映画『六つの顔』が、2025年8月22日(金)より全国順次公開。人間国宝の狂言師・野村万作を追ったドキュメンタリー作品だ。監督は犬童一心、ナレーションは俳優オダギリジョーが務める。

人間国宝の狂言師・野村万作

映画『六つの顔』は、94歳にして現役の狂言師・野村万作を記録したドキュメンタリー映画。文化勲章の受章記念公演が行われた特別な1日を追いながら、万作の人生の軌跡そのものに迫る。

狂言とは？

狂言は、約650年の歴史を持つ⽇本の伝統芸能。能と並んで、⽇本で最も古い演劇のひとつと数えられ、ユネスコ無形⽂化遺産にも登録されている。狂言の中心にあるのは役者そのもの、舞台装置や照明演出はステージに存在しない。しゃべる・語る・謡う、またパントマイムのような動きや様式的な舞、アクロバットのような曲芸などを重ね合わせ、役者の声・身体を通して物語を表現する。その姿から"素⼿の芸”と呼ばれることも。

能と狂言の違いとは？

謡と舞で歴史上の人物や神話を描く能に対して、狂言は⾝近ににいそうな⼈が主人公。⽇常的な事柄を題材に、⼈間だれしもが⾝に覚えのありそうな⼼の動きや関係を、笑いとともに表現する。演目の数は250曲を超える(万作が属する和泉流において)。

映画『六つの顔』では、万作が特に強い思いを抱く演目「川上」にフォーカス。"⾯⽩くて楽しい”物語の多い狂言の世界では異色なシリアスな作品だ。視力を取るか、尽くしてくれた妻を取るか…究極の選択を迫られる盲⽬の男を主人公に、夫婦愛と宿命に深く迫る。25歳の初演以来、繰り返し作品と向き合い続けてきた万作が、いま演じる「川上」とは？狂言を「映画」という形で記録するのは前代未聞、その至芸がスクリーンで初めて披露される。

■狂⾔「川上」
盲⽬の男が、願いを叶えてくれるという「川上」の地蔵に参詣し視⼒を得る。しかし、男の夢に現れた地蔵は、視⼒と引き換えに「妻と離別せよ」というお告げを残していたのだった。視⼒を取るか、尽くしてくれた妻を取るか。万作が属する和泉流のみで継承される作品。

万作・萬斎・裕基の3世代共演も

また、映画『六つの顔』では万作のインタビューも紹介。90年を超える芸歴のなかで、先達たちから受け取り繋いできた想いや、今なお⾼みを⽬指して芸を追求し続ける万作が今思うこととは？息⼦・野村萬斎や孫・野村裕基をはじめ、次世代の狂⾔師と共に舞台に⽴つ姿も臨場感溢れる映像で映し出す。

映画『六つの顔』出演者

野村万作
狂言の第⼀⼈者。⼈間国宝(重要無形⽂化財各個指定保持者)。芸歴90年を超える今もなお、現役で舞台に立ち続ける。

■コメント
「私は⼈と⼈との⼼の交流、あるいは優しさ、平和、そうしたものを表現した狂⾔が⼤変好きで、⼤事にしなくてはいけないものだと思っています。600年前にできた狂⾔ですけれども、"今”演じているということを強調したいと思っています。」

野村萬斎
万作の息子。国内外で多数の狂⾔・能公演に出演する⼀⽅、現代劇や映画・テレビドラマにも出演。

■コメント
狂言を通して伝えたいことは、人間って何百年たっても変わらないんだなっていうところ。人間の本質はやっぱり食べたい、寝たい、遊びたい。人間の執着ってほんと変わらない。狂言を見た後に「人間ってこんな風に生きてるんだよね」と残ると最高だなと思っています。