映画『愛されなくても別に』に出演する南沙良と馬場ふみかにインタビュー。2025年7月4日(金)より全国公開される。
映画『愛されなくても別に』は、毒親と暮らす大学生・宮田陽彩(みやた ひいろ)が主人公。浪費家の母と2人暮らしの陽彩は、アルバイトで稼いだ金を母に渡し、学業や家事に追われる日々を送っていた。しかしあるとき、同じバイト先に勤める大学の同級生・江永雅(えなが みやび)の父が“殺人犯”であるという噂を耳にする。派手髪でイヤホンをつけながら接客する雅は、地味な陽彩と正反対の存在だが、親に苦しむ2人の出会いが、互いの人生を大きく変えることに……。
今回は、主人公の陽彩を演じる南沙良と、雅を演じる馬場ふみかにインタビューを実施。それぞれの役への共感から、ふたりが考える“愛”のかたち、そして俳優という仕事への想いまで、たっぷりと語ってもらった。
苦しい場面も多い作品だと思いますが、役作りは苦労されましたか?
南:私は陽彩に共感するところ、自分と重なる部分がありました。お芝居しやすくもありながら、少し複雑な気持ちで演じていましたね。
陽彩のどういったところに共感できたのですか?
南:陽彩は自分が不幸であることに意味を見出しているのだと思います。私も、不幸を自分の安心材料にしてしまう部分は少なからずあるので、自分の姿と重なりました。
不幸が安心材料とは、具体にどういう……?
南:昔からの癖というか、小さい頃から人生における全てのことが不安でしょうがなかったんですよ。(笑)心配性なんだと思います。
上手くいきすぎていると怖い。だから不安がないと自分が頑張れているのかどうかもわからなくなってしまって……。 それがもう私の中で当たり前でした。
馬場:その気持ち、すごくわかります。少しの不安があったほうが、良い作品を作れるかもしれないと思っていた時期が自分にもありました。
馬場さんは、雅という役をどう捉えていましたか?
馬場:私は最初に井樫監督が「この役はふみちゃんだと思う」と言ってくださって。派手な役柄ではあるので「あ、私はこうなんだ……」と思いつつ。(笑)
でも原作読んだときに、グサッとくる言葉、シーンがあり雅を演じようと決断できました。
その場面について話すと、
雅は、陽彩が人として接してくれるのが嬉しい。それまでは、“女”として周囲から見られてきて、自分でもそう振る舞うしかなかった。それがダメってわけじゃないけど苦しい...…と打ち明ける、すごく共感できるシーンでした。
陽彩と雅2人の独特な関係性、例えばシスターフッド的な部分については何を思いますか?
南:なんとも言えない関係性ですよね。家族でもないし、友達でもない。そういう関係性や空気感が、原作を読んでとても素敵だなと感じました。映画でもその色を出せているのではないかと思います。
馬場:大変その通りです。
南:(笑)
馬場:陽彩と雅は、お互いがお互いを救っています。2人が出会うことが、この映画にとって最も大事なポイントなんだと思います。
そんな絶対的な出逢いにちなんで、おふたりの転機となった出逢いはありますか?
南:私は『愛されなくても別に』のアクティングコーチで入ってくださった方です。今回は座学でお芝居を学んで撮影に挑みました。過去そういった機会が全くなかったので、すごく新鮮でしたし、もっとお芝居を勉強したいと思いました。
馬場:私は監督の井樫さん。ものすごく愛を伝えてくれる方なんですよ。
南:わかります。
馬場:いつも「大丈夫だよ」と声かけて頂きました。私のお芝居の全てを肯定して、そこまで言ってくださる方に出会うことって少ないなと感謝しています。
南:それと監督は、撮影に入る前にそれぞれの役柄の資料をくださったんです。
馬場:そう、生まれてから今日までの年表。学生時代はどういう性格で、クラスでどんな存在だったか、家族での夏休みの出来事など細かなことまで書かれていました。普段、自分の中で役を考えたり作ったりすることが多いのですが、今回は監督の資料にとても助けられました。