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映画『RRR』の着想源について教えてください。

今回、主人公のモデルとなった二人は、どちらもイギリス植民地時代にインドの独立運動の英雄として知られる実在する人物(※1)です。彼らは僕の出身地である<テルグ語>が話されている地域では非常にポピュラーなのですが、他の州ではあまり知られていないかもしれませんね。インドは、各州によって言語が違う大きな国ですので、その土地にまつわる物語というのは、その土地の人でしか触れることが難しいんですよ。

今回は僕が二人の英雄と同郷という縁があって、その物語に惹かれていたのですが、二人にまつわるリサーチを進めていく中で、とある“偶然”に気付いてしまったんですね。それは別々の州の出身である二人が、20歳過ぎの頃に自分の故郷を出たあと、“空白の2,3年”が共通してあること。事実、現実には二人は出会うことなく生涯を終えてしまったのですが、「もしも二人がその時代に出会っていたら…?」と、僕は想像を巡らせずにはいられなかったのです(笑)。その大胆な発想から誕生したのが、今回の『RRR』というわけ。時代背景も、ふたりが名を残すきっかけとなったイギリス植民地時代を選ぶことにしました。

※1)A・ラーマ・ラジュ(1897か1898―1924)と、コムラム・ビーム(1900か1901―1940)。

S.S.ラージャマウリ インタビュー|写真9

実在の人物をモデルにしたフィクション作品ということですね。主人公のラーマとビームの二人は、それぞれ水や火を司るものとして描かれているのも印象的でしたが、これは何かインド神話にまつわるメタファーも含まれているのでしょうか?

ラーマは「ラーマーヤナ」に登場するラーマ王子、ビームは「マハーバーラタ」の主人公である5兄弟の次男・ビーマのイメージと掛け合わせてはいますが(※2)、特に何かの神話のメタファーとして描いているわけではありません。

それよりも、彼らを象徴する火や水といった要素は、対立する立場に置かれながら、友情で結ばれる二人の関係性をシンプルに表現したものです。──具体的には、火が強すぎると水はなくなってしまうし、逆に水が強ければ火は消えてしまうという、とても危険な組み合わせであることを意味している。けれど一方で、もし火と水が上手く融合すれば熱を帯びた“蒸気”となり、非常にパワフルな力になりうることも示唆しているのです。

※2) 「ラーマーヤナ」「マハーバーラタ」は、インドを代表する2大叙事詩。

<ストーリーテリングを含むダンスやアクション>

S.S.ラージャマウリ インタビュー|写真8

二人の息のぴったりなダンスやアクションシーンも、『RRR』ならではの見どころです。

これらのシーンには、もちろんエンタメ要素も含まれていますが、観客の感情を突き動かす演出を共通して心がけています。インド映画に欠かせない歌や踊り、そして僕が得意とするアクションシーンというのは、実は諸刃の刃にもなりかねない。つまり物語を動かすはずが、時として邪魔するような作用も持ち合わせているんですよ。

だからダンスだけでなくアクションにも、観客が感情を乗せられるようなストーリーテリングを持たせることを意識しました。

具体的にいいますと?

例えば今回のアクションシーンでは、主人公二人による“肩車戦法”に是非注目してほしいです。二人が合体することで、4本の手と4本の足を持った“巨人”に見立てているんですけど、これは物理的だけでなく二人の感情も一つに融合させている。そのため物語をより大きく突き動かす力を生み出し、観客たちをより物語の世界へと誘う作用を期待することができます。

S.S.ラージャマウリ インタビュー|写真16

アクションシーンも物語の一部となっているんですね。

はい。もちろん観客がワッ!と一体となって盛り上がるような要素も取り入れたかったので、今回は2000人程のエキストラと、VFX技術を用いたスケールの大きなアクションシーンにも挑戦しました。これが実は想像以上に大変で、そのシーンだけで40日も費やしたほど…。VFX技術による“仮想の敵”を想定したうえで、膨大な数の人間が戦い、鬼気迫る演技を映すという撮影は、非常に骨が折れしましたが、最終的に満足度も一番高いシーンに仕上げることができました。

<監督業について>

S.S.ラージャマウリ インタビュー|写真11

そんな壮大な時間を費やす映画制作をするうえで、一体どのようにモチベーションを保っているのでしょうか?

ある意味“恐れ”という感情に動かされているかもしれませんね。つまり、この映画にどれだけの人が関わっているか、そして自分が彼らの期待に応えることができなかったら、どうしよう…?という恐れ。どれだけ制作時間が果てしなくて心が折れても、僕と一緒に映画を作っている仲間たちを想うと、途中で放りだすことは絶対にできないですよ。

そういった大きなプレッシャーを抱える中で、監督業の面白さとは何でしょう?

苦労が全て報われる瞬間、つまり僕の想像が映像となって具現化し、完成したものを観れた瞬間の興奮・満足度というものは、本当に言葉では言い表すことができないものです。

先ほど僕は「恐れ」という言葉を使いましたが、これは必ずしもネガティブなものではないと考えていて。そういう気持ちがある中でも、ひとつひとつ出来ることを積み上げていく作業というのは、一種瞑想的な要素があると思うんですよね。その先に見える素晴らしい景色というのは、監督業にしかたどり着けない醍醐味であるとも思います。

S.S.ラージャマウリ インタビュー|写真12

『バーフバリ』シリーズを含め、監督の作品は世界的にも注目されていますが、人々を惹きつける魅力は何だと思いますか?

わかりません(笑)。この質問は『バーフバリ』の時にもよく聞かれましたが、良いストーリーは、世界中でも共通して心に響くのではないでしょうか。つまり⾔語や文化が肌の⾊が違うとしても、⼈間の関係性というのは普遍的であり、国境を越えても、それぞれの感情に響くものがある。

そしてビジュアル的な面でいうと、僕の映画は東洋より西洋的なテクニックを使うことが多いですね。常により良い映画を作るために、あえて外に意識を向け、学ぶ姿勢を忘れないことも大事にしています。

<映画『RRR』あらすじ>

舞台は1920年、英国植民地時代のインド。英国軍にさらわれた幼い少女を救うため、立ち上がるビーム。大義のため英国政府の警察となるラーマ。熱い思いを胸に秘めた男たちが運命に導かれて出会い、唯一無二の親友となる。しかし、ある事件をきっかけに究極の選択を迫られることに。彼らが選ぶのは、友情か?使命か?

作品詳細

映画『RRR』
公開日:2022年10月21日(金)
監督・脚本:S.S.ラージャマウリ
原案:V・ビジャエーンドラ・プラサード
出演:N・T・ラーマ・ラオ・Jr.、ラーム・チャラン
配給:TWIN
製作年:2022年
製作国:インド

■映画『RRR』入場者特典
主人公・ビームとラーマのダイナミックな姿を写し出したオリジナルポストカードを、第1弾入場者特典として全国限定7万枚配付。また、IMAXの入場者には、オリジナルA3ポスターを限定2万5千枚プレゼント。いずれもなくなり次第終了。

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