ソウシオオツキ(SOSHIOTSUKI)の2025年秋冬コレクションが発表された。
日本人の精神性を反映したテーラーリングを提案してきたソウシオオツキ。今回は、2025年春夏シーズンに引き続き、1980年代バブル期の日本人男性をインスピレーション源としたコレクションを展開。日本人のアイデンティティと、西洋社会に対するコンプレックス、そしてその奥に潜む悲哀や内省に目を向けたデザイナーの大月は、当時の表層的な高揚感の中で生まれた美意識をモダンに再解釈。不完全さにこそ宿るエネルギーを反映した、新たな“日本のトラッド”の姿を探る。
コレクション全体を貫くのは、西洋的なフォーマルウェアの中に故意に織り交ぜられた歪みや違和感。西洋社会に迎合しようとする日本人のぎこちなさを連想させるような、どこかちぐはぐな印象のスタイリングが散見される。ゴージラインやポケットを低い位置にあしらったジャケットには、あえてハイウエストのパンツと大ぶりなネクタイを組み合わせた。また、ドロップショルダーのジャケットにルーズなボトムスを合わせたルックでは、フォーマルなウイングカラーシャツの異質さが際立っている。
大月は、日本のプロダクトが持つ「完璧さ」に対して、”不完全だからこそ生まれる色気”を内包したウェアをもって問いかける。一般的なテーラリングではB品とみなされるダーツの“えくぼ”を、あえてトラウザーズのタックとして配し、柔らかな陰影のあるドレープを生み出した。また、一部にヴィンテージのデッドストック生地を使用し、時間を経たからこその奥深い風合いを活かすことで、コレクションに重厚感を持たせている。
シルエットは、クラシックなスーツを崩したリラクシングなフォルムがメイン。淡いワインレッドにギンガムチェックを合わせたウエストレイヤードパンツでは、ローライズスタイルのようなラフさを演出した。ほかにも、プリーツを付けたトラウザーズや、身丈の長いダブルジャケット、オーバーサイズのロングコートなど、本来の身体のラインを覆い隠すようなウェアが目を引く。
バブル期を象徴する「パワースーツ」を思わせるパワーショルダーも印象的。当時、自らを大きく見せるために流行したソリッドなラインは抑え、柔らかな丸みを持たせたシルエットへと再構築した。象徴的なのは、肩幅の部分まで硬く編むことでデコルテを強調したニットウェアや、タイトなウエストとのコントラストが際立つフロントフライシャツ。虚勢的な力強さではなく、男性の身体構造そのものの美しさを引き立てる要素としての姿を提示している。
カラーは、グレーやブラウン、ブラックなど、フォーマルなパレットで構成。全体の色味は抑えつつも、ギンガムチェックのネクタイやダマスク柄のスカーフ、ブルーのカラーシャツを襟元に添えることで、トラッドな華やかさを加えている。