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映画『永い言い訳』主演・本木雅弘にインタビュー「現場でしか得られない役者の面白さ」

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映画『永い言い訳』が、2016年10月14日(金)全国ロードショー。

主演は『おくりびと』以来7年ぶりの映画主演となる本木雅弘だ。ここ数年大河ドラマの主演も務め、近年は『日本のいちばん長い日』『天空の蜂』など硬派な作品で活躍を見せてきた本木が、妻に先立たれた男やもめで‟タレント作家”の衣笠幸夫役を演じ、これまでのイメージを覆す新境地に挑む。

妻・夏子は、約20年ぶりの共演となる深津絵里が演じる。幸夫を支えるマネジャー・岸本には池松壮亮、不倫相手・福永には黒木華と、注目の若手俳優が脇を固める。

物語は、妻・夏子が親友と出かけた旅先で事故に遭うところから始まる。電話で訃報を受けたとき、幸夫は不倫相手と密会中だった。夏子との夫婦関係は冷め切っており涙すら流せない幸夫は、世間に対して悲劇の主人公を演じることしかできない。そんな幸夫を救ったのは、妻の親友の遺族であるトラック運転手の陽一(竹原ピストル)とその子供たちとの出会いだった。

ありえない出会いから始まる、妻を亡くした男と母を亡くした子供たちのストーリー。子供のない幸夫が、「あたらしい家族」と触れ合うことで、初めて愛することを学び、誰かのために生きる幸せを知っていくのだが…。

公開に先駆け、主演・本木雅弘にインタビューを実施。本作にかける思いや役者という仕事について話を聞いた。

なぜ、7年ぶりの映画主演を決めたのでしょうか。

私は、そんなにたくさんの作品数をこなせるタイプではないんです。たまたま一昨年(2015年)『日本のいちばん長い日』『天空の蜂』と立て続けに撮影をして、少し疲れていたのですが、なぜか鞭打つように、映画『永い言い訳』の話が舞い込んで来ました。

西川美和監督は、オリジナルストーリーを紡ぎ出す、非常に価値のある監督の一人。そして、初めての女性監督とタッグ。未知な要素にそそられました。

それに、何よりもまず『永い言い訳』というタイトルが素晴らしいなと。‟ながい”の部分も永遠の‟永”になっていて、その含みが気になる。私自身すごくエクスキューズの多い人物なので、この『言い訳』とは果たしてどんなものなのかと想像がふくらみ、読む前から心が惹かれましたね。

作品を読んでみていかがでしたか。

脚本から読み始めたのですが、非常に無様な男の話で。最初に読み終えたときに、実はどこか物足りない印象を受けました。もちろん、妻を亡くしても涙すら流せない男が他者との関係によって様々なことに気付かされ、凍っていたような心が息を吹き返し始めるという映画らしいストーリーではありました。

ただ、大抵の主人公というのは、あるきっかけを境に自発的に変化していく。例えば、どんどん落ちていって、その後何かの光が指すなり、自分の中で気付く瞬間を迎えて、それをぐっと掴んで自ら這い上がる。これが主人公のあるべき姿だと思うんです。

しかしこの物語は、およそ自発的じゃない。突然、最低最悪なタイミングで妻が亡くなるというところから始まって、事件に巻き込まれ。いきがかりの状況がどんどん与えられていく。自分でこねくり回して台無しにした人間関係も、あるきっかけによって戻ってくる。

リアルに情けない。結局、最後まで自発的に何かを掴んではいないんです。他者との関係性によって、常に気づかされていった男の話なんですよね。最初に読んだときの“物足りない”という感覚は、そういうことだったんじゃないかなと。しかし、そこがこの映画の魅力の一つだったんじゃないかと気付かされましたね。

幸夫には「情けない」という印象以外に、感じたことはありましたか。

幸夫は、失った悲しみというものを認識できないという自分に苦しんだ。寂しいとも虚しいともつかず、その感情にのれない自分を直視することになった辛さ。

いまの時代って、ネット社会が進んで個人の趣味嗜好に没頭できるから、自分を閉鎖できる環境を作れるようになった。良くも悪くも、人間の関係の中にある、キラキラしたものもジクジクしたものも、見えずらくなっていますよね。

人間は‟人の間”と書く生き物だから、他者との間にあるものを感じ、それを糧にして生きているはず。本来は、すごく繊細なセンサーを持っていると思うんです。

ただ、最近の世の中では、幸夫同様に、妻が亡くなっても実は涙が流せない人が多いんじゃないかって。逆でもいいんです、夫が亡くなっても涙が流せない妻がいると思っていることが、実はスタンダードなのかもしれないと。夫婦関係だけではなく、親子、同僚、上司、もしくは友達との間でもあるかもしれない。人間関係の不安とか寂しさを自分の中でやり過ごしちゃう人がたくさんいるんじゃないか。その意味で、今日的なテーマだなと感じました。

社会と作品の結びつきを強く感じられているようですが、本木さんご自身との間に何かつながりはありましたか。

まず、タレント小説家という、少し浮ついたポジションにある人間のねじれた自意識は、自分に近いなと思いました。人目を常に意識しているし、語る言葉も少しひねろうと思ったりとかね。逆に言うと、直球でいける自信がないんです。そういうややこしさは、自分と幸夫の似ているところだと思います。そして自分を俯瞰して、それが欠点であるなと心では自覚しながらも、そこは置き去りにしている部分も同じ。

でも、幸夫はまだ人から与えられた気付きのなかで、自分が生かされていき、その中にこそ人生があるのかもと思える素直さがある。実際の私は、正直な人間ですって表向きは言っているようでありながら、実は変われない曲げられない意固地さがある。幸夫ほどの素直さは、自分のポテンシャルの中にはないなと思いました。

出来上がった作品を見ていかがでしたか。

映画を観る時って、原作漫画やオリジナル小説がある作品だとしても、どこか虚構であることを念頭に置いて、こういうメッセージかなと想像しながら受け取って帰ると思うんです。

試写会を観た方の感想文から言葉を借りれば、「五臓六腑に染み渡る」作品。要するに、内臓まで掴まれるような肉体感覚で入り込んでくる、ある種のリアル感。誰しもどこかで持っている、見られたくない人間の醜さ・もろさが露わになっている映画であるなと思います。

初の女性監督との作品作りの感想は?

映画を撮っていくにつれて、「幸夫が持つ人としてのゆがみは誰にでもあり、日々格闘は続く」って、西川監督が示しているようで。そして、監督はさらに俯瞰して「これは、人類が抱えた不完全さであり、いじらしさでもある」と捉えながら、ある母性を持って、人の脆さそのものを優しく包んでいたような気がします。

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日時:2016-10-12 19:50