ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)は、2021-22年秋冬ウィメンズコレクションを発表した。
オンラインにて映像形式で発表された今季のコレクション。映像には、ピュアさと情熱、マスキュリンとフェミニンの間を行き来するかのような、コンテンポラリーダンスのパフォーマンスが映し出されている。世界的に有名なベルギーのコンテンポラリーダンス・カンパニー「ローザス(Rosas)」「ウルティマ・ヴェス(Ultima Vez)」「パリ国立オペラ」から、計47人のパフォーマーが集結し、生き生きとした舞踊が繰り広げられた。
様々な感情が入り乱れるかのような激しさと静寂、相反するムードを併せ持った世界観は、映画監督のペドロ・アルモドバルが描く情熱的で誇張された女性と、コンテンポラリーダンスの振付家、舞踊家のピナ・バウシュのストイックで優美な破壊力から着想を得た。研ぎ澄まされた美を提示する。
大きなバラの花束とともに冒頭に登場する白いロングシャツドレスは、ファッションの専門学生であった1981年に発表したファースト・コレクションのデザイン。ドリス ヴァン ノッテンのデザインのルーツともいえるエッセンシャルなピースが、劇的で繊細な幕開けを告げる。
ゆったりとしたダブルのコートは身体の動きに連動してふわりと空に翻り、チャコールグレーのセットアップは身体のシルエットに沿ってなだらかな曲線美を描き出す。その他にも、反り返る身体によって生み出されるシワやドレープが表情豊かなジャケットや、肌を露出するキャミソールトップス、屈んだ身体と同時に重力によって裾が広がり落ちるロングコートなど、衣服がまるで人の動きに呼吸を合わせているかのようなデザインが印象的だ。
ダンスの躍動感をより一層引き立てているのは、光を反射して煌めくスパンコールやシャイニーなフェイクファー。かっちりとしたテーラードジャケットには、輪郭線をなぞるようにしてモヘアのフェイクファーをあしらい、繊細な毛先が柔らかな印象を演出する。艶やかな光沢のサテンスカートには、柔らかなフェイクファートップスをコーディネート。対照的な質感のコントラストが、余韻を残していく。
1950年代からインスピレーションを得た、レッドのスパンコールを全面に配したドレスは、その鮮烈な光によって瞬時に注目を集めるほどのグラマラスな存在感を放つ。ピンクのスパンコールを散りばめたノースリーブのトップスは、裾にフリンジ状にスパンコールを連ねることで、ゆらめくような輝きを際立たせた。
トロンプルイユプリントも目を引くディテールだ。服地に刻まれたドレープのように見えるグラフィックや、フード付きドレスの襟からのぞくオーガンザと連動したしなやかなアートワーク、写実的なバラを全面に投影したニットは、平面的に描かれているはずなのに布地の流れに乗って立体感のある表情に。また、うねるようなグローブの絵柄を総柄で落とし込んだコートも登場。陰影からすっと伸びるブルーやベージュのグローブは、意思を持ってうごめいているかのようだ。