ケイスケヨシダ(KEISUKEYOSHIDA)の2026年春夏コレクションが、2025年7月24日(木)に、東京・エストネーション 六本木ヒルズにて発表された。テーマは「Relax and Relaxation」。
前回までのケイスケヨシダはというと、デザイナーの吉田圭佑の心の中にある「繊細で厳格な」女性像を現実に引き摺り出してコレクションを展開していた。しかし今季は、常に緊張感や息苦しさを感じながら生きる都市の女性の「ふと気が抜けた時の美しさ」に焦点を当てている。強く生きようと取り繕う中に見る、柔らかさや生々しさをコレクションに落とし込んでいった。
女性たちが隠している心のうちを、「柔らかく美しいもの」だと捉えた吉田がまずはじめに取り掛かったのは、テーラードの再解釈だ。通常なら厳粛であるはずの襟裏を崩して解いたラペルは、泳ぐようにうねり、くしゃっと膨らむことで、柔らかさを導き出す。ほかにも、身返しや台襟があらわになったステンカラーコートや、身頃が大胆に流れるショートトレンチなども提案されている。
より現実に目を向けたともいえる今季は、思いもよらない瞬間に生まれる衣服のシルエットをそのまま形にしているのも特徴的。たとえば、ぴたっと身体に沿うシルエットで仕立てたデニムジャケットやパンツ、タイトスカートなど。座ったり立ち上がったり、寝転んだりと普段の動作によって、本来オーバーサイズだったものが身体に張り付き、くしゃっと皺を寄せることがある瞬間に着想している。
また、ジーンズやタイトスカートのポケットの袋布を飛び出させることで、アクセントをプラス。隠し通していると思っていたはずの胸の内が、ふとこぼれ出てしまったようだった。
もうひとつ、スラックスのウエストを開いてトップスやテーラードジャケットに仕立てたシルエットにも注目。ベルトをしめて厳格に着こなすはずのアイテムをあえて首元に配し、解いて崩した。視覚的にも息苦しさから解放されたかのような、緩いムードが感じられる。
2025年春夏コレクションに登場したたんぽぽモチーフは、思いもよらぬ形で現れた。まち針をイメージしてアクセサリーを作っていたところ、意図せずたんぽぽのようなシェイプに仕上がったそうだ。たんぽぽというのは見つけようと思っても見つからない、それなのに何も意識していない時に目に飛び込んでくる。そんな日常に溶け込んだたんぽぽの姿が、コレクション制作過程に突如現れたのも、吉田と現実を逞しく生きるたんぽぽとの縁なのだろう。