シャネル(CHANEL)のエキシビション「ラ ギャルリー デュ ディズヌフエム トーキョー(la Galerie du 19M Tokyo)」が、東京・六本木の森アーツセンターギャラリー、東京シティビューにて、2025年9月30日(火)から10月20日(月)まで開催される。
「ラ ギャルリー デュ ディズヌフエム トーキョー」は、シャネルのファッションとインテリアの中心を担うアトリエ「le19M(ル ディズヌフエム)」によるエキシビションだ。2023年のセネガル・ダカールに続く国際的なエキシビションとなる本展では、これまでにない規模感で、シャネルが誇る技を紹介していく。
「le19M」とは、職人技の保存と継承を目的にシャネルが設立した、クリエーションのためのコミュニティ。パリ19区にある建物には創作活動を支える作業空間や、アーカイブの管理ができるスペースなどを完備しており、約700名の職人とエキスパートが集う。「le19M」には、11の「メゾンダール」=“アトリエ”と刺繍学校が所属しており、そのうち5つはフランス政府より「無形文化財企業(EPV)」の認定を受けている。
今回の「ラ ギャルリー デュ ディズヌフエム トーキョー」は、「le19M」がパリから日本にやってきたかのようなエキシビションとなる。会場は全3章で構成。まず1つめは「le19M」の各アトリエを紹介するインスタレーションを展開し、2つ目に「le19M」の様々なアトリエと日本各地のアーティストや職人を結ぶアートプロジェクトの展示を行う。そして最後のコーナーでは、シャネルと密なパートナーシップを組みつつ、刺繍と織物を追求してきたアトリエ「ルサージュ」の作品を紹介し、クリエーションを辿っていく。
「le19M」が持つ唯一無二の技術に迫る「フェスティバル(le Festival)」のスペースでは、建築家・田根剛率いるATTA - Atelier Tsuyoshi Tane Architectsが手がけたインスタレーションを展開。クリエーションに必要な原材料や道具、サンプルからはじまり、作品が徐々に完成へと近づいていく過程を知ることができる。
会場内に足を踏み入れると、様々な生地や靴のアッパーパーツ、木型、糸巻などが宙から吊り下げられている様子が目に入る。きらびやかに空間を彩るこれらのアイテムは、職人たちのインスピレーションが天から降り注ぐ様子を表現。工房を再現したテーブルやその周辺と合わせてみると、個性豊かな工房と職人たちのクリエイティビティを体感することができる。
たとえば、刺繍を専門とする「アトリエ モンテックス」のデスク上には、きらびやかな刺繍をまとったこけしやだるま、ビーズ刺繍のサンプル、生地などが置かれている。また、世界最大の刺繍サンプルのコレクションを所有している「ルサージュ」、独自の専門技術を用いた帽子やヘッドアクセサリーを手がける「メゾン ミッシェル」、老舗ビスポークシューズ「マサロ」など、数々の展示からは、職人たちのクリエーションに息づく細部までのこだわりを目にすることができるだろう。
その次は、「ビヨンド アワー ホライズンズ(Beyond Our Horizons)」へ。提灯のならぶ回廊を抜けて、日本とフランスの約30人の職人やアーティストによる作品を集めた章だ。映画監督の安藤桃子や、雑誌『Casa BRUTUS』の編集長・西尾洋一、東京とパリを拠点に活動するデザイナー・緒方慎一郎、ベネッセアートサイト直島キュレーターとして活躍し、現在は多領域にわたるプロジェクトを手掛ける徳田佳世、アトリエ モンテックスのアーティスティック ディレクター・アスカ ヤマシタらがシャネルやle19Mとともにキュレーションを務め、没入型のアート体験を提案する。
かつての住居であり、工房としての役割も果たしていた“町屋”の風景を再現した「アトリエ(les Ateliers)」のセクションでは、数寄屋造り建築による空間がお出迎え。入口・出口には芭蕉布を手がける石垣昭子と、世界最高峰の刺繍とツイードのアトリエ「ルサージュ」がタッグを組んだ「芭蕉暖簾」「ツイード暖簾」がかけられている。
中へと入っていくと、織物をグリッド ペインティングで表現した絵画作品《織合い》や、竹や木を編み込んだ漁具や敷物を起源とする「網代貼り」に着想を得た壁面が登場。機織り機も設置されており、職人が在廊している間には実際に機械を動かして生地を織っていく様子も目にすることができる。
また、茶道具・土風炉を代々制作してきた永樂家の作家、永樂善五郎と「アトリエ モンテックス」の協働では、茶碗に穴を開けて「アトリエ モンテックス」のきらびやかな刺繍を施した作品を展示。さらに、植物文様を職人の手で刷った唐紙と、「ルマリエ」によるコサージュが調和した静謐な空間も必見だ。