コーチ(COACH)の2026年春コレクションが、ニューヨークファッションウィーク期間中の2025年9月16日(月)にニューヨークで発表された。
 今シーズンのコーチは、ニューヨークの日常で感じられる魅力を詰め合わせたかのよう。様々な人が行き交う街の中で出会う荒々しさと、輝きに溢れるロマンティックなムード。さらに言及するならば、クリエイティブ・ディレクターのスチュアート・ヴィヴァース曰く、ニューヨークの“荒々しさ”とは一般的なイメージとは少し異なるということ。マイナスなイメージではなく、時間の経過が生む風合いの豊かさだったり、そこに見る生命力のことを差すポジティブな思考だ。
 ファブリックの軸は、デニム、レザー、そしてトラッドなチェック柄の3つ。そして、まず最初に見るべきはレザーだ。今季は“質感”のバリエーションに富んでいる。なめらかなワックス仕上げ、毛羽立ちのある風合い、そして箔を部分的にこすることで出したユーズド感……。ナッパーレザーは柔らかく、スエードはしっとりとしたテクスチャーで、着る人の愛着が感じられるかのよう。ライダースジャケットやベストとして度々登場している。
デニムも同様、時の経過を彷彿とさせるユーズド感を主軸としており、随所にあたりや解れ、汚れのようなディテールが施されている。ドレープ感のあるワイドシルエットで仕立てられたデニムパンツは、ほぼ無色ほどに脱色されている。また、丁寧に施されたパッチワークは、破れても継ぎはぎして1本のデニムを愛用する人々を思わせるかのようで面白い。
チェック柄は、ブラウンあるいはグレーを基調とした極めてクラシックなものだけを選択。その中には、コーチの“C”を連ねたシグネチャーパターンが重なるグレンチェックも存在している。これらは、パッチワーク状に構成されたタック入りのトラウザーやスカートなどに採用しており、時にはフロントとバック、そしてサイドで異なるファブリックを用いて表情豊かに仕上げた。
Tシャツドレスは、それ単体だとカジュアルだったり、モダンだったり。印象的だったのは、そこに加えたファンタジックなベールだ。きらめく星や空に浮かぶ雲のアップリケがあしらわれたオーガンジーのロングドレスは、リアルクローズのムードを一変させる。特に、アメリカ各都市の夜の街並みを切りとったカットソーの上では、街全体を幻想的な空気で包み込むようだ。
シルエットは、前シーズンの流れを継ぐかのように、コンパクトなトップスとワイドなボトムスのメリハリが効いている。特にジャケットやベストは、ウエストラインほどの短い着丈が多いためか、ワイドパンツやプリーツスカートといったボトムスの躍動感あるボリュームがより強調されている。一方で、タイトスカートに見るスリットは、軽やかな動きあるラインを作る重要な手段となっている。
バッグは、レザーのシボ感など、上質なテクスチャーが際立つミニマルな印象。その中で、ヴィンテージのコインケースに着想を得たがま口“キスロック”が目に留まる。新作として登場する、台形型の「ブリーカー バケット バッグ」や筒形の「キスロック バレル バッグ」は、“キスロック”のコンパートメントがあしらわれた。また、コンパクトなクラッチとして、“キスロック”を備えた丸いポーチと、アイコンバッグ「タビー」の新型が登場している。