特別展「積層する時間:この世界を描くこと」が、金沢21世紀美術館にて、2025年4月29日(火・祝)から9月28日(日)まで開催される。
人々が今生きている世界は、過去の膨大な時間の重なりの上にあるといえる。こうした時間の中には、科学的な進歩や社会的・文化的な展開など、人々の生をより豊かにするものがある一方、紛争や貧困、環境問題など、人々を取り巻く深刻な問題をも孕んできた。
特別展「積層する時間:この世界を描くこと」は、過去の歴史や記憶、現在、そして未確定な未来にまたがる、さまざまな時間に着目する展覧会。アンゼルム・キーファーやゲルハルト・リヒター、今津景ら16作家による、時間の諸相とその複雑さを探究する作品64点を取り上げ、世界の多様な在り方を浮かびあがらせてゆく。
「時間」とともに本展のテーマとなるのが、「描くこと」だ。美術のなかでもっとも古く、基本的な表現のひとつである描くことは、今なお美術の中心部を成している。実際、ドローイングを何枚も描いたり、絵具のレイヤーを重ねたりと、描く方法が多様化するばかりでなく、描いたイメージを連続されるアニメーションや、木を彫って画面を作る版画もまた、描くことのひとつだといえる。このように描くことは、それ自体に時間を要し、素材やイメージを幾重にも重ねるものなのだ。
本展では、絵画、ドローイング、アニメーション、版画といった「描くこと」を通して、過去の出来事、土地が持つ歴史や神話、植民地化や戦争の歴史、風景や自然に宿る時間の流れなど、複数の積層した「時間」を浮かびあがらせる作品を紹介。たとえば、ドイツの歴史や文化などを題材に、濃密な物質性を示す巨大な絵画を手がけてきたアンゼルム・キーファーや、写真と絵画、現実と虚構を行き交いつつ、「見ること」を探究してきたゲルハルト・リヒターの作品を、表現媒体としての歴史に着目しつつ展示する。
また、インドネシアの歴史や神話、生態系にまつわるイメージを重ね、油彩で描きだす今津景や、バリの芸術と文化にまつわる神話や誤解に光をあてるチトラ・サスミタを、「女性と神話:植民地化された土地」というテーマのもとで紹介するなど、現代社会が孕む課題と時間の関わりを、「描くこと」をとおして掘り下げるアーティストを紹介する。
特別展「積層する時間:この世界を描くこと」
会期:2025年4月29日(火・祝)〜9月28日(日)
会場:金沢21世紀美術館 展示室7〜12・14
住所:石川県金沢市広坂1-2-1
開場時間:10:00〜18:00(金・土曜日は20:00まで)
※観覧券販売はいずれも閉場30分前まで
休場日:月曜日(5月5日(月・祝)、7月21日(月・祝)、8月11日(月・祝)、9月15日(月・祝)は開場)、5月7日(水)、7月22日(火)、8月12日(火)、9月16日(火)
観覧料:一般 1,200円(1,000円)、大学生 800円(600円)、小学・中学・高校生 400円(300円)、65歳以上 1,000円
※( )内はウェブ販売料金および20名以上の団体料金
※本展観覧券は、同時期開催のコレクション展「コレクション展1 マテリアル・フィーバー」(5月24日(土)〜9月15日(月・祝))との共通料金
■出品作家
淺井裕介、サム・フォールズ、藤倉麻子、今津景、風間サチコ、ウィリアム・ケントリッジ、アンゼルム・キーファー、近藤亜樹、松﨑友哉、西村有、ゲルハルト・リヒター、チトラ・サスミタ、ヴィルヘルム・サスナル、杜珮詩、リュック・タイマンス、ユアサエボシ
【問い合わせ先】
金沢21世紀美術館
TEL:076-220-2800