トム フォード(TOM FORD)の2026年春夏コレクションが、2025年10月1日(水)、フランス・パリにて発表された。
今季のトム フォードには、「誘惑」の危険な香りが漂っている。欲望の対象を見るように、あるいはその距離を縮め、触れたいという思いを誘い出すように。モデルたちは静かに視線を送りながら、観る者を官能の世界へと誘う。
コレクションの主役となるのは、魅惑的な威厳を放つテーラリング。艶めくレザーやシルクのウィメンズジャケットは襟を立て、端正なペンシルスカートやトラウザー、ポインテッドトゥのパンプスとコンビネーション。メンズは首元にスカーフを巻き、そこからふいに素肌を覗かせている。どのルックも気高く、端正で、隙がない。それでいて、濃厚な色気を纏っている。
より直接的に官能を匂わせるのが、ランジェリーやナイトウェアを思わせるピースだ。シルクのスリップドレスが素肌をほのめかし、バスローブ風のホワイトのロングコートが内面の親密さを演出。レザージャケットは繊細なレースで切り替えられ、中に忍ばせた三角形のマイクロブラを透かしている。
際どいカッティングやスリットによる肌見せディテールも印象的。特にイブニングドレスはその構造が芸術の域まで達しており、首元から細い紐1本でスカートを繋いだ挑発的なシアードレスや、ボディと切り離されたパーツがバストを覆うようなデザインのブラックドレス、胸元を大きくV字にカットしつつも肩紐を排したドレスなどが登場した。
テクスチャーは、上品な光沢のシルク、レザー、カシミアに喜びを見出して。時折、スポーツのエッセンスを感じさせるナイロン素材のマイクロショーツや、しなやかに揺れるシアー素材のドレスを織り交ぜ、軽やかさをプラスした。
深い海を思わせる群青色の会場で描かれる、大胆な色彩の移ろいも心を打つ。白の高貴な輝きに始まり、次第にブラウンやブラックの官能的な深みに誘われていく。フィナーレでは、イエロー、ピンク、グリーン、オレンジ、パステルブルーの閃光が差しこまれ、ドラマティックな終幕を迎えた。