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横尾忠則の“現在と過去”を繋ぐ企画展が神戸で、全ての境界が曖昧になる横尾流「朦朧体」とは

企画展「開館10周年記念 Forward to the Past 横尾忠則 寒山拾得への道」が、神戸の横尾忠則現代美術館にて、2022年4月19日(土)から7月18日(月・祝)まで開催される。

横尾忠則の“現在と過去”を繋ぐ展覧会

横尾忠則 《寒山拾得 2020》 2019年 作家蔵
横尾忠則《寒山拾得 2020》 2019年 作家蔵

企画展「開館10周年記念 Forward to the Past 横尾忠則 寒山拾得への道」は、横尾忠則の“現在と過去”を繋ぐ展覧会。横尾が新作のモチーフとしたのは、中国・唐の時代の僧だった寒山と拾得の姿だ。奇妙な風貌と奇行で通るこの2人は、実は文殊菩薩と普賢菩薩の化身だったという言い伝えから、これまでも数々の文学や美術に取り上げられてきた。浮世離れした詩人と掃除夫の姿に、横尾は何を見たのだろうか。

もうひとつ、新作を紐解くうえで鍵となるのが、横尾自らが「朦朧体」と呼ぶ描画スタイルだ。これは、近年患っている難聴やそれによる視界・意識の朦朧、思うように筆を振るうことのできない腱鞘炎などの身体的な変化がもたらした、自由にうねる線や輪郭のゆらぎ、軽やかな色使いといった新しい画風のこと。画業40年にして横尾が獲得したこの「朦朧体」だが、実は過去の作品に何度も現れていたものだった。

横尾忠則 《突発性難聴になった日》 2019年 作家蔵
横尾忠則《突発性難聴になった日》 2019年 作家蔵

本展では、横尾の最新作を一堂に展示するとともに、過去の作品をあわせて参照。作家自身が「朦朧体」と呼ぶ最新の様式こそが、実は数十年におよぶ絵画との格闘と模索の末に到達した理想の境地だったのではないかということを考察していく。

横尾流「朦朧体」のはじまり

横尾忠則 《二刀流再び》 2021年 作家蔵
横尾忠則《二刀流再び》 2021年 作家蔵

そもそも、朦朧体というのは横山大観や菱田春草が明治時代に確立させたもので、輪郭線を用いずぼかしを伴う日本画の技法のこと。一方で、横尾の「朦朧体」は頭で考えるものではなく、“肉体”が意図せず生み出した自然な朦朧だという点が面白い。老いに伴う肉体の変化を自然のものとして受け入れた筆は、時に作者の意図を離れて自由に動き回る。《二刀流再び》を例として、色彩も原色に近い明るい色に溢れ、画面全体をぱっと明るく彩っているのが印象的だ。

新作のモチーフは「寒山拾得」

横尾忠則 《寒山拾得・其ノ二》 2021年 作家蔵
横尾忠則《寒山拾得・其ノ二》 2021年 作家蔵

そんな横尾流「朦朧体」が色濃く反映されているのが、中国の故事に登場する伝説上の高僧・寒山と拾得を描いた新作だ。いつもぼろぼろの衣服とぼさぼさの頭で、寒山は詩を書くための巻物を、拾得は掃除をするための箒を持っている。横尾はそこに独自の解釈を持ち込み、寒山の持ち物はトイレットペーパーに、拾得は電気掃除機にと、現代的なアップデートを加えた。

たとえば《寒山拾得・其ノ二》を見てみると、自由奔放なタッチでなぞられる彼らの姿は、時に輪郭を無くし背景に溶け込むほど。黄色やオレンジといった明るい色彩の中で軽やかに浮遊し、楽し気にあっけらかんと笑っている。

現実と想像の境界が“あいまいに”

横尾忠則 《高い買物》 2020年 作家蔵
横尾忠則《高い買物》 2020年 作家蔵

新作のモチーフは寒山拾得に限らない。自転車に乗ったりトイレで用を足したりする人物像は、横尾のリアルな生活に基づくものだろう。しかし、現実と想像の世界が交差しているのだろうか、そこにはさりげなくトイレットペーパーや掃除機を描きこんでおり、寒山拾得の存在を匂わせている。

また、《高い買い物》で描かれる、横尾が創造の源としてきた作家たちの作品を納めた部屋は、天井や照明、壁、額縁などあらゆる境界線が取り払われているのが印象的だ。額縁の中の人物たちも浮かび上がってきて、口々にお喋りをしているかのような躍動感がある。

過去に見つかる「朦朧体」の兆し

横尾忠則 《Suruga》 1983年 横尾忠則現代美術館蔵
横尾忠則《Suruga》 1983年 横尾忠則現代美術館蔵

1980年に画家に転向して以来、横尾は様々な作風に挑んできた。たとえば、フランシス・ピカビアや当時国際的に流行していたトランスアヴァンギャルディア運動に代表される、絵画に四次元の概念を持ち込んでモチーフの輪郭線を融解させた表現。奇妙なことに、これらは最新の「朦朧体」に通じる点がある。

1980年代半ばには、制作における身体性に強く興味を持った。「創造は頭で考えるものではなく、内なる欲求によるもの。その答えは身体が導いてくれる。」という考え方は、左手で描いた作品群に強く反映されている。精神と肉体が直結することを避け、身体性のもつ偶然性を引き出そうとした当時の試みは、絵画のルールなど意にも介さず自由奔放に描き続ける最新の横尾の姿勢を予言していたのだ。

【詳細】
企画展「開館10周年記念 Forward to the Past 横尾忠則 寒山拾得への道」
会期:2022年4月9日(土)~7月18日(月・祝)
会場:横尾忠則現代美術館
住所:兵庫県神戸市灘区原田通3-8-30
開館時間:10:00〜18:00(入場は閉館30分前まで)
休館日:月曜日(月曜が祝日の場合は開館、 翌平日休館)
観覧料:一般 700円(550円)、大学生 550円(400円)、70歳以上 350円(250円)、 高校生以下 無料
※( )内は20名以上の団体割引料金
※障がい者は各観覧料金(ただし70歳以上は一般料金)の75%割引、介護者1名は無料
※割引対象者は、証明できるものを持参のうえ、会期中美術館窓口で入場券を購入
出展数:絵画・ドローイング・版画等 約70点

■キュレーターズ・トーク
講師:横尾忠則現代美術館学芸員
日時:4月30日(土)、5月28日(土)、6月25日(土) 14:00~14:45
会場:オープンスタジオ
参加費:無料 ※先着30名

【問い合わせ先】
横尾忠則現代美術館
TEL:078-855-5607 (総合案内)

Photos(12枚)

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