ヨウジヤマモト(Yohji Yamamoto)の2026年春夏コレクションが、2025年10月3日(金)、フランスのパリ市庁舎にて発表された。
今季も、ブランドを象徴する「黒」を主役にコレクションを発表したヨウジヤマモト。全てを飲み込む闇の黒、力強さの象徴である黒、重厚な黒──黒が持つそんなイメージとは裏腹に、今季のピースには柔らかさや儚さ、穏やかな温もりが漂っているように思われる。
“やさしさ”を形作っている要素のひとつは、流れるような布地の動きだ。分量を持たせたロングドレスは、生地を結んだり、編み込んだりしながら緩やかなドレープを演出。ゆったりと身体を包み込むケープドレスはシアー素材を幾重にも重ねて優雅さを漂わせるとともに、布地を贅沢につまんで花のモチーフを咲かせている。
柔らかな風合いのテーラードジャケットやミニスカートは、経年変化により生地がほどけているようだ。ぼろぼろになって解体された部分からはゆったりと糸が垂れ、モデルの動きに合わせてしなやかに躍動。同時にほんのり素肌を透かし、脆く儚げなムードをもたらしている。
ドレスはそのほとんどが左右非対称に仕立てられている。たとえば落ち感のあるシンプルなシアードレスは、片方はノースリーブ、もう片方はケープ状と異なるスリーブデザインを採用。赤のチェックを差し込んだドレスは、フロントを横断するように大ぶりのフリルをあしらい、スカートの重量感も片側のみに寄せていた。一見偶発的なフォルムにも見えるが絶妙なバランスで成り立っており、高度なパターンメイキングの技術を見て取ることができる。
また、山本耀司の友人であり、モードの帝王としてファッション界を牽引してきたジョルジオ・アルマーニがコレクション発表の約1ヵ月前に亡くなったことを受け、彼を追悼するようなピースも登場した。穏やかに流れるシアーなブラックケープには、バックにジョルジオ アルマーニのポスターグラフィックをオン。フロントには、山本耀司、ジョルジオ・アルマーニ両者のサインとメッセージをあしらっている。
フィナーレに向けて、目の覚めるような赤のロングコートやマントを纏ったモデルが次々に登場。ランウェイを歩きながらアウターを脱ぎ、再び黒の世界へと戻る演出が披露された。そしてラストルックには、1986年のアーカイブを彷彿とさせる、バラを思わせる真っ赤な布地をあしらったコートを披露。モデルは鮮烈な赤を引きずりながらゆっくりと歩みを進め、ドラマティックにコレクションを締めくくった。