ダイリク(DAIRIKU)の、2025-26年秋冬メンズコレクションを紹介。
映画をインスピレーション源としているダイリクが今季フォーカスしたのは、映画監督のクリストファー・ノーラン。デザイナーの岡本大陸は「いつか彼の映画をテーマにしたコレクションを作りたいと思って」いたと語り、念願叶ってのクリエーションとなった。クリストファー・ノーランが手掛けた映画『TENET テネット』や『ダンケルク』、『インターステラー』、『インセプション』、「バットマン」3部作といった作品に見られるエッセンスを、デザインの随所に落とし込んでいる。
アイキャッチなのは、『インセプション』に見受けられる“空間の逆転”を思わせるデザインだ。たとえば、ダークトーンの生地を用いた厚手のブルゾンやデニムジャケットは、パンツを逆さまにしたパターンを生かして仕立てられている。背面を見るとより反転したデザインが強調されており、ポケットやパンツのウエスト部分が逆さになっているのが見て取れる。
リフレクター素材のフライトジャケットやポンチョ、ジャケットには、ニューヨークの街並みを逆さにプリント。光を反射する素材の質感も相まって、近未来的な佇まいを見せる。ジャケットのジップには、劇中の印象的な“トーテム”があしらわれているのもポイントだ。
この他、パンツのディテールが上下逆さまにあしらわれたレザーブルゾンも登場。定番のロゴ刺繍カットソーには、“PARADOX”の文字を上下反転させた刺繍ロゴをオン。一方で、「夢の中の夢の中の夢」を意味するメッセージは本来の向きのままレイアウトすることで、時空の歪みをほのめかしている。
また、『TENET テネット』や『インターステラー』で描かれる、一定の時間の流れを超越していく描写へのオマージュとして“形状記憶”のディテールを採用。ブルゾンのドローコードやニットキャップにあしらわれた紐、レザー製のペーパーバッグは、自在に変形させたままその形をポーズすることができる。また、“常にベルトをしている状態”を保つ仕様のパンツも印象的だ。生地と生地の間から不意にベルトが現れるようなデザインとなっており、ベルトパーツのフロントのみがパンツと一体化している。
『メメント』に特徴的なタトゥーも散見された。自身の記憶を10分しか保つことのできない主人公が備忘録として身体にタトゥーを刻んでいく様子をデザインに反映しており、“第2の皮膚”のように薄く透け感のあるタトゥープリントカットソーは象徴的。さらに、ステッチでタトゥーを施したニットや、文字が浮かび上がるような風合いのデニムジャケット、白黒のコントラストで刻まれた文字が際立つテーラードジャケットなどが揃っている。
身頃に大きなポケットを複数並べたミリタリージャケットや、無骨なカモフラージュ柄のコート、パンツなどは、第二次世界大戦中の兵士救出作戦を題材にした『ダンケルク』が着想源だ。ヨーロッパ古着をベースに軍服のディテールを踏襲しており、たとえばロングコートは劇中に登場したコートのディテールからアイディアを得ている。