箱根の岡田美術館は、特別展「仁清と乾山  ―京のやきものと絵画 ―」を、2017年11月3日(金・祝)から2018年4月1日(日)までの期間開催する。

野々村仁清と尾形乾山は、江戸時代を代表する陶工で、京都で活躍した。今回は、岡田美術館が収蔵する仁清、乾山の全作品を展示。中には重要文化財2点も含まれる。

野々村仁清「銹絵星文茶碗」江戸時代
©岡田美術館蔵

野々村仁清は、茶人・金森宗和の指導のもと作品作りに励み、後水尾天皇をはじめとする公家や加賀・前田家など大名家に重用された。鮮やかな色絵陶器を完成させた「京焼の祖」と呼ばれる。仁清の作品は高い評価を受けており、現在国宝に2件、重要文化財に19件指定されている。今回展示する作品は、鮮やかな色絵の「色絵輪宝羯磨文香炉」、ろくろの高い技術によって作られた端正な形の「白釉黒刷毛目草文水指」、削ぎ落された表現に侘びの趣を感じられる「銹絵星文茶碗」、雁を写実的に象った「銹絵雁香合」など、仁清作品の代表的な特徴を表す作品6件が一堂に会する。

尾形乾山「色絵立葵図香合」江戸時代
©岡田美術館蔵

尾形乾山は、野々村仁清から作陶を学ぶ。宴席の器や兄である画家の尾形光琳との合作を制作して人気を得た。華やかな印象の焼物は、絵画と融合した革新的な器として評価された。晩年は作陶だけでなく絵画も手掛けた。紅白の立葵が鮮やかな「色絵立葵図香合」、最盛期の「色絵竜田川文透彫反鉢」、光琳との合作「銹絵白梅図角皿」など焼物19件、絵画2件を展示する。

見所は重要文化財に指定されている、野々村仁清の「色絵輪宝羯磨文香炉」と、尾形乾山の「色絵竜田川文透彫反鉢」だ。

重要文化財 野々村仁清「色絵輪宝羯磨文香炉」江戸時代 明暦3年(1657)
©岡田美術館蔵

野々村仁清の「色絵輪宝羯磨文香炉」は、柔らかなクリーム色の胎土に赤、青、緑で、密教法具である輪宝と羯磨(三鈷杵を十字に組んだ形の法具)を 交互に描き、金彩で縁取っている。底面に刻まれた「明暦三年/播磨入道/奉寄進/仁清作/卯月日」の文字と、大阪にある同形・同銘の作例の箱書きにより、「色絵輪宝羯磨文香炉」は、明暦3年つまり1657年4月に仁清が寺院に寄進したうちの1つであることが判明した。仁清の制作年が判明する作品は2点しか現存しない大変貴重な作品。品格と存在感のある作品だ。

重要文化財 尾形乾山「色絵竜田川文透彫反鉢」江戸時代
©岡田美術館蔵

尾形乾山の「色絵竜田川文透彫反鉢」は、赤や黄色の紅葉と、紅葉の名所である竜田川を表現した一作。形・文様・透かしが調和し、見る角度によって表情が変わる趣深い作品だ。樹や流水の太い線の下に目安の彫線があること、内側に葉の輪郭だけを残す部分があること、外側に葉脈だけの葉があることなどから、模索を重ねて制作したことが見受けられる、他に類を見ない貴重な作品。水流と紅葉で竜田川を表現した内側に対し、外側は紅葉のみで構成して主題を連想させるその創意が高く評価された。

11月中旬頃から見頃を迎える庭園の紅葉も、美術品とあわせて注目したい。

【詳細】
仁清と乾山  ―京のやきものと絵画 ― 
会期：2017年11月3日(金・祝)～ 2018年4月1日(日) 
休館日：12月31日(日)・1月1日(月)
主催：岡田美術館 
所在地：神奈川県足柄下郡箱根町小涌谷 493-1 
開館時間：9:00～17:00(入館は16:30まで)
入館料：一般・大学生 2,800円 小中高生 1,800円 
■関連イベント 
「講演会」
・京焼と琳派 
日時：2017年12月3日(日) 13:00～14:30
会場：5階ホール
講師：小林忠(岡田美術館 館長)
・仁清と乾山 ―絵と焼物という視点から―
日時：2018年3月18日(日) 13:00～14:30
会場：5階ホール
講師：伊藤嘉章(九州国立博物館 副館長)
※いずれも定員：80名、参加費無料(要入館料)
 ※申込方法 電話申込 TEL：0460-87-3931 ※定員になり次第締切 
「ギャラリートーク」
・小林館長によるギャラリートーク
日時：毎月第2水曜日 11:00～
※2017年11月8日(水)、12月13日(水)、2018年1月10日(水)、2月14日(水)、3月14日(水)
・学芸員によるギャラリートーク
日時：毎週金曜日 11:00～ ※2017年11月10日(金)～2018年3月23日(金)までの期間
※いずれも申込不要、参加費無料(要入館料)