「プーシキン美術館展――旅するフランス風景画」が、上野の東京都美術館で2018年4月14日(土)から7月8日(日)まで、大阪・国立国際美術館で2018年7月21日(土)から10月14日(日)まで開催される。
ロシアのモスクワにあるプーシキン美術館は、珠玉のフランス絵画コレクションを誇る美術館。特に、19世紀後半から20世紀初頭にかけて収集された近代絵画は、世界的に見てもハイクオリティーな名作が揃う。
今回開催される「プーシキン美術館展――旅するフランス風景画」では、クロード・モネ、ピエール=オーギュスト・ルノワール、ポール・セザンヌ、ポール・ゴーガンといった画家達による、17世紀から20世紀の風景画65点が来日。神話の世界やパリ、想像上の風景に至るまで、様々な土地を舞台に描かれたフランス近代風景画を展示する。
モネの《草上の昼食》が日本初公開。自然の中で人々が休憩し、食事を楽しむ風景を、柔らかな色彩と巧みな光の表現でみずみずしく描いた19世紀後半の作品だ。このような風景は18世紀のロココ美術においても好まれたテーマであり、当時の風景だけではなく、伝統的絵画も視野に入れながら制作されたことがうかがえる。その他、パリ近郊のジヴェルニーにモネがつくりあげた「水の庭」に浮かぶ睡蓮を描いた《白い睡蓮》も登場。清々しい自然を思わせる木々や水面の表現が印象的だ。
ギリシア神話の一場面の背景として描かれた、クロード・ロランの《エウロペの掠奪》。澄み渡る青空を背景に繰り広げられるのは、白い牡牛に姿を変えたゼウスによる王女エウロペの“連れ去り”。穏やかな風景と裏腹に、暴力的なシーンを切り取った作品だ。
古代ギリシア・ローマ時代の遺跡に残る、ポセイドン神殿を描いたのはユベール・ロベール。《水に囲まれた神殿》では、躍動的に描かれた人々や、奥行きのある推移麺の表現が、神殿の存在感を際立たせている。
パリにあるサン=ミシェル橋を俯瞰したアルベール・マルケの《パリのサン=ミシェル橋》は、落ち着いたトーンの色調と、対象物をデフォルメすることによって生まれる味わい深さが感じられる作品。街の風景を詩情豊かに描いている。
ルノワールの《庭にて、ムーラン・ド・ラ・ギャレットの木陰》は楽しそうに語り合う男女を描いた穏やかな絵画。タイトルのムーラン・ド・ラ・ギャレットはパリの大衆的なダンスホールだが、描かれているのは喧騒から少し離れた木陰だ。人々も自然も優しいタッチで描かれており、幸せな時の流れを感じられる作品だ。
ゴーガンが原始的な暮らしを求めてタヒチへ渡った際に描いた《マタモエ、孔雀のいる風景》。穏やかに暮らす孔雀や人の様子を、ビビッドな色使いによって暖かく表現。文明と離れた、プリミティブな暮らしが見て取れる。
熱帯のジャングルを舞台にしたアンリ・ルソーの《馬を襲うジャガー》。野生動物の凄惨な場面であるにも関わらず、周りを取り囲む植物が青々と茂る様子や、澄んだ青空によって、まるで楽園のような幻想的な雰囲気が漂う作品となっている。