セッチュウ(SETCHU)の2026年春夏コレクションが発表された。
「和洋折衷」に由来するブランド名が示すように、東洋と西洋の要素を織り交ぜて衣服を手がけてきたブランド、セッチュウ。ジャケットやシャツ、ニット、パンツなど、ベーシックとも形容できるウェアを基調にしつつ、パターンに工夫を凝らすことで、ひとつの衣服が複数の着こなしに開かれた、言うなれば可塑的なデザインを展開してきた。
今季のセッチュウが、洋の東西の交錯を基調としつつも目を向けたのが、アフリカであった。その背景には、デザイナー・桑田悟史のジンバブエ滞在の経験があったという。桑田は、世界三大瀑布に数えられるヴィクトリアフォールズを訪れるほか、現地の部族とともに椰子を使った編み物の製作を自ら行うなど、この地の手仕事に焦点を合わせたプロジェクトに携わったのであった。
水煙を立ち上らせつつ、膨大な水が流れ落ちるヴィクトリアフォールズに訪れた体験は、今季、透明感あふれるテーラリングやドレスにうつしだされている。シングルブレストのテーラードジャケットは、セットインショルダーの端正な仕立てながら、透け感のある清涼な素材を。ドレスには薄く繊細なファブリックを幾重にも重ね、あたかも水が流れ落ちるように優雅な佇まいを織りなしている。
ところで、ジンバブエでは歴史的に、動物の革や色鮮やかな織物を巻きつけた伝統衣装が着用されてきたようだ。それは、身体のフォルムにフィットするよう仕立てる西洋の衣服とは異なった、装いの可塑的なあり方だといえる。つまり、互いに異なる着用者の身体やその時々の状況に応じて、自在に身に纏うことができるものなのである。
ファブリックを巻きつけるという、装い可塑的なあり方は、ひとつの衣服に複数の着こなしを開く、セッチュウならではの服作りと響きあうものであるといえよう。今季のコレクションには、こうした視点が反映されていると思われる。シャツやTシャツは、開閉可能なボタンをあしらうことで、巻きつけて着用できるよう設計。大ぶりなバッグは、ワンピースへと変化。あるいはデニムパンツやカーゴパンツはボリューミーに仕上げ、スカートのような着用を可能としているのだ。
このように、身体との関係に応じて変化する装いのあり方は、日本の「間」の捉え方と通ずるものではなかろうか。着物に見られるように、布地を直線的に断った日本の装いでは、衣服と身体に「間」が立ち現れ、帯を締めることで衣服が身体に寄り添う。あるいは日本の伝統的な建築は、襖という取り外しのできる扉で仕切られた「間」によって構成されていた。間は、ある決まった用途のための空間であるというより、来客があれば居間が客間になり、食事の折りには食堂となり、夜には寝室になる。あるいは、大勢が集まれば襖を外して大きな間を作る、というように、日本建築の「間」とは、そこに住まう人との関係性に応じて、その時々の性質を変えるのであった。今季のセッチュウは、衣服と身体がとり結ぶ「間」の感覚を、アフリカの可塑的な装いを介して、あらためて具現化しているのではなかろうか。