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書家・井上有一“強烈な書とグラフィックデザイン”関わりをひもとく展覧会、渋谷区立松濤美術館で

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展覧会「井上有一の書と戦後グラフィックデザイン 1970s-1980s」が、東京の渋谷区立松濤美術館にて、2025年9月6日(土)から11月3日(月・祝)まで開催される。

井上有一、書とグラフィックデザイン

井上有一 《花》 1957年 墨・紙 個人蔵
© UNAC TOKYO
井上有一 《花》 1957年 墨・紙 個人蔵
© UNAC TOKYO

井上有一(いのうえ ゆういち)は、脈打つような毛筆に墨液が迸る、強烈な作品を残した書家だ。第二次世界大戦後に書家としてデビューした井上は、欧米の抽象絵画の隆盛を背景に活躍。日常を生きる庶民の立場から自身の書をつくりあげる一方、1970年代以降、その書はグラフィックデザインとのコラボレーションのもと、一気に大衆のもとに広がっていったのであった。

井上嗣也 「COMME des GARÇONS
井上嗣也 「COMME des GARÇONS '96-'97AUTUMN WINTER DM」 1996年
AD・D:井上嗣也 A:井上有一(ウナックトウキョウ) CD:川久保玲 ADV:COMME des GARÇONS
© UNAC TOKYO

展覧会「井上有一の書と戦後グラフィックデザイン 1970s-1980s」では、書の作品やポスターなどを一堂に集め、井上の足跡を紹介。書とグラフィックデザインという、一見すると非自明な関係がどのように生まれ、何を目指したのかを探ってゆく。

書家としてのデビューと活躍

井上有一 《噫横川国民学校》 1978年 墨・紙 群馬県立近代美術館蔵
© UNAC TOKYO
井上有一 《噫横川国民学校》 1978年 墨・紙 群馬県立近代美術館蔵
© UNAC TOKYO

井上の創作の原点にある出来事が、太平洋戦争末期の東京大空襲であったという。1916年東京に生まれ、教師として働いていた井上は、1945年、勤務中の小学校で爆撃を受け、一時は仮死状態に陥っている。しかし、多くの人々が犠牲となるなか、井上は奇跡的に息を吹き返した。井上は戦後を、戦争をどうにか生き延びたひとりの人間として生きてゆくこととなる。

井上有一 《愚徹》 1956年 墨・紙 国立国際美術館蔵
© UNAC TOKYO
井上有一 《愚徹》 1956年 墨・紙 国立国際美術館蔵
© UNAC TOKYO

戦後の1949年、井上は書家としてデビュー。1950年代には、書や生花、日本画などにおいて、伝統美術を革新する動きが高まっていた。井上もまた、こうした流れのなかで注目を集めている。本展では、1956年のサンパウロ・ビエンナーレで評価された《愚徹》など、初期の代表作を紹介。また、冷やして膠を固めることで筆の毛の痕跡が克明に浮かびあがる、独自の技法「凍墨」を用いた《母》など、1960年代の作品も展示する。

グラフィックデザインとの結びつき

井上有一著・福田繁雄造本 『花の書帖』 求龍堂 1971年 個人蔵 © UNAC TOKYO
井上有一著・福田繁雄造本 『花の書帖』 求龍堂 1971年 個人蔵
© UNAC TOKYO

井上の書はやがて、グラフィックデザインと結びつくこととなる。その始まりとなったのが、1971年に出版された井上の初の作品集『花の書帖』だ。同書では、ユーモア感覚あふれるデザインで知られるデザイナー・福田繁雄が装幀を手がけている。以後、名だたるデザイナーが井上の作品を用いて印刷物を製作するようになった。

井上嗣也 「1986年正月/貧」ポスター 1986年 AD・D:井上嗣也 A:井上有一(ウナックトウキョウ) C:糸井重里 PL:對馬壽雄 ADV:パルコ 個人蔵 © UNAC TOKYO
井上嗣也 「1986年正月/貧」ポスター 1986年
AD・D:井上嗣也 A:井上有一(ウナックトウキョウ) C:糸井重里 PL:對馬壽雄 ADV:パルコ 個人蔵
© UNAC TOKYO

1980年代以降には、デザインや広告をとおして文化やイメージを売ることを図った、いわゆるセゾン文化のなかで、井上の書が積極的に紹介されていったのだ。また、エディトリアルデザインで知られる杉浦康平は、井上の書を、身体運動とそこから生まれる文字の生命力という視点から探り、豪華な作品集を手がけている。会場では、《貧》といった井上の作品や、パルコなどのポスターを一堂に集め、井上の書とグラフィックデザインの関わりに光を当ててゆく。

自身の体験と記憶を留めおく

井上有一 《夢幻記》 ベニヤ板・油彩 1979年 個人蔵 © UNAC TOKYO
井上有一 《夢幻記》 ベニヤ板・油彩 1979年 個人蔵
© UNAC TOKYO

井上は1985年に世を去る数年前、自身の経験や記憶に基づいて作品を手がけている。たとえば《噫横川国民学校》は、戦争末期、空襲に遭った自身の壮絶な経験をもとに書かれたものだ。また、《夢幻記》では、あたかも記憶をものとして留めおくかのように、幼少期の思い出を細かな字で書きこんでいる。本展では、《噫横川国民学校》を特別に公開するとともに、《夢幻記》をはじめ最晩年の作品を展示する。

展覧会概要

展覧会「井上有一の書と戦後グラフィックデザイン 1970s-1980s」
会期:2025年9月6日(土)〜11月3日(月・祝)
[前期 9月6日(土)〜10月5日(日) / 後期 10月7日(火)〜11月3日(月・祝)]
会場:渋谷区立松濤美術館
住所:東京都渋谷区松濤2-14-14
開館時間:10:00~18:00(金曜日は20:00閉館)
※入館はいずれも閉館30分前まで
休館日:月曜日(9月15日(月・祝)、10月13日(月・祝)、11月3日(月・祝)は開館)、9月16日(火)・24日(水)、10月14日(火)
入館料:一般 1,000円(800円)、大学生 800円(640円)、高校生・60歳以上 500円(400円)、小・中学生 100円(80円)
※( )内は10名以上の団体および渋谷区民の入館料
※土・日曜日、祝休日は小・中学生無料
※毎週金曜日は渋谷区民無料
※障がい者および付添者1名は無料
※リピーター割引あり

【問い合わせ先】
渋谷区立松濤美術館
TEL:03-3465-9421

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