3.1 フィリップ リム(3.1 Phillip Lim)の2026年春夏コレクションを紹介。
フィリップ・リムがクリエイティブディレクターを退任した2025年春夏コレクション以降、デザイナーチームが跡を継いでいた3.1 フィリップ リム。今季より、韓国系アメリカ人のミシェル・リー(Michelle Rhee)が新たにヘッド・オブ・デザインに就任し、初となるコレクションを発表した。
リーがまず着目したのは、アーカイブに宿る「自由な着心地」「仕立ての美学」「職人技」の3つのスピリットだ。3.1 フィリップ リムらしいカジュアルさと都会的な要素を両立させながら、よりモダンな生地使いやカラーパレット、流動的なシルエットで新たなワードローブを形作る。
たとえば「デニム・アンドーン(denim undone)」として再解釈されたデニムは、ウエストバンドを取り除き、抜け感あるシルエットに。テーラードジャケットは、あえてギャザーやカットアウトを施すことで、“未完成のエレガンス”を表現している。
ユニークな素材使いが光る、‟ディ トゥ イブニングウェア”にも言及したい。サテン地のキャミソールドレスは、深くカットされた胸元にスタッズやビジューを配し、センシュアルなムードに武骨なディテールをプラス。程よく分厚いハリ感のあるサテンを用いているため、大胆かつセンシュアルな構造ながらも、ボディラインを拾いすぎず、絶妙なバランスを保っている。
また、しなやかなレザーにバターイエローのパイソンプリントを施しているのも斬新で面白い。クラシカルなストレートスカートや襟付きドレスにジップラインを組み合わせ、ディテールにギミックを効かせていた。
毎シーズン登場するフラワーモチーフは、華やかなチューリップ柄を採用。軽やかなコットン地の開襟シャツをはじめ、ふんわりとしたオーガンジー素材のノースリーブトップスやミディ丈スカート、ドレスなど幅広いバリエーションが揃う。
コレクション全体を通して、アーカイブを敬いつつ、ミニマルなシルエットや同系色のカラーパレットでまとめることで、現代の女性像に寄り添っているのを感じられた。快適さとクラフトマンシップ、強さと軽やかさ──相反する要素を調和させた“シンプルな佇まい”は、ブランドの新章が幕を開けるとともに、次なる進化への期待を大きく膨らませる。