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是枝裕和監督にインタビュー - 『万引き家族』でカンヌ映画祭最高賞パルムドール受賞

是枝裕和監督の映画『万引き家族』が、2018年6月8日(金)に全国で公開される。本作は、カンヌ国際映画祭では最高賞にあたるパルムドールを受賞。日本の映画では今村昌平監督による『うなぎ』以来のことで21年ぶり。

受賞にあたり「この場にいられることが本当に幸せです。そしてこの映画祭に参加するといつも思いますが、映画をつくり続けていく勇気をもらいます。そして、対立している人と人を、隔てられている世界と世界を映画が繋ぐ力をもつのではないかという希望を感じます。」と話した。

『万引き家族』では、樹木希林演じる初枝の年金をあてに集まり、万引きで足りない生活費を補いながら暮らす“家族”の絆を描く。

これまでの是枝監督作品においても、母親に置き去りにされた子供達の漂流生活を描いた『誰も知らない』や、6年間育てた子供が実は病院で取り違えられた他人の子供だったことから生まれた父親の葛藤を映し出した『そして父になる』、鎌倉で暮らす3姉妹が異母妹を迎え4人での生活をスタートする『海街diary』など、様々な“家族”が物語に登場してきた。是枝監督作品を語る上で欠かせない“家族”の存在について、是枝監督に話を聞いた。

“家族”について

『海街diary』より
『海街diary』より

家族の在り方を撮り続けてきました。それは何故でしょう?

実は、あまり自分では“家族”を撮り続けているという意識はないんですよね。

“家族”を作品の中心に置いているわけではないと。

そうそう。他のテーマを撮ろうとしたら家族が出てきた、という方が近いかもしれないですね。たとえば『海街diary』は、家族の物語ととらえることもできますが、街と時間の話なんですよ。原作のタイトルも、『4姉妹鎌倉物語』ではなく『海街diary』ですしね。街に人がやってきて、街から人が去っていくという、家族よりも広い世界の物語を描いたつもりです。

僕が“家族”を中心として描いた作品は、視野を狭く狭く作って、全ての出来事が家の中で起きる『歩いても 歩いても』『海よりもまだ深く』の2作品だけです。それ以外は、家族と社会の接点や、現代と家族の境界面での摩擦を撮っている意識でいます。

『海よりもまだ深く』より
海よりもまだ深く』より

兄の命日に妻、息子を連れて帰郷し、家族一同が集まる様子を描いた『歩いても 歩いても』では、家族の何気ないやり取りの中に各々が胸に秘めている思いを浮き上がらせた。『海よりもまだ深く』では、それぞれが「こんなはずじゃなかった」と夢見た未来とは異なる現実を生きる元・家族が台風の夜に偶然居合わせる様子を描いている。

家族を意識して描いているものだと…意外でした。

例えば子供の取り違えを題材にした『そして父になる』も、“家族”を描くぞっていうことではなく、「父親はいつ父親になるのだろうか」というシンプルな疑問から生まれた作品です。時間か、血縁か、親子を繋いでいるのはどちらなのか、ということを考えて作りました。まあ、“家族”といえば“家族”なんですけどね(笑)。

良いですよ、本人は否定しているけども、“家族”を描き続ける監督っていうことにして頂いても(笑)。

日本映画の現状と作品の多様性について

『三度目の殺人』より
三度目の殺人』より

近年では、次々と変容していく事実に翻弄される弁護士と、被告をはじめ事件に関わる人々の緊張感あふれるやり取りを描いた心理サスペンス作品『三度目の殺人』が、日本アカデミー賞最優秀作品賞など主要6部門で最優秀賞を受賞。

これまで多彩な題材に取り組んできた是枝監督は、監督自身の発想から生まれたオリジナルのストーリーを世に送り出す一方で、『海街diary』や『空気人形』など、原作を元にした映画も生み出している。そんな是枝監督に、今の日本映画の状況についても問いかけてみた。

過去には原作を実写化した作品、オリジナルと幅広く手掛けていますが、現代の映画作品に漫画などの原作が多いのには背景があるのでしょうか?

まず、漫画を原作にした日本映画が多いのは、日本の漫画が優れているからです。圧倒的に面白いからです。今の時代、映画でもテレビでも、プロデューサーはみんな本屋に行って漫画を探して読んでいますし、それぐらい漫画が面白い、という前提はあります。

作り手として感じるのは、ここ20年はずっと、監督発のオリジナル企画が映画になりにくい状況が続いていますね。ただ、そうすると間違いなく映画作品の多様性は失われていきます。

オリジナルでやろうと思ったら貧しさに堪えないといけない現実があって、その状況はなんとか変えていかないといけないですよね。

『万引き家族』より
万引き家族』より

状況を打破するためにはどういうことが必要だと思いますか?

僕自身オリジナル作品を作り続けていくことで、現状に抵抗していくしかないです。あとは、自分の周りに同じような考えの監督達を集めて、今の流れにどう抵抗していくか考えることはあります。例えば西川美和監督は、僕以上にオリジナル作品しかやっていないですからね。

あとは、僕は自分が見たい作品を作っているつもりですが、映画を見る側の方々も変化してきているという要因もあるかもしれませんね。

見る側の変化については、どういう時に感じますか?

40~50代の僕の同世代、例えば僕の高校の同級生は、僕の映画は公開初日に見に来てくれるけど1年間で見た映画はその僕の映画だけという人が多い。それは、僕らの同世代が生きていく上で映画を必要としていない側面と、その世代が見たいと思う映画が無くなってきている側面の両方に起因するとは思います。でもそうなってくると、作る側としては、ドラマの視聴率と一緒で見てくれる層に向けて作るようになりますよね。

若い層が多く映画館に足を運んでくれる、そこに合わせて作品が作られるようになっていくと。

そうですね。若い人が好きな漫画の実写化や、女子高生が出てきて、記憶が失われたり、病気になったり、タイムスリップしたりして物語が展開していくようなキラキラした作品が多くなっていきますよね。

なんだかおやじの愚痴になっちゃいますね(笑)!

でも、実は僕らの世代でもそのような作品を沢山観ていたんです。例えば僕が大学生の頃も『時をかける少女』とか『さびしんぼう。』とか大林宣彦の作品にはまっていたんですよ。タイムスリップものというくくりでは昔から現代の作品に至るまで通じるものがあるわけですよね。だから、現代の女子高生も一面的に批判できるわけではないとも思います。

現代の作品に出演している若手俳優の方々についてはどのような感想をお持ちですか?

昔に比べるとみんな芝居が上手になったと思います。例えば、広瀬すずさん、土屋太鳳さん、川口春奈さんにしても、みんな上手い。浜辺美波さんも良いですよね。あの年齢でよく、振り幅を持って芝居ができているなと思うくらい。昔の10代の役者に比べると、役者のレベルが上がっている気がします。なぜかは分からないですけど…。

彼女達はそういうキラキラした作品にも出ていいけど(笑)、だからこそチャンスがあれば、逆に、そうではない多様な作品で、若手俳優の子達と一緒に作品を作りたいですね。

Photos(15枚)

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