特別企画展「軌跡のきらめき」が、神奈川・箱根ガラスの森美術館にて、2026年1月12日(祝・月)まで開催される。
人々は古来、自然が織りなす神秘的な色彩と輝きを、工芸作品に昇華してきた。その例が、ガラスや貝細工だ。特別企画展「軌跡のきらめき」では、虹のように輝く古代ガラスやラスター彩ガラス、華やかなヴェネチアン・グラス、貝殻のきらめきを活かした螺鈿細工など、古代から現代にいたる約90点の作品を紹介する。
ガラスは、約4,000年前に誕生し、紀元前1世紀頃の吹きガラス技法の発明を背景に、古代ローマ帝国時代に広がっていった。遺跡から出土する古代ガラスには、虹色に輝くものがあり、この幻想的な輝きは長年の風化作用によって生みだされる。これを「銀化」と呼ぶ。本展の第1章では、《長頸香油瓶》や《長頸瓶》など、銀化した古代ガラスを展示する。
宝石の色彩をガラスで表現することを試みたのが、ヴェネチアン・グラスだ。古代ローマ時代のガラス製法を源流として、イスラームのガラス技術を吸収し、ルネサンス期に大きく発展したヴェネチアン・グラスは、時の権力者や王侯貴族をも魅了してきた。第2章では、《マーブル・グラス・デカンター》や《オパールセント・グラス・コンポート》など、色彩豊かなヴェネチアン・グラスの数々を目にすることができる。
虹色の輝きを示すラスター彩は、金属を含んだ溶液をガラス表面に焼き付けることで、鮮やかなきらめきを人工的に表現する技法である。19世紀、遺跡で発掘された古代ガラスに触発されたガラス作家は、ラスター彩を応用し、ガラス作品を手がけるようになった。第3章では、巧みな造形と多様な光彩で仕上げたラスター彩ガラスを取り上げ、《花器》などを紹介する。
虹色に輝く貝殻の真珠層を用いた螺鈿細工は、日本には奈良時代、シルクロードを渡って大陸からもたらされた。漆器の装飾として貴族文化のなかで花開き、桃山時代にはヨーロッパにも輸出されている。さらに、明治時代に入ると、在留外国人や国外の人々に向けて、華やかで大型の調度品が作られ、人気を博した。第4章では、現代にいたるまで手がけられ続ける螺鈿細工に着目し、《螺鈿細工蒔絵洋櫃》や《青貝細工ビューロー》などを公開する。
特別企画展「軌跡のきらめき」
会期:2025年7月18日(金)〜2026年1月12日(祝・月) 会期中無休
会場:箱根ガラスの森美術館
住所:神奈川県足柄下郡箱根町仙石原940-48
開館時間:10:00〜17:30(入館は17:00まで)
入館料:大人 1,800円、高校・大学生 1,300円、小・中学生 600円、65歳以上 1,700円
【問い合わせ先】
箱根ガラスの森美術館
TEL:0460-86-3111