若い客で賑わう昼下がりのカフェで、残忍な殺人事件が起こる。しかし犯人と思わしき坊主頭の中年男はその手に一切の凶器を持っていない。男が近づいて接触するだけで、触られた人が次々血を吹きだし倒れていくのだった。事件の報せを受けた警察の面々は、防犯カメラに映るその光景を前に言葉を失うが、捜査を続けるうちに、数年前に万引きの疑いで調書を取られた一人の男が、今回の坊主頭と同一人物であることを突き止める。その男の名前は、「山田太郎」。山田の自宅住所に行くと、そこには腐敗した一人の女性の死体があった……。
映画『名無し』は、佐藤二朗初の同名漫画を原作とする作品。数奇な運命を背負った異能で“名前のない怪物”である男の希望と絶望、そして狂気を描破するサイコ・バイオレンスとなっている。映画化にあたり、原作者である佐藤二朗が脚本と主演を兼任。映画『悪い夏』や『嗤う蟲』などで知られる城定秀夫が監督を務め、無軌道な殺人に手を染めていく“名前のない怪物”を、城定独自の渇いた目線と巧みな映像表現であぶり出していく。