東京オペラシティ アートギャラリーが企画展と同時に開催する"project N"の2012年度作家が決定した。「project N」は、東京オペラシティ アートギャラリーのコレクションの中心作家である故 難波田龍起の遺志を受け継ぎ、若手作家の育成、支援を目的として1999年12月よりスタートした企画。今までの受賞作家は計48名にのぼり、現在もますます活動の場を広げている。その中に新たに加わったのは、関口正浩(せきぐちまさひろ)、榎木陽子(えのきようこ)、阿部未奈子(あべみなこ)の3名。それぞれ東京オペラシティ アートギャラリーにて個展が開催される。

■関口正浩

シリコン板の上に原色の油絵具を塗り、それが生乾きのうちに薄く引き剥がしてキャンバスに貼り重ねるという手法で制作。画面では、上から貼った部分が、逆にそこだけ剥がれて下の層が露呈しているように見えるなど、不思議な絵画空間となっている。

「崩れる旗 #3」  ©関口正浩 photo : Rui MIZUKI

■榎木陽子

どこかの都会の街角、人で賑わう店先、飲みかけのビールが置かれたテーブルなど、きわめて日常的な光景でありながら物語性を強く感じる作品を描く。制作にあたってしばしばプロットを用意するという榎木。project Nに展示する新作の題材を震災の経験を出発点としてSF(サイエンス・フィクション)とし、その中で語られる思想や時制、理不尽な状況、人びとの連帯などをテーマとした連作となる予定。

「コミック」 ©榎木陽子

■阿部未奈子

一貫して風景画を描く阿部未奈子。実際の風景を撮影してコンピュータに取り込み、エフェクトをかけて揺さぶった後、マスキングテープで保護したキャンバスにローラーで描きうつす、という手法による画面は、版画と見まがうほどに平面的である。阿部の制作における試みは、彼女自身が見て記憶する「リアルな」風景を絵画として成り立たせることで、見ることの仕組みを問うことである。

「Scene no. 28」 ©阿部未奈子 courtesy : artist and Base Gallery

【展覧会情報】
■project N 49 関口正浩
期間：2012年4月13日(金)～ 9月2日(日)
(企画展 「BEAT TAKESHI KITANO 絵描き小僧展」/収蔵品展041「難波田龍起・舟越保武 精神の軌跡」)

■project N 50 榎木陽子
期間：2012年10月3日(水)～12月24日(月・祝)
(企画展「篠山紀信展 写真力 THE PEOPLE by KISHIN」/収蔵品展042「ナイーヴな作家たち(仮題)」)

■project N 51 阿部未奈子
期間：2013年1月12日(土)～3月24日(日)
(企画展 「JUN-ICHI ARAI 美しい布の軌跡(仮題)」/収蔵品展043「自然の表現(仮題)」)

会場 : 東京オペラシティ アートギャラリー 4Fコリドール
住所 :  東京都新宿区西新宿 3-20-2
TEL : 03-5353-0756
開館時間 : 11:00～19:00(金、土は20:00まで。入館は閉館の30分前まで。)
休館日 : 
月曜日(祝日の場合は翌火曜日。ただし5月1日、9月18日は開館)/全館休館日(2012年8月5日、2013年2月10日)
入場料 : アートギャラリー入場料に含まれる。収蔵品展入場券(200円)でも閲覧可能。

【アーティスト情報】
■関口正浩(せきぐち・まさひろ)
主な個展は2010年「平面B」(児玉画廊、東京)、11年「反転・回転・反復」(児玉画廊, 東京)。主なグループ展は07年「LOCA2007」(京都市立芸術大学、京都)、09年「ignore your perspective 7」(児玉画廊、東京)、10年「Is next phase coming?」(児玉画廊、京都)、11年「VOCA展2011 新しい平面の作家たち」(上野の森美術館、東京)など

■榎木陽子(えの・きようこ)
主な個展は2006年De Queeste Art(ワータウ、ベルギー)、08年「50/25」(Cypres Galerie、ルーベン、ベルギー)、09年「遠い瞬間」(ギャラリー砂翁、東京)。主なグループ展は06年「ELIA/Bijloke」(ゲント)、07年「Temporary City」(ローケルン、ベルギー)、08年「トーキョーワンダーウォール公募2008」(東京都現代美術館)、10年「Spirits and Landscapes」(Grimmuseum、ベルリン)など

■阿部未奈子(あべ・みなこ)
個展は2006年(ベイスギャラリー、08、10年)。グループ展は04年「東京藝術大学卒業・修了作品展」(東京藝術大学大学美術館)、07年「Landschaft」(ヴァイスフェルト、東京)、「Young Japanese Landscape」(Museum of Young Artist、ウィーン)