ホラー映画の撮影に付き物な“不思議な現象”は起こりましたか？

菅野：ロケ地のトンネルは実際に心霊スポットとして有名な場所でした。私は全く霊感がないので何もわからなかったのですが、子役の男の子が「緑色の人がいる」って言っていました。

赤楚：なんか言っていましたね。緑色の人……。
あと、僕が現場に入る前に「既に怪奇現象が起きてます」とスタッフの方から言われました。映像が全然撮れてなくて、全部画面が真っ黒だと。怖かったですね。

それに僕、チーム全体のお祓いにタイミングが合わず行けなくて、別で行かせていただいたんです。神主さんがお経読んでいる途中で咳き込んで、声が出なくなってしまった時は「終わった。僕、呪われた」って思いましたね(笑)。

撮影中は、『近畿地方のある場所について』の物語を思い出して「怖くて眠れない…」なんてことはありませんでしたか？

菅野：昔とは違って流石に今は大丈夫だぞって感じ(笑)。今はまだ子供に手がかかるのでいつでも作品に出演できる状態ではなく、久しぶりの現場でした。そういった意味では一期一会といいますか、「現場に出れて嬉しいな、ありがたいな」という気持ちが大きかったです。

赤楚：僕もこの年だったら流石に大丈夫でした(笑)。どちらかというと撮影期間はワクワクが止まらなかったです。演技1つ1つにホラーを感じる瞬間があったりと新鮮な日々で、白石監督と相談しながら映画を作る過程がとても楽しかったですね。

白石監督ならではの演出や印象に残ったやり取りはありますか？

赤楚：例えばドアノブをひねる動作とか、純粋な動き1つ1つにも拘りがある。ホラーに限らず、モノづくりに対して本気に取り組まれる姿を見て、ピュアで強烈なエネルギーを感じました。

菅野：私は台本がちょうど100ページだったのも印象的でした。映画の構成が明確な数式のように整理されていたんです。そうした美しい構造があって初めて怖い物語ができるのかもしれない。過去にご一緒した監督でも、感情ではなく計算で演出される方がいらっしゃいましたが、今回もまさにそれを感じました。

最後に、映画『近畿地方のある場所について』を見られる方へメッセージをお願いします！

赤楚：千紘さんと小沢の会話からだんだんと謎が浮かび上がり、映画を見ている方も登場人物の3人目として感じられるような作品です。追体験していただけたら、この恐怖をより楽しめるんじゃないかなと思います。

菅野：電波って目に見えないけれど絶対あるってみんな信じているじゃないですか。この映画も、自分の現実とは関わりのないことだと思って安心してもらってもいいですし、本当にあったら怖いなって怯えてもらってもいいですし、それぞれの皆さんの楽しみ方で見ていただけたらと思います。

それと私自身、脚本を最後まで読んで、今の私だからお話をいただけたんだなと思ったことがありました。ホラー作品はこれまでもやらせていただいていますが、以前の向き合い方とは違った取り組み方で、勉強になる機会をいただけた映画になっています。

【作品詳細】
映画『近畿地方のある場所について』
公開日：2025年8月8日(金)
監督：白石晃士
脚本：大石哲也、白石晃士
脚本協力：背筋
出演：菅野美穂、赤楚衛二
音楽：ゲイリー芦屋、重盛康平
主題歌：椎名林檎「白日のもと」(EMI Records / UNIVERSAL MUSIC)
配給：ワーナー・ブラザース映画