バレンシアガ(BALENCIAGA)が、2016年秋冬メンズコレクションを発表。メゾンのこれまでの軌跡を追いながら、リアリティに存在するワードローブを。そんなことを念頭に置いた今シーズン。インスピレーション源は、クリストバル・バレンシアガの上顧客であったモナ・フォン・ビスマルクのためにつくったガーデニング用の洋服である。
作業に欠かせないエプロンは、レザーやスエード、スーツ用のウールを使用したラグジュアリーな仕上がり。そして、その下にはスポーツウェア、スーツアイテムなどをマッチさせている。ゴムによって絞られたパンツのヘムは、カジュアルスタイルを連想させるかと思いきや、滑らかなウールボイルやベルベットを生地に用いて上質さを呼び戻す。素材やスタイリング諸共、新鮮な組み合わせではあるが、アティチュードはすべてアトリエの歴史に紐付くものだ。
縫い目を無くしたトラウザーやショルダーは、流線形を描き、重さを感じさせないシルエットへ。それを凌いで目立ったのは、両極端なデザイン。コートは床をかすめるほど長いか、短く裁断されていて、合わせるトラウザーはワイドか、足に張り付くほどタイト。
また、アーミーなアイゼンハワージャケットやシアリングの裏地付ボマージャケットは丈が短く、ボリューミーなセーターはハイウエストのパンツの中に裾を入れ込んだ斬新なルックだ。明らかに違和感あるスタイルさえも噛み砕かれていて、あたかもそれが定番であるかのように感じられる。
ファブリックは多種多様。ボリュームを出す硬いメッシュのネオプレンやニット、そしてオートクチュールの世界をも想起させる高級感あるレザー、スエード、ジュエルカラーのベルベットといった具合に。一緒にドッキングさせた、ミリタリーな色調のナイロンやウールという馴染みある素材は、リアルを浮き出させるためだろう。
実用性や機能性に重きを置く日々のワークウェアを、メゾンの精密なクラフトマンシップによって昇華した今季。来シーズンの初ランウェイを控え、気持ちを高揚させてくれるコレクションとなった。