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★歌舞伎は「かぶき踊り」から始まった
歌舞伎の発祥は、出雲の阿国によって京都で始められたとされる「かぶき踊り」。このかぶき踊りの人気を受けて、女性たちの「女歌舞伎」、少年たちの「若衆歌舞伎」が始まるが、いずれも風紀を乱すという理由で幕府が禁止にする。そこで誕生したのが、成人男性中心の「野郎歌舞伎」。男性だけが演じる過程で「女方(おんながた)」も生まれ、今日の歌舞伎の基礎ができ上がったとされる。

三谷幸喜 インタビュー|写真14

Q.では、歌舞伎はどういった特徴をもった演劇だと捉えていますか。

幸四郎:歌舞伎は音楽的な演劇です。歌や音楽がたくさん組み込まれているというだけではなくて、音楽は生演奏で、言葉の言い方も、あまり感情的な表現ではないため、少しミュージカルに近い感覚でしょうか。

あとは、色彩が豊かであることは歌舞伎の特徴です。元々、衣裳、道具含めて色彩というのは重要な要素。歌舞伎だからこの色を入れなきゃいけないという決まりはないですけど、色彩は歌舞伎という表現方法の重要な引き出しの一つだと思います。

★BGMや効果音も生演奏
歌舞伎音楽は、三味線・お囃子(はやし)・小鼓・太鼓・笛などで演奏され、芝居に合わせた生演奏でBGMや効果音が付けられる。

みんなが共通事項を持っているから少ない稽古でも形にできる

三谷幸喜 インタビュー|写真11

Q.染五郎さんは、本作で何か新しい発見はありましたか。

染五郎:僕は、新作に出させていただくことも、こういったリアルなお芝居に参加するのも初めてでしたので、すべてが新鮮でした。歌舞伎座の舞台で、洋服を着てお芝居をしているということも、これまでにない経験だったので不思議な感じがしました。中でも一番驚いたのは、稽古が1か月あるということです。

Q.1か月の稽古は短いのですか?長いのですか?

染五郎:とても長いです。古典作品の場合は、全体のお稽古は基本的に3、4日。自分は小さい頃からこれが当たり前だったので、本当にびっくりしました。

三谷幸喜 インタビュー|写真15

幸四郎:というのも、歌舞伎は毎月公演があり俳優はほぼ一年中舞台に立っていますから、1か月の稽古期間を設けることが現実的にできないんですよね。例えば、来月共演する方が地方公演を行っていたら、必然的に興行の合間しか全体で集まる時間はない。じゃあ、3~4回の稽古で初日を開けられるまでどのように持って行くかというところが大切なんです。

決して公演の数日前に役をいただくわけでないですから、個々が準備してきたものを本番前に合わせて形にしていく。みんながそれぞれの作品の知識や歌舞伎の表現方法についての共通事項を持っているということが、少ないお稽古の中で一つの形にできている理由だと思います。

Q.新作の場合、稽古日数が必要な理由は?

幸四郎:古典作品の場合、まず(先輩に)教えていただいた型にたどりつくことが1つ目のゴール。そこからはその型をさらに進化させるなり、自分なりのものを作り上げるなり、各々の目指すところに進んでいく。

しかし、新作の場合は、一つ目のゴールを探すところから始まるんです。今日はこうやってみよう、明日はこんな風にやってみようって繰り返して、どこに向かったらいいんだろうという状態から最終的に一つの形をみつけていく。そのため、長いお稽古が必要なんです。

三谷幸喜 インタビュー|写真16

Q.古典歌舞伎と新作歌舞伎を比較するのも、鑑賞の楽しみが広がりそうですね。その他にも初心者でも歌舞伎を楽しむためのヒントはありますか?

幸四郎:メイクを含めた衣裳に着目して鑑賞しても面白いかもしれません。歌舞伎は、役柄や作品の中でのキャラクターのポジションを衣裳、メイク、かつらで表現している作品が多い。

例えばお化粧に関しては、主役だけが白塗り、または反対に主役だけが肌色だったりすることで、作品の中で役の存在感を引き立たせていく。衣裳やメイクは歌舞伎において、美しさを追求するだけではなく、役を表す方法の一つなんです。

江戸時代から続く作品と新作作品が共存する、伝統芸能「歌舞伎」

三谷幸喜 インタビュー|写真9

Q.実際に本作のような新作歌舞伎の場合、古典歌舞伎に比べて若い世代の関心も集めているように感じますか?

幸四郎:本作に関していうと、原作がみなもと太郎さんということもあって、やはりお客さんの年齢層は高いように感じられました。けれど「ワンピース」や「ナルト」などを原作にした新作歌舞伎の場合は、今まで全く歌舞伎と接点がなかった若い人も、”お気に入りのコミック”という共通項が生まれるだけで、歌舞伎を鑑賞するきっかけになる。

三谷幸喜 インタビュー|写真10

Q.”共通項”が、歌舞伎の世界に触れるきっかけを作る、と。 改めて、今お二人が伝えたい歌舞伎の魅力について教えてください。

染五郎:江戸時代に初演された古典作品でも寸分違わず同じ演出で行われているのではなく、時代にあわせて、常に変化し続けているのが歌舞伎の魅力なんです。敷居が高いというイメージを持たれるかもしれませんが、進化し続けているということに気づいていただけると、歌舞伎はもっと面白くなるかもしれません。

また僕自身、そういった歌舞伎の姿勢を意識しながら、役者としてこれからも歌舞伎の魅力を発信していきたいと思います。

★江戸時代から続く古典歌舞伎
古典歌舞伎は、江戸時代よりも古い時代の事件を描いた「時代物」と江戸時代の主に市井の人の生活を描いたリアルな演劇「世話物」の大きく2つに分けることができる。どちらも江戸時代にはすでに上演され、今なお受け継がれている。

左) 市川染五郎  衣装:ブリオーニ ジャパン(TEL:03-6264-6422)、ヘアメイク:KUBOKI(ThreePEACE)
スタイリスト:川田真梨子
左) 市川染五郎 衣装:ミスターハリウッド(TEL:03-5414-5071)、ヘアメイク:AKANE
右)松本幸四郎 衣装:ブリオーニ ジャパン(TEL:03-6264-6422)、ヘアメイク:KUBOKI(ThreePEACE)
スタイリスト:川田真梨子

幸四郎: 歌舞伎には、まだまだ可能性が山ほどあると感じています。何故ならどんな題材だって、歌舞伎になりえてしまうのだから。今回のシネマ歌舞伎だってそうですよね。スクリーンで歌舞伎を観る、というのもこれからの歌舞伎を楽しむ手段のひとつになり得る。そして僕自身、こうして進化を続けているからこそ歌舞伎は今の時代にも受け入れてもらえる力を持っていると信じています。

正直、一つのことしかできないというのは時代錯誤に見えるかもしれません。でも、一つのことしかできないけど、こだわりを持って突き詰めて、執着して生きる生き方も見物じゃないかなって。僕は歌舞伎に全部かけて生き抜いちゃおうって思っているんで、そういう生き方も歌舞伎の魅力に繋がっていけば嬉しいです。

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