東村アキコの漫画を実写化した映画『かくかくしかじか』が、2025年5月16日(金)に全国公開。主演を務める永野芽郁と共演の見上愛にインタビューを行った。

漫画家・東村アキコと恩師の実話『かくかくしかじか』

原作となる漫画「かくかくしかじか」は、「海月姫」「ママはテンパリスト」「東京タラレバ娘」などで知られる漫画家・東村アキコの自伝的作品。東村アキコがまだ何者でもなかった頃の恩師との日々を描いた、笑いあり涙ありのストーリーだ。

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漫画家を夢見る明子と恩師の9年にわたる物語

主人公は、少女漫画家を夢見る高校生・明子。美大受験のため、クラスメイトの北見に誘われて絵画教室に入るが、そこで出会ったのは竹刀片手に怒号を飛ばす最恐の絵画教師・日高先生だった。彼のスパルタ指導ぶりに恐れおののく明子だったが、絵の実力と情熱を持つ日高先生は、やがて明子にとってかけがえのない恩師となっていく。

「かくかくしかじか」は、そんな明子と日高先生の9年間を描いた作品。宮崎、石川、東京の3つの街を舞台に、高校生だった明子が美大受験に挑み、夢を叶えるまでの道のり、そして誰もがきっと経験したことのある大切な人との出会いと別れを繊細に紡ぎ出す。

永野芽郁＆見上愛にインタビュー

今回は、主人公・明子に扮する永野芽郁と、明子を絵画教室に誘うクラスメイトの北見を演じた見上愛にインタビューを実施。明子の“夢”を描いた本作にちなみ、ふたりの夢や、恩師の存在、さらには休日の過ごし方など、たっぷりと語らってもらった。

2人にとって記憶に残る“恩師”

普通ではないけれど強い絆で結ばれた明子と日高の師弟関係が印象的です。おふたりにも明子にとっての日高先生のような恩師はいますか？

見上：実は、大学受験のために通っていた個人塾で、日高先生と似たおばあちゃん先生に出会っています。竹刀は振り回してないけど、結構厳しくて。でも生徒1人1人と向き合って、ご飯を作ってくれたり、1日16時間ぐらい勉強する合宿の場を設けてくれたり、とてもお世話になりました。

自分が大学生になってからは、合宿の手伝いに行き、今度は自分が先生の立場になって生徒に教えたりもして。撮影中はその先生のことを何度も思い出しました。

永野：じゃあ本当に明子だ！

見上：そうですね。(笑)

永野：私には未だに思い出す中学の学年主任の先生がいます。中学校はとっても大好きだったのですが、当時はその学年主任の先生がすごく苦手だったんです。何をしてもすぐ怒られて、私、目をつけられてるのかな？と思っていました。

でもある日、先生が「男女ともにみんなのことを友達として平等に見て、みんなを繋げられるのはあなただけだから、あなたが学年の雰囲気を作りなさい」って言ってくれて、私のことを信頼してくれての事だと分かって、それからすごく好きになりました。その先生とは未だにご飯に行くほど仲良しで、当時、学年主任をやってくれて本当に良かったなと思っています。

クラス委員長などをしていたんですか？

永野：全くです。それなのに学年の雰囲気作れって言われて。(笑)どういうこと？と思ったのですが、クラスの仲間たちはもちろん、学年全体のことが大好きだったので、あの当時の自分のピュアさみたいなものを先生は信じてくれていたんだと思います。

“恩師”とは少し変わりますが、自身の人生や役者・モデルとしての活動において、目標とする人物やロールモデルのような方がいれば教えてください。

永野：私はファッションの分野だと、モデルのケンダル・ジェンナーとジジ・ハディットが大好きなので、その2人のスナップされたものは必ずチェックしています。プラダのショーでお2人を見た時には泣きました。

人生の目標だと、母親になりますね。母の生き方だったり考え方だったりには常に影響を受けて過ごしてきました。自分もだんだん大人になってきて、より母のすごさを感じる毎日なので、母のことは常に追いかけています。

見上：私は寺山修司さんです。人間の多面性みたいなものを認めてくれているから、役者以外の表現、たとえば雑誌を作るとか、そういう活動もするきっかけになったのは、やっぱり彼の存在が大きいかなと思います。

どういったきっかけで寺山修司さんに惹かれたのですか？

見上：演劇で知りました。高校の時に兼部で演劇部に入って、入部したその日が作品のオーディションみたいな日で、渡された台本が寺山修司の「犬神」という作品でした。最初は訳がわからなすぎて。(笑)そこから彼や作品について調べてくなかで、どんどん好きになっていきました。

辿り着いた芸能界、自信を失ったことは？

『かくかくしかじか』は明子の夢をまっすぐに描いた物語でもありましたが、おふたりは現在の活動は小さい頃からの夢でしたか？

見上：私はもともと舞台の演出家になりたくて、大学の進路も含めてそのための順序を踏んでいるつもりでした。でも大学に入ってからご縁で役者をやってみませんか？と声をかけていただいて、この活動を始めました。

永野：知らなかった！

見上：ただ、舞台の演出家という夢は、自分が進む道を選択する段階で何かしら決めなきゃっていう焦りから思っていた部分もあったと思います。あまり夢とか目標とかしっかり決めるタイプではないので、その時その時ご縁があるところで挑戦していきたいなと考えていますね。

永野：私は小学校3年生のときに今の事務所にスカウトしていただいて芸能界に入りました。当時は何がなんだかわからず、オーディションの存在も知らなかったので、スカウトされたらそのままテレビに出られると思っていたんです。それで、母親には「そんな簡単な世界じゃない」って大反対されました。

テレビに出たいという気持ちはあったのでしょうか？

永野：バラエティ番組が大好きなので「しゃべくり007」に出るのが夢でした。いざ事務所入ったら演技レッスン受けてくださいって言われて、え…？バラエティに出る人って演技レッスン受けるの？となりました。(笑)レッスンに行ったら頑張っている同世代の人たちがいっぱいいて、これはちょっと大変な世界だなっていうのを認識していきました。

夢に向かう明子ですが、時には絵が描けなくなってしまうこともありました。活動の中で自信を失ったり、スランプ状態に陥ったりしたことはありますか？

見上：まだないかもしれないですね……。ただ、毎日その日の反省会はしています。家に帰ったときに、「あれ言わなきゃよかったな」とか、「もっと面白い返しできたな」みたいな。だけど反省会をやったら終わりという感じで、それを引きずって夜眠れないとかにはならないです。あまり自分は人や環境に左右されにくいタイプなのかなと思っています。

永野：私は何度かありましたね。違うことの方が向いてるんじゃないかと思ったこともあります。単純に忙しい10代を過ごしていたので、その忙しさに自分の心と体がついていくのが必死で、一瞬でも取り残されるとどう戻していいのか分からないっていう事をループしていました。

どうやってその悩みが開けていったんですか？

永野：時間でしたね。自分が自分じゃないみたいな瞬間が何度か訪れるわけですけど、それを乗り越えるのも自分しかないって分かっていながらも、自分のことを理解する時間がなかったから、ただ必死に毎日過ごして、でも時間がいつの間にか自分に戻してくれて。もちろん支えてくれる先輩方もたくさんいたので、周りの皆さんがなんとか引き上げてくれて、また自分の足で立ってる感覚が戻ってきたって感じです。