アレキサンダー ワン(alexanderwang)が、2026年春夏コレクションをニューヨークファッションウィーク期間中に発表した。今季はブランド20周年となる節目のランウェイショーとなり、そのタイトルを「The Matriarch(女家長)」と銘打った。
タイトルの「The Matriarch(女家長)」は、ブランド設立者であるアレックス・ワン(Alex Wang)のインスピレーションの源であり続ける存在である母、イン・ワン(Ying Wang)を象徴とした“アルファ・フィメール=強き女性像”にオマージュを捧げるべくつけられた。
ランウェイの舞台は、ニューヨーク・チャイナタウンの玄関口に位置する、100年以上の歴史を誇る建築「58 Bowery」。今後アジアのグローバルな文化拠点として生まれ変わるこの場所は、長年にわたって文化的な対話を続けてきたブランドにとって大きな意味をもつという。
20周年のショーの核をなすのは、アレキサンダー ワンが追求してきた“パワードレッシング”。自信と自由な発想に満ち溢れた、強い女性たちに向けたスタイルだ。
幕開けを飾るファーストルックがそれを物語る。直線的かつ厳格な、強さのあるスーツ。バスト下のラインとポケット上のわずかなクビレによって女性らしさを強調するという、いささか違和感のあるスーツは、カクテルドレスさながらに着こなされ、ピンヒールパンプスと新作ハンドバッグ「Siren」とともに、強い女性を体現している。
この表現はコレクションを通して軸となり、時には大胆にカッティングが入ったり、ラミネート加工が施された異質的なツイードで表現されたりと、表現の幅を広げている。と同時に、毛足の長いファーやブラックレザーといったタフな素材も存在感を増していく。シャツとベストのフォーマルなスタイリングは、“パワードレッシング”の意匠を継ぐシャツと、ダイヤモンド状のカッティングを施したニットベストによって提案されている。
中盤ほどに差し掛かると、素材のコントラストが顕著になる。特に印象的なのが、肌を透けさせるクリアなナイロンファブリック。これをレーザーカットによって繊細なレースのように形作る手法が目に留まった。ランジェリーのようなセンシュアリティとインダストリアルなムードが混ざり合っている。
また、ランダムな切り込みが入れられたブルゾンやミニスカートは、“棘”があるかのよう。ピタッと体に張り付くようなクロップド丈のトップスとミニスカートの組み合わせは、直線と角のある図形的な風貌となり、シャープでタフなイメージを明確に示している。
終盤にかけてはスポーティな表現が加わっていく。頭をすっぽりと覆うポンチョ型のパーカーは、シアーな素材からテクニカル素材まで様々なファブリックを用い、たっぷりの分量で仕立てた。透ける素材は軽やかに舞い動き、タフな素材はうしろにトレーンを引いて力強い余韻を残した。