ディオール(DIOR)は、2026年夏メンズコレクションをフランス・パリで発表した。新クリエイティブ ディレクター、ジョナサン・アンダーソンによるファーストコレクションだ。
これまでJW アンダーソン(JW Anderson)を率いてきた他、2025年3月までロエベ(LOEWE)でクリエイティブ・ディレクターを務めたジョナサン・アンダーソンが、ディオール就任後初となる2026年夏メンズコレクションを披露した。
ジョナサン・アンダーソンが意図したのは、「フォーマリティの再構築」。ディオールの築いてきた伝統的な文脈を読み解きながらメゾンの言語を新たに積み上げていくばかりでなく、階級に基づいた装いなどファッションそのものの歴史も踏まえ、過去と現在を共鳴させながら新たなスタイルを提示していく。
コレクションの随所に見て取れるのは、フォーマルな装いのアイディアを、軽やかな遊び心とともに新鮮に解釈したピース。礼服として用いられるテイルコートはベルベットでミニマルに仕立て、18~19世紀のウエストコートは可憐な小花模様の刺繍を施してアレンジ。ノーブルなジャケットの飾り紐はトロンプルイユで平面的なプリントに変わり、クラシカルなケープは幾何学模様のジャカードニットで表現されている。
ジョナサン・アンダーソンのルーツである。アイルランドの伝統的な「ドネガル・ツイード」を取り入れたジャケットスタイルも象徴的。ディオールのアイコン「バー」ジャケットは、モスグリーンやブラウンのツイードを用いた新たな表情で提案されている。同様に、ダブルブレストやチェスターコートなど、かっちりとしたテーラードウェアにもツイードが用いられている。
また、イギリス軍に由来するストライプ柄のネクタイ「レジメンタルタイ」も散見されている。デニムのセットアップやスエードブルゾン、シャツワンピースとカジュアルな装いへのアクセントとして取り入れられた。
ディオールのアーカイブドレスからインスパイアされたピースも存在感を放っている。大きなラッフルを左右にあしらったエレガントなドレス「デルフト」のデザインコードは、カーゴパンツに落とし込まれた。波打つような布地の流れを生かし、ダイナミックなフォルムを構築している。
また、斜めに生地が流れていく形がエレガントな「カプリス」は、アシンメトリーなデニムパンツに。腰周りのパーツの切り替えによって立体的なシルエットを描く「ラ シガール」ドレスのパターンは、カジュアルなハーフパンツに昇華された。
新たに解釈されたアイコンバッグにも注目だ。「レディ ディオール」は全面にリネンのタッセルをあしらい、躍動感とボリュームをプラス。また、「ディオール ブックトート」には、シャルル・ボードレールの『悪の華』やトルーマン・カポーティの『冷血』など、“ブックカバー”デザインを配してプレイフルに仕上げた。なお、これに連動して、アイルランドの作家ブラム・ストーカーの『吸血鬼ドラキュラ』にオマージュを捧げるクロスボディバッグも登場している。