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映画『ミッキー17』監督ポン・ジュノにインタビュー、“名作を生み出せるかも”という期待を胸に

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映画『ミッキー17』が、2025年3月28日(金)より公開される。監督は、『パラサイト 半地下の家族』で第72回カンヌ国際映画祭パルム・ドールを受賞した韓国の巨匠ポン・ジュノ。公開に先駆けて、ポン・ジュノへのインタビューを実施した。

“使い捨て人間”による逆襲エンターテインメント『ミッキー17』

ポン・ジュノの映画『ミッキー17』“使い捨て人間”の危険任務と怒涛の逆襲、主演ロバート・パティンソン

映画『ミッキー17』は、⼈類発展を使命に掲げる巨⼤企業のもとで働く男、ミッキーの危険な任務を描いた逆襲エンターテインメント。内容をよく読まずに契約を交わしてしまったミッキーは、命を落としては新たな⾝体で何度も再⽣する究極のミッションに就くことに。開発チームの先鋒として、そして⼈類の先鋒として、前⼈未到の氷の惑星“ニフルヘイム”を舞台に、異常なミッションへと立ち向かう。

ポン・ジュノにインタビュー

ポン・ジュノ インタビュー|写真3

主演のロバート・パティンソンは、脚本を読んで「スケールの大きさと、極めてニッチなユーモアが共存していて、これらが共存できるのか不思議でたまらなかった」と語っていました。脚本を作る際に心がけていることを教えてください。

実はスケールと小さなユーモアを織り交ぜようという意識は全くないんです。脚本を書き終えた時、自分でもどういう風に混ざっているのかすぐには理解しきれていなくて。もしかすると、自分が散漫な性格なせいで混ぜている自覚がないだけかもしれませんが…(笑)。むしろ、全体を単一なトーンやジャンルで描くことが難しいなと感じています。

自然と様々な要素が共存して出来上がっているのですね。

はい。『ミッキー17』はSFではあるけれど、政治的風刺もあるし、冒険談でもある。そんな中で、一貫して人間は愚かだということを描いています。それがこの映画全体のトーン&マナーでありテーマですが、愚かなことを繰り返している人間の姿を描いている分、ユーモラスな面が際立ったのかと思います。

それから、この映画の中心はあくまでミッキーです。SFも冒険談も、周りにいる愚かな行いを繰り返す人間たちすべてがミッキーを取り巻く状況のひとつ。そんな中で、ミッキーは破壊されず、ナーシャからの愛によって救われた。彼は愛に守られたんです。絶望的な環境の中でも芽生える不変の愛というのはとても重要で、脚本を書いている最中、これはミッキーとナーシャのラブストーリーでもあるなと感じました。とはいえ、この映画全体がメロドラマというわけではない、というのは強調させてください。

人間とは何か、人間らしさとは何なのか

ポン・ジュノ インタビュー|写真4

“人間の愚かさ”がひとつのテーマであり、ミッキーは“使い捨て人間”のため、とことん雑に扱われています。ミッキーは“人体複製(プリンティング)”の対象となりますが、ポン監督はなぜこの技術に惹かれたのでしょうか。

“人体複製”というのは、最も人間の尊厳が損なわれている技術であり、悲劇に満ちている概念です。最先端の技術ではあるけれど、実際にそれを使用する人間、そして使われる対象のミッキーは、その技術をはっきりと理解できていないですよね。たとえば、私たちは車を運転することができても、ボンネットの中のことまではまるで理解できていないのと同じです。私たち人間はハイテクなものに囲まれる時代を生きているけれど、実際にはどういうものなのか理解できていないことが多い…知らずに使ってしまっている、もしくは使われてしまっている…そんな現代の、哀れな人間の姿に惹かれたんです。

実際、作中に出てくる“人体複製”機を使う人たちも未熟で滑稽です。最先端の技術を扱う科学者チームでさえも、床につまずいてミッキーの頭に繋がっているコードを抜いてしまい、また差し込んで…というふうに、危機感をもって管理しきれていない。こういった、エラーを起こしてしまうというのも人間らしいですけれどね。

ポン・ジュノ インタビュー|写真2

ミッキーの命が軽視されている、ということを強く強調するために意識したことはありますか?

