バレンシアガ(BALENCIAGA)の2026年夏コレクションが、2025年10月4日(土)、フランス・パリで発表された。
ピエールパオロ・ピッチョーリのデビューシーズンとなる今季は、“心の鼓動”をテーマに、人間らしさを感じる温かなクリエイションを披露。創設者クリストバル・バレンシアガへのオマージュではなく、リキャリブレーション(再校正)を試み、ブランドの精神を尊重しつつも現代的に再定義した。
ストリートウェア志向で破壊的なデザインを得意とした前任のデムナ期に比べると、より華やかで明るいコレクションになっている印象。エレガントなシルエットやクチュールライクなディテールを駆使して、端正さとともに柔らかなムードを漂わせている。
まず目を向けたいのが、彫刻的でありながらも軽やかさを担保したシルエットだ。鍵を握るのは、1958年にクリストバル・バレンシアガが開発した「ガザール」生地を再解釈した新素材「ネオ・ガザール」。ハリ感と軽やさを兼ね備えたこの「ネオ・ガザール」をドレスからジャケット、シャツに至るまで随所に採用することで、身体と布地の間にふんわりと空気を含んでいるかのようなスタイルを叶えている。
分量感のあるグリーンのバルーンスカートは、構築的なシルエットを保ちつつも動きのある佇まいで、ふわりと宙に浮いているかのよう。チューリップの蕾を思わせるチューブトップドレスもまた、彫刻のような膨らみの中にゆとりを感じさせ、独特の軽やかさを描いている。
レザージャケットやチノパン、Tシャツといった現代的なワードローブにも、プロポーションの遊びをプラス。レザージャケットは丸みを帯びたコクーンシルエットに解釈して本来のハードさを払拭し、チノパンもゆったりと曲線を描くテーパード型に。レザーのTシャツは胸下ほどの短さにカットすることでその下から素肌を覗かせ、艶やかなレザー素材と肌のコントラストを際立たせている。
ピッチョーリらしさが光るのは、クチュールライクで幻想的なディテールだ。ベアトップドレスには可憐なイエローの花々を全面に咲かせ、真っ赤なフレアスカートには生き生きと躍動するフェザーをオン。しなやかな「ネオ・ガザール」やレザーが中心となるコレクションに、クラフト感の漂う豊かな質感のアクセントを加えている。
エレガントなピースにひねりを加えるシューズからは、日本の下駄を思わせる厚底サンダルや、ゴールドのメタルパーツを装飾したパンプスなどが登場。また一部のモデルはデムナ期を彷彿とさせる特大サングラスをかけており、バレンシアガの歴史に敬意を払うとともに、クールな雰囲気を演出した。