コム デ ギャルソン・オム プリュス(COMME des GARÇONS HOMME PLUS)の2026年春夏メンズコレクションが、2025年6月27日(金)にフランス・パリで発表された。
今シーズンのタイトルは"Not Suits, But Suits"、「スーツではないがスーツである」。コレクションから見て取れるのは、テーラードスーツを基盤に置きながらも、そこからテキスタイル、装飾、フォルム、そしてピースの組み合わせと、様々な要素において既定の枠組みを超越していく試み。スーツ、という装いの意味するところをかみ砕き、拡張していくようなピースが展開された。
規範を超越し、とある定義の中で多彩な要素を排除せず、むしろ取り込みながら解釈していくこと。その試みには「平和や愛、連帯へと私たちを導くシャーマンのように力強い存在を求めている、と感じた」という川久保玲の希望が込められているかのようだ。
たとえば、ピンクやグリーンなど、目に飛び込んでくるかのような色彩の幾何学柄スーツはサイケデリックなムードをまとい、生き生きとした佇まいに。グレーのスーツにグラフィカルなジレを重ねたり、ヴィヴィッドなマルチカラーのコクーン型ケープを組み合わせたルックも存在感を放っている。
さらに、コンパクトなシワ加工のジャケットに、ふんわりとしたブラウス、スカート風のボトムスを合わせたルックをはじめ、ジェンダーレスなスタイリングも披露されている。丸みを帯びたフォルムや、ニットの下から飛び出すフリルなど、柔らかなディテールが印象的だ。
パターンメイキングによって、スーツのフォルムそのものにも様々な変化が加えられている。背面に緩やかなドレープをあしらったジャケットや、ウエスト周りをドレスのような立体感で仕上げたジャケットなどは、装飾的な要素によって華やかな要素がもたらされている。端正なブラックのジャケットも、構築的な切り替えによってドレスのように広がりのあるフォルムに仕上げた。
ラペルは生地をダイナミックに折り曲げたようなデザインや、異なる生地で二重仕立てにしたデザインなどがアイキャッチ。二重のラペルをホワイトで仕上げたジャケットのセットアップは、真っ白なフリルシャツを重ねて白黒のコントラストを強調している。
また、ボトムスも多様な形で提案。柔らかなフリルを配したデザインや、縦にファスナーを走らせて異素材と切り替えたパンツ、タックプリーツを配して袴のように仕立てたデザイン、帯状の生地を並べて繋ぎ合わせることでバルーンフォルムに仕上げたパンツなど、存在感のあるボトムスが散見された。
特に、ファスナーを配したパンツは多彩なバリエーションで展開。中からフリルが出てくるような仕掛けや、ファスナーを開くと異なる丈が現れる仕様など、動きのあるデザインが落とし込まれている。