企画展「地図と印刷」が、東京の印刷博物館にて、2022年9月17日(土)から12月11日(日)まで開催される。
地図は、古来より地理情報を伝える表現技法のひとつとして作られてきた。日本では近世以降、多くの人びとに同じ情報を伝えることができる印刷された地図が登場し、民間での印刷・出版の広がりにともなってさまざまな地図や地誌が作られた。やがて、蘭学の発展により西洋の地図知識を摂取することで世界の認識が広がり、近世後期には伊能忠敬が近代的な地図作りを手がけて、日本の地図製作に大きな影響を与えることになった。
企画展「地図と印刷」では、日本の近世を中心に、地図や地誌の製作における印刷と人びとの関わりを、3部構成で紹介する。
日本における印刷地図の始まりは、古活字版の百科事典『拾芥抄(しゅうがいしょう)』に所収された図であった。日本では、京都で木版印刷による民間での印刷・出版が始まり、地図の印刷もスタート。太平の世の到来とともに文化の受容者が拡大すると、石川流宣が日本図の基準となる『日本海山潮陸図』刊行するなど、地図が大衆のあいだに広がってゆくことになる。第1部では、『拾芥抄』所蔵の図などとともに、日本の印刷地図黎明期の展開を紹介する。
武力ではなく教化や法令によって世を治める「文治政治」が展開するなか、日本では歴史学などにおいて実証的な考え方が浸透、中国からの影響のもとで考証された地図作りや地誌編纂が行われるようになった。その代表的な人物・長久保赤水(ながくぼ せきすい)による日本地図は、近世後期から近代に至るまで受け入れられるベストセラーとなっている。
また、第8代将軍・徳川吉宗による漢訳洋書の輸入緩和によって蘭学が発展し、西洋の地誌知識の摂取も進むようになる。第2部では、長久保赤水「改正日本輿地路程全図」や司馬江漢「地球隋円図」といった資料を通して、地図製作の進展と拡大する世界観をたどってゆく。
ロシアの南下政策が進み、西洋列強も日本との接触を試みるなか、幕府は海防意識を強化。松平定信は取締りを強化する一方、西洋の情報にも関心を抱くなど、世界と日本が急速に接近する時期でもあった。そのなかで伊能忠敬は、日本初の実測日本地図を製作。その正確さは近代の地図作りの基礎ともなっている。第3部では、伊能忠敬「官板実測日本地図」などから、近代へと継承された地図作りに光をあてる。
企画展「地図と印刷」
会期:2022年9月17日(土)〜12月11日(日)
会場:印刷博物館
住所:東京都文京区水道1-3-3 トッパン小石川本社ビル
開館時間:10:00〜18:00
休館日:月曜日(9月19日(月・祝)、10月10日(月・祝)は開館)、9月20日(火)、10月11日(火)
入場料:一般 500円、学生 300円、高校生 200円
※中学生以下、70歳以上、身体障がい者手帳などの所持者とその付添者は無料
※20名以上の団体は各50円引き
※11月3日(木・祝)文化の日は無料
※中止または延期となる可能性あり
※入場制限を行う場合あり
【問い合わせ先】
印刷博物館
TEL:03-5840-2300 (代表)