宮舘さんはいかがでしょう?
宮舘:北斗もミステリアスな男です。何を考えているのかわからない、そして何を言い出すかすごく気になるキャラクター。僕自身とは全く似てないですが、演じてみてはじめて、“あ、北斗になれる自分がいるんだ”と気付けました。
存在感の強い人物ですよね。
宮舘:そうなんですよね。人間って、「何か飲み物を飲みたい」、「ここを歩いていきたい」とか、日々“思念”に突き動かされて生きている。その“思念”がこの作品では大事なキーワードなので「“思念”はとても大切なんだよ」というのを観客に伝えるべく、北斗って存在しているのかなとも思いました。
“思念”をもう少し噛み砕くと?
宮舘:「〜したい」というふとした衝動や方向性、言葉になる前の気配です。北斗はそれを強く帯びている人。考えは見えないのに、次の一歩に“引力”があります。
それぞれの役を演じるにあたり、大事にしたことは?
山下:おふたりのお芝居についていこうという気持ちでいました。雄司と北斗がこの作品にすごくマッチしていたので…全任せすることに不安は一切ありませんでした。前半は水上さん演じる雄司のトーンにあわせて、“妻として支える”、後半では、北斗の存在感が増して作品のトーンも変わっていくので、雄司に寄るのではなく、ふたりの中間にいようと思い演じていました。
宮舘:そう言っていただけてすごく嬉しいですね。僕は個人としては映画初出演になるので、皆さんにしっかりついていこうというスタンスでいました。とはいえ、作中では北斗が話を進めていく役割を担っていたので、毅然と、飄々とした態度の北斗により説得力を持たせることができるよう努めました。
具体的にはどのように?
宮舘:とにかく台本を何度も読み込んで、分からない事はすぐに調べて、北斗のセリフ/話を理解しようと徹底していました。語る自分が内容を理解していないと、みんなのことを納得させることはできないので。どうみんなを説得して巻き込んでいくかということを考えながら台本を読み込んでいました。
水上:僕もいかにリアリティを持たせるかを意識しました。邦画・洋画、民放ドラマも含めて、最近は“きれいなものだけを見せる”傾向、ルッキズムが強いと感じていて。今回はそこから脱却するために、ノーメイクで臨みました。
ご自身で提案されたのでしょうか?
水上:はい、自分からです。たとえば田舎で暮らす人ならヒゲは伸ばしっぱなしか?いや都会でもあり得るよな、と生活の手触りを想像しながら、その土地の暮らし・文化・歴史を丁寧に調べました。実際に歴史のある建物とかもお借りして撮影もさせていただいたのですが、現場に立つと土地のパワーや空気感をはっきり感じるんです。そのまま画に乗せて届けたいと思っていました。
映画『火喰鳥を、喰う』のキーワードは、みなさんおっしゃっているように“執着”と“思念の強さ”。作品外で、人間の執着の恐ろしさ、思念の怖さを感じたエピソードはありますか?
水上:僕1個すごく強い思念の話があるので、最後に言います。
宮舘:めっちゃハードルあげるじゃん。
山下:うーん、あるかなあ。
水上:え、じゃあ僕から言っていいですか?つい最近のことなんですけど、
宮舘:結局先に言うんだ(笑)。
水上:つい最近、久々に電車に乗ったんですよ。山手線に乗って、とある駅で降りて、トイレに行きたくてトイレに入ったんです。そうしたら、横に立っている方がかなり便器から離れて立っていたんです。
山下:ええ??
水上:あろうことか横に思い切り振ったんですね。そこから先は想像にお任せしますが、初めての体験で衝撃的すぎて三度見くらいしました。
宮舘:いやちょっと、僕らも今衝撃受けてますよ。
水上:だからその、執着ってこう、周りの世界が見えなくなって“入っていく”、みたいな感じだと思いますが、僕のこと全く見向きもせずに立ち去っていきました。笑っちゃいましたし、すごく怖かったです。これから『火喰鳥を、喰う』が始まるのかと。
宮舘:たしかに3人目でしたね、話す順番。あとその話を映画に絡めないでください(笑)。
気を取り直して、山下さんはいかがでしょう?
山下:私は、その日起きたことを夢でも繰り返し見るんですけど、これが執着なのかな?と思っています。夢って、自分が考えていることが反映されるって言うじゃないですか。普段から「今日はこれがだめだったな」「こうすればよかったな」とか、夜に反省会をしているんですけど、自分の生活に執着が強いからこそ、夢でもその日にあったことを繰り返してるのかなって。宮舘さんはどうですか?
宮舘:最近の話ではないですが、「デビューする」ということが思念でもあり執着でもありましたね。今Snow Manとしてデビューして5年目になりますが、デビューさせていただけるまでにそこまでの下積みで15、6年かな?長い年月をかけて。デビューを目標に日々頑張ってきたので、グループへの執着、グループでデビューすることへの執着はとても大きかったと思います。
【作品詳細】
映画『火喰鳥を、喰う』
公開日:2025年10月3日(金)
監督:本木克英
脚本:林民夫
出演:水上恒司、山下美月、宮舘涼太、森田望智、豊田裕大、小野塚勇人、吉澤健、平田敦子、カトウシンスケ、麻生祐未
原作:原浩「火喰鳥を、喰う」(角川ホラー文庫刊)
配給: KADOKAWA、ギャガ