ファンダメンタル(FDMTL)の2026年春夏コレクションが、2025年9月4日(木)、渋谷ヒカリエにて発表された。
ファッションデザイナーとして名乗るには未熟で、どこか居心地の悪さを感じていたというデザイナーの津吉学。20周年を記念した初めてのショー、そのショーで得た思いもよらぬ変化を映し出した先シーズンを通して、ようやく「服屋」から「デザイナー」である自分を受け入れた今シーズン。掲げたテーマでもあり「こだま」とも称される「Echo of [ ]」を手がかりに、改めて自分は何者なのかを問いかけた。
コレクションの核となるのは、ブランド創業当時から大事にしてきたインディゴ。次々と登場する藍色のアイテムたちに魅せられ、徐々にインディゴの世界に浸っていく。同時に津吉自身のアイデンティティも改めて示しているようだった。
その中で今季は新たな試みとして、“変形するデザイン”を取り入れている。パンツになるジャケット、はたまたジャケットになるパンツといったように、前後上下マルチウェイの機能を持つジャケットやトップス、ハーフパンツが登場した。
こうした“思い切ったパターンワーク”は、純粋にデザインのアクセントとしても採用。主にデニムジャケットをベースに、袖を複数本ふんだんにあしらったり、背中部分にジーンズのバックヨークを配したり、ワイドシルエットのジーンズを袖に採用していたりと、自由なデザインを楽しんでいる様子が感じられる。
また、コレクションの中で印象的だったのは、定番のデニムやボロといったアイテムの中に、艶やかな光沢感のサテン生地を用いたテーラードがあったこと。軽やかに揺れるノーカラージャケットとワイドパンツは、コレクションの中で随一のエレガントさを放つ。
加工によるクラフト感あるデザインを大事にしてきたファンダメンタル。今季は、特に“激しい”加工を施したそう。糸がほつれ、あたかも最初から年代物であるという風格を漂わせるダメージデニムやジャケット、シャツが揃う。
先シーズンに取り入れたコンピューターを駆使した加工は、今季も継続。津吉が趣味でコレクションしているヴィンテージの襤褸を撮影・スキャン・転写したメッシュ素材のウィンドブレーカーがその好例だ。
ショーに華を添えるのは、indigo la Endやゲスの極み乙女でボーカルを務める川谷絵音も参加するバンド、ichikoroによる生演奏だ。バンドのメンバーが奏でる音が会場にこだまし、観客の心を揺さぶる。「テーマの『Echo of[ ]』のブランク部分に何が入るのかはみんなの解釈次第」。そう語る津吉の思いに耳を傾け、バンドはもちろんコレクションが響かせる音との対話を楽しめたコレクションとなった。