やはり“クリーパー”の存在でしょうか。ミッキーの場合、彼たったひとりに全ての役目を負わせています。命の危険性がある仕事をさせて、何度も殺し、実験する。でも周りの人たちは、彼一人にそれを押し付けているので、安全性は確保される。すでに良心の呵責や自責の念を抱かないほどに麻痺している、というのもポイントです。「これは君の仕事だろ。契約したんだから仕方ないじゃないか」といったふうにね。

※クリーパー:ミッキーたちが向かう氷の惑星“ニフルヘイム”に生息する未知の生物。

シンプルな質問ですが、結局のところクリーパーって何なのでしょうか。

愛です!笑

“クリーパー”は、たった1匹の赤ちゃんを奪い返すため、命を助けるためだけに全員が立ち上がるんです。母親である“ママ・クリーパー”が先導に立ち、運命共同体じゃないですけど人間に立ち向かっていく。

宇宙船内で開拓のリーダーを務める独裁者で、マーク・ラファロ演じるマーシャルと、ママ・クリーパーの対比でもあります。どちらが政治的に優れたリーダーであるか、一目瞭然です。

「名作を生み出せるかも」という期待

ポン・ジュノ インタビュー|写真6

映画製作にあたり、ポン監督は普段の日常生活の中で常にアンテナを張り、身近なところからインスピレーションを得ているそうですね。この作品においては、日常のどのようなところからヒントを得て、どのように作品づくりに活かしたのでしょう?

“クリーパー”は、実はクロワッサンが着想源です。朝食はパンを食べるのが好きなのですが、クロワッサンを食べている時にふと、「これが虫のように動き出したらおもしろいな」と思い、クリーチャーデザインの方にお伝えして“クリーパー”ができあがりました。

でもこの子は(ぬいぐるみを触りながら)クリームパンみたい。中にクリームが入ってるみたいじゃないですか?(笑)

ポン・ジュノ インタビュー|写真10

話を戻すと、“クリーパー”は原作ではムカデのような生物という描写がされていましたが、単にムカデのような形だとおもしろくないなと思ったので。愛らしい印象を抱けるようなデザインにしましたが、冒頭で初めて出てくるシーンでは恐ろしい生物として描きました。皆さんを怖がらせたかったので(笑)。

最後に、「監督」とは?また、監督が思う映画作りの楽しさについても教えてください。

監督という職業は、絶対におすすめしません(笑)。大変だし本当に難しい。様々なプロセスを乗り越えていかないといけないので。そんな中でも楽しいと思えるのは、少し荒唐無稽にきこえるかもしれないですが、サントラのタイトルをつける時です。映画のサントラにはひとつひとつタイトルをつけていかなくてはならないのですが、その時間がとっても気楽で、とにかく楽しい作業なんです。その作業の間は誰にも邪魔されない、干渉されない自由な時間なので。こんな話誰も興味ないかな(笑)。

ポン・ジュノ インタビュー|写真9

では、映画作りのモチベーションは??

名作を生み出せるかもしれないという期待でしょうか。期待に満ちながら映画をとるんですよ、でも完成してみてみると、いろんな後悔が残るんです。後悔が積もり積もっていく。そして次に新しい作品を撮るときには、後悔がない映画がとれるかもしれない、次は名作になるかもしれない…そんな気持ちがモチベーションになっています。

いつか満足できるときが訪れる、ということでしょうか。

そんな時はこないかもしれないですね(笑)。まだ8作しか作っていないですが、これまで自分が本当に満足できた作品はないんです。ただ、満足できた“シーン”ならある。その時の喜びで、耐えしのぐことができているのかもしれないです。

【作品詳細】
映画『ミッキー17』
公開日:2025年3月28日(金)
監督・脚本:ポン・ジュノ
出演:ロバート・パティンソン、ナオミ・アッキー、スティーブン・ユアン、トニ・コレット、マーク・ラファロ
配給:ワーナー・ブラザース映画
原作:エドワード・アシュトン「ミッキー7」
原題:Mickey 17

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