ジュンヤ ワタナベ(JUNYA WATANABE)の2026年春夏コレクションが、2025年10月4日(土)、フランス・パリで発表された。
最初に目に飛び込んできたのは、真っ赤なパンプスがまるで彼岸花のようにスリーブに咲くドレス。よく見ると、厚底、フレンチヒール、チャンキーヒール…と多彩なデザインがミックスされており、流麗なブラックのボディとコントラストを描きながら、前衛的なフォルムを形作っている。
続くルックでは、麦わら帽子をフリル装飾のように見立てたドレスや、純白の日傘をスカート部分に組み込んだワンピース、レースのブラやショーツをパッチワークの如く駆使したヌーディーなシアードレスなどが登場。ハンガーに掛かったままのトレンチコートを2枚繋いで、そのまま衣服として昇華したピースも印象的だ。このように今季は、アイテムが持つ本来の機能を見直し、全く別の役割へと組み替えるアイデアが鍵を握っている。
"役割の転換"は、スプーンやフォークといったテーブルウェアにも見ることができた。たとえば、シルバーのトップスのスリーブにあしらわれたスプーンの数々は、メタリックな重厚感を伴って鎧のように堅牢な佇まいを演出。金のフォークは無造作に繋ぎ合わせられ、鋭利な棘を思わせるハードな表情を演出している。
やがてこれらの物体は、衣服を装飾するディテールとしてではなく、シルエットそのものを構築する骨組みへと解釈されてゆく。ツンと上向きに張ったパワーショルダーのブラックドレスは、実は中にシューズを入れてそのダイナミックなフォルムを作り出しているのがユニーク。このほかにも、柔らかくシアーなテキスタイルの中にワイングラスやブーツを忍ばせて、立体的な造形を演出したドレスやスカートが提案された。
さらにショーが進むと、もはや骨組みこそが主役を張る存在に。自由に組み合わせられた三角形の枠は、伸縮性のあるシアー素材でかろうじて繋がれてはいるものの、今にも生地を突き破りそうな勢いで躍動。花びらのような円形のワイヤーはうねり、波打ちながら、シンプルなミディドレスを大きく変形させている。
コラボレーションアイテムの注目度も高いジュンヤ ワタナベだが、今季はステューシー(STÜSSY)とタッグを組んだTシャツを展開。フロントにステューシーのロゴを配したアイコニックなTシャツをベースに、ハンガーに掛けた2枚をドッキングするという今季ならではの手法で遊びを加えた。片方のショルダーからは、スタッズやビジューで装飾されたハンガーが垂れ下がっており、ジュエリーのような華やかさとエッジをプラスしている。
フィナーレを飾るのは、ジュンヤ ワタナベを象徴するレザーピースの数々。パワフルで無骨な印象を持つライダースジャケットだが、今季は一部を解体することで、構築的なフォルムは保ったまま素肌を覗かせる仕様にアレンジした。リボンのディテールや、ドット柄のタイツとのコンビネーションにより、ロマンティックなエッセンスも匂わせている。