわせて展示。また、作者である紫式部の最古の肖像画《紫式部聖像》も東京初公開となる。
木版術が進歩するにつれて、江戸文学は浮世草子、浄瑠璃本、句集、洒落本、滑稽本、読本、黄表紙など、多彩に展開した。第2部では、江戸の庶民のバラエティに富んだ文学に焦点を合わせ、文学をめぐるさまざまな印刷物を展示する。
近代化が推し進められた明治期には、海外文化の流入や言文一致の文体誕生などを背景に、物語の中身も影響を受けて変化した。第3部では、『魯敏孫漂流紀略』といった翻訳本、辞書や教科書、『ホトトギス』など新しい小説の発表の場となった雑誌を通じて、現代につながる読書の基盤が形成される過程を追う。
企画展「和書ルネサンス 江戸・明治初期の本にみる伝統と革新」
会期:2021年4月17日(土)〜7月18日(日)
※4月28日(水)〜5月31日(月)は臨時休館
会場:印刷博物館
住所:東京都文京区水道1-3-3 トッパン小石川本社ビル B1F
開館時間:10:00〜18:00(入場は17:30まで)
休館日:月曜日
入場料:一般 800円、学生 500円、高校生 300円
※中学生以下、70歳以上、身体障がい者手帳などの所持者と付添者は無料
※20名以上の団体は各50円引き
※5月5日(水・祝)こどもの日は無料
※内容は変更となる場合あり
■オンラインによる事前予約(日時指定券)制
・博物館ホームページより事前予約
・当日入場も可能(予約が定員に達していない場合のみ、先着順)
・電話での予約は不可
【問い合わせ先】
印刷博物館
TEL:03-5840-2300 (代表)