TROVE(トローヴ)の2012-13年秋冬コレクション。テーマは「pottery(陶器)」で、陶芸家のアダム・シルヴァーマン(Adam Silverman)の作品からインスピレーションを得たという。陶器の凛とした静けさやひんやりした佇まい、それでいて自然界に近い、風化のように時を隔てる感覚に惹かれ、それを洋服で表現できないかと考えたのがきっかけだった。
トローヴの秋冬コレクションは90%がオリジナルのテキスタイルで、シルクやレーヨン、テンセルといった糸を混ぜながらしなやかさや滑らかさを重視して作られている。今季はそれに加えて陶器の複雑な色味や、鉱物の粒子、うわぐすりによる質感を表現するため、複雑な配色の糸やプリントで鉱物の雰囲気を表現した。さらにウールをベースに用いながらも、陶器のひんやりした雰囲気を出すことを意識した。
デザイナーの上出もお気に入りだというドルマンスリーブのブルゾンや袴のようなパンツ、大きな襟のコートは、ゆったりしたシルエットが特徴的で、リラックスした落ち着いた男性を印象づけている。また視覚的にもリラックスできるようこだわり、眠りを誘うような柔らかな配色や、複雑なカラーネップを使用するなど様々な要素を加えた。一方で襟を立てたコートやアウターから覗くシャツ、裾を絞ったパンツはスッとした大人の男性をイメージさせる。
見る者の気持ちまで温かくするトローヴならではの雰囲気を残しつつも、小さいことに捉われず日々をゆったりと、でも着実に生きる、そんな凛とした男性像を浮かび上がらせるコレクションに仕上がった。