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映画『ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』ヴィム・ヴェンダースが語る、3D技術と踊り子たちの存在感

『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』で音楽映画の金字塔を打ち立てた名匠ヴィム・ヴェンダース監督が次に選んだ題材、それは“ダンス”―。

2009年に惜しまれつつこの世を去ったドイツの世界的天才舞踊家/振付家ピナ・バウシュの遺産を、20年来の友人である世界的巨匠ヴィム・ヴェンダース監督が、アート映画として世界初の“最新3D映画”として蘇らせた本作。ダンサーと共に踊る3Dクレーンカメラの開発により撮影された映像は、「舞台は“生”で鑑賞するもの」という既成概念をぶち壊し、五感のすべてを圧する映像体験革命を起こした。

今、五感が戦慄する衝撃と、心を愛で満たす感動を、あなたに──。

ヴィム・ヴェンダース監督インタビュー

ピナ・バウシュとの映画プロジェクトは、どのようなきっかけで生まれたのでしょうか?

このプロジェクトが始まったのは25年前で、私がピナと初めて出会ったその時でした。時は1980年代半ば、場所はベネチアでした。私はアメリカに住んでいたので、それまで彼女の舞台や作品を見たことがありませんでした。フェニーチェ劇場で彼女の回顧展が行われ、「カフェ・ミューラー」と「春の祭典」の2本立てを見て、圧倒されたのです。これほどまでに美しいものが存在するのかと、信じがたい気分になり、1週間滞在してすべて見ました。

そして、ピナと会って、絶対に一緒に何かをやろうと話しました。彼女はとてもシャイな性格でしたが、同時に、とても陽気でした。でも、その時は、はっきりとした返事はもらえませんでした。私は毎年彼女と会いましたが、2度目に会った時、私は彼女の新作をすべて見ていました。そして、口癖のように”ピナ、私たちは一緒に何かをやらなければいけないよ”と言っていたですが、彼女は”ええ、ええ”と答えるばかりでした。そして、ついに”ヴィム、あなたが話していたこの映画作品だけど、いつから取りかかるのかしら?”と訊かれた時、すべてが回り始めたのです。

その時は、考えこんだ末に、”実は、どのように取り掛かればいいのか、よくわからないんだ”と答えるしかありませんでした。なぜならば、彼女の舞台演劇をどうやって撮影しようかと考えた時、その術が思いつかないことに気づいたからです。彼女の作品を映像に収めることは本当に特別なことで、非常に特殊な方法で撮影しなければならないと思っていたので、私の撮影技術では無理だと感じていたのです。私にはとても扱いきれないと思っていました。ピナは、その後もいつから作品に取り組むのかと繰り返し訊いてきましたが、私は”どうすればいいのかまだ分からない”と、繰り返し答えるしかありませんでした。しまいには、彼女が”いつ?”とだけ訊ね、私が”まだわからない”と返すといった、私と彼女の間で交わされる冗談のようなやりとりになっていました。

3D技術がこの作品にとって正しいアプローチだと気づいたのは、いつでしたか?

舞踏演劇をどのように映画作品として扱い、撮影するかが分からず、つい後ろ向きの気持ちになっていた頃から、3D技術が気になっていました。今から3年前、2007年のある日のことでした。私はカンヌで初めて3D技術を用いた映画作品を見ました。「U2-In 3D」という、30分ほどの作品でした。映画が終わりにさし掛かった時、私はピナに電話をかけました。ひと言だけ、どうしても伝えなければならないと思ったのです。それは、”どう撮ればいいか、やっとわかったよ”という言葉でした。彼女は”あら、よかったわね”と理解してくれました。私は彼女を訪ね、悩んでいた問題が解決できることを伝えました。つまり、どうすればカメラで舞踏の空間を捉えられるか、という点です。そして、3D技術がその問題を解決できるのだと説明しました。

ただ、3D技術を用いるには、かなりの時間を要しました。まず、私自身が3D技術について習熟しなければなりませんでしたし、その技術自体がまだ完成されたものではなかったからです。実際、私が最初に見た3D作品でも、多くの不具合が見受けられましたし、そういった点は、3D技術における問題を浮き彫りにしていました。こうした経緯から、実際に動き出すまで、2年待たなければなりませんでした。2008年、ピナと私は撮影に取りかかり始め、彼女が演じる作品のうち、どの作品を撮影したいかを決めました。私は、彼女と映画作品を共作していくうえでの構想を書きました。

3D技術を用いて制作するうえでの利点は何でしょうか?

3D技術は、私がそれまで抱えていたジレンマを解決してくれました。そのジレンマとは、踊り子と踊り子の間にある空間、人々や男女の間に生じる空間をどうにかして捉えきれないものか、というものでした。ですから、私は20年もの間、ピナに”どうすればいいのか、わからない”と答えてきたわけです。3D技術によって、作品にその空間をもたらすことができ、ピナの作品の核および本質を正しい形で捉え、作品で示すことができると感じたのです。

撮影が終わるにつれ、3D技術は、私の夢を満たしてくれたと思えたほどです。実際のところ、奇妙なことに舞踏と3D技術はよく合いました。踊り子が生み出す動きや作品に対して、作品を鑑賞する人々、観客がここまで引き込まれるのか、という意味で、3D技術ほど彼らの踊りに見合った撮影技術はほかに存在しないと思いました。

普通のカメラでもステージの上を撮影することはできますが、3D技術を用いれば、踊り子たちの存在感を捉えることができるのです。たとえば、カメラの前に誰かが立っているとしましょう。その人物が何もやっていないとしても、3D技術を通して見ることで、その人物の存在感や、踊り子一人ひとりがまとうオーラを感じ取ることができるのです。腕を持ち上げる仕草ひとつをとってみても、3D映像と2D映像でみるのでは、印象が本当に大きく変わってくるのです。私はピナの作品を見るたびに感動したわけですが、観客に感動を伝えるべき臨場感を、3D映像によって感じさせることができるのです。そして、私はピナの作品ほど美しく、心を揺さぶるものを見たことありませんでした。どんな映画作品、演劇でも彼女の作品ほど私や人々の心に訴えかけるものはなかったでしょう。その彼女の作品を伝えるために3D技術が必要とされ、実際に3D技術と彼女の作品はとても相性が良かったのです。

映画祭で注目を集める

ベルリン、トロントなど、世界14もの映画祭で注目を集めた他、<アカデミー賞外国語映画賞ドイツ代表>にも選出され、世界各国でヒットを記録。第84回アカデミー賞では長編ドキュメンタリー映画賞にノミネートされて話題になっている。

■「ピナの作品を見たことがない人も、これだけは、この映画だけは見たほうがいい。こういうアーティストが存在し、表現し続けた。つい最近まで。この映画を通じてそれだけは見ておけ。」
山本耀司(デザイナー)

■「ぼくはずっと泣いてました。」
坂本龍一(音楽家)

■「ピナの優雅に闘い続けている姿は、僕たちダンサーにとっていつも愛と勇気を与えてくれた。この映画を観ると、今でも僕たちのそばで踊ってるような気がする。」
首藤康之(バレエダンサー)

【作品情報】
Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち
監督・脚本・製作:ヴィム・ヴェンダース『パリ、テキサス』『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』
出演:ピナ・バウシュ、ヴッパタール舞踊団ダンサー
音楽:トム・ハンレンシュー『ランド・オブ・プレンティ』『パレルモ・シューティング』
原題:PINA/104分/ドイツ、フランス、イギリス映画/カラー/ヴィスタ/SRD
公開日:2012年2月25日(土) ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿バルト9他 全国順次3D公開
提供・配給:ギャガ

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