北村さんは、キャスティングについて「我々は仕事に⽣き仕事に死ぬ⼈種。⾺⿅正直な3⼈が奇跡的に集まった。」とコメントされていました。
北村:「僕たちは⽣涯仕事をして、仕事の先に死がある」という⾔葉は、実は『愚か者の⾝分』の現場で剛さんから⾔われたものなんです。これを聞いた時、なるほどって。僕も剛さんも個では⽣きられない、他者を必要としながら仕事をしている部分が似ているのだと思いました。
綾野剛さんの意図は何だったと思いますか?
北村:剛さんが伝えたかったのは、きっと「幸せになれ」じゃないかな。仕事のことしか頭にない、似た者同⼠の剛さんから僕に対する「幸せになって役者やってろ」というメッセージ。裕太も幸せにならなきゃね、という思いを込めて「我々は仕事に⽣き仕事に死ぬ⼈種。⾺⿅正直な3⼈が奇跡的に集まった。」コメントを書きました。
⾔葉通りプライベートでも“役“のことばかり?
北村:僕ら、基本仕事の話しかしてないんですよ。プライベートでくだらない話をするかと思いきや、ほんとに役者の話ばっかり。そういう時間がすごく楽しいんです。で、本当に⼈⽣を幸せに⽣きなければ、役者として正解は出せないと思っていて。8割は技術かもしれないけど、残り2割はその⼈の“⼈⽣”が出るのが役者だと。
林さんに対して、どんな“願い”を持っていますか?
北村:もちろん、裕太の⼈⽣が幸せになることを願ってますよ。でも、幸せじゃない瞬間が訪れても、役者ってそれすら⽣かせてしまうことがある。だから、そういう⼈⽣も肯定してあげられる。
それらも含めて、僕ら3⼈は仕事に⽣きて仕事に死ぬ⼈間だからこそ、こいつら誰より幸せそうだなって思われたいよね、という願望も込みで書いた⾔葉でした。
林さんは、先輩⽅お2⼈と何かシンパシーを感じる部分はありましたか?
林:⾃分で⾔うのも少し恥ずかしいのですが、アプローチは違っても、役への誠実さは同じだと感じました。嘘がつけないというか、思っていることに正直。それが良くも悪くも態度に出る。僕もそうだし、匠海くんも剛さんも“そこは⼀緒だ”と話していて、その共通点には強いシンパシーがあります。同じ感覚を共有できるからこそ、”お2⼈を⽬指して突き進んでいい”という安⼼感をもらえました。
北村さんは「あんぱん」や『悪い夏』、林さんは「⻁に翼」「御上先⽣」など、その時代の社会問題を描いた作品に多く出演しています。何か使命のようなものはあるのでしょうか?
北村:役者としてまず第1歩⽬に考えることは、作品のメッセージの部分というより、役とどう向き合うか。⾃分で監督をして思ったのは、役者は撮影が終わった瞬間、編集に⼊った途端に“素材になる”。そうなると僕らができることって、役と誠実に向き合う、現場に向き合うことだけです。映画が完成して試写で観た時に、初めて僕らはそのメッセージ性というところを⾔葉にできるのかなと思っています。
『愚か者の⾝分』の若者の貧困、「悪い夏」の⽣活保護、「あんぱん」の戦争。役者の僕らにしか伝えられない部分や使命感はあります。ただ、メッセージ性を受け取ってほしいという部分に固執すると重く硬くなり、エンタメではなくなります。メッセージ性をピュアに届けるのなら僕はドキュメンタリーの⽅が好きです。エンタメにするなら、誰かの逃げ場所であって欲しいなと。極端な例ですが「疲れた、じゃあ『愚か者の⾝分』観よ。」というような感じ。それがエンタメのあり⽅として正解の⼀つなのではないかと思います。この映画が、僕を含め世界の“愚か者”の逃げ場所になれば良いなと思います。
林さんはいかがでしょうか。
林:作品の社会的なメッセージを役として“背負い込む”ことはしません。制作者や原作者の意図はきちんと受け取りますけども…。
僕は役者として良くなるためには、まず他⼈に興味を持つことが⼤切だと思います。他⼈に興味を持って、その考えを理解しようとすると、⼈に優しくなれるような気がして。そして、⾒ている⼈もその意識を育むことができたら、もっと⼈は⼈に優しくなれる。社会的メッセージの根本には、他⼈を思いやる気持ちがあるはずなので、そこを⽇々意識しています。
最近ハマっていることはありますか?
林:僕はオムレツを作ることです。
北村:オムレツ?
林:最近、昼はオムレツって決めてるんです。
北村:毎⽇?
林:はい、毎⽇です。
北村:あなた、おもしろい⼈だね〜(笑)。
林:(笑)。卵って、“完全栄養⾷”というくらいすごくバランスよく栄養を採れるんですよ。それを昼に2つ⾷べれば、毎⽇健康でいられるんじゃないかと思って。でもゆで卵だとなんだか味気ない。せっかくなら料理も上⼿くなっちゃおうということで、パッカーンって開くふわトロオムレツに最近はずっと挑戦しています。
北村さんは、最近夢中になっていることはありますか?
北村:僕は趣味がめちゃくちゃ沢⼭あるのですが…。最近はゲームとどう向き合うかということしか頭にないです。
林:(笑)。
北村:ゲームのために早起きしたり(笑)。
朝から覚醒しそうですね(笑)。
北村:はい。指先を⾼速で動かしてます(笑)。
お2⼈ともファッションはお好きですか?
林:僕は最近やっと興味が出てきました。普段はストリート系の服が好みです。まだファッション初⼼者なので、これからもっと勉強していきたいです。
北村:僕はシンプルなデザインが好きです。そういえば最近、シャツを⼀気に20着くらい買いました。
林:ええっ!
北村:なかなかゆっくり買い物に⾏けるタイミングがないので、「この⽇に懸ける!」という気持ちで⼤⼈買いしました。お気に⼊りのお店があるので、店舗に⾏って、とりあえず気になるシャツを全部試着して。物欲はしっかり満たされました。
最近の“ベストバイ”を教えていただけますか?
北村:昔の⼤戦モデル(※第⼆次⼤戦中に作られたリーバイスの戦時仕様)を基にしている新品のデニムを買いました。その場に⽴つくらい硬いデニムなんです。これを育てに育てたら、いつか⾃分の息⼦が⽣まれて、20歳くらいになった時に渡せるなと思って。
林:かっこいいっすね。
北村:そのデニムを履いてお⾵呂に⼊るんですよ。⾃分のしわを作るために。履いたままシャンプーしたり、屈伸したりして。
林:へえー!すごい!
北村:1回でも洗濯すると、変なところが予期せず⾊落ちしてしまうので、もうノンウォッシュ。1回も洗わずに⾵呂に⼊るわけです。
林:⼀緒に服買いに⾏ってほしいです。⾏ったことないから。
北村:いや、おしゃれだよね裕太。
林:匠海くんだって、こんなにマニアックに服を育てている⼈ってなかなかいないですよ。
北村:僕のこのマニア感って、別に⼈に「おしゃれだね」と⾔われるタイプではないというか…。あんまり伝わらない。
林:(笑)。
北村:「それってただのデニムじゃん」って⾔われたらそれまでです。
林:でもそれを⾃分で満⾜して着ることに意味があるんです。
北村:そうそう。服は⾃⼰満⾜だからね。誰かのために着るもんじゃない。
【作品詳細】
映画『愚か者の身分』
公開日:2025年10月24日(金)
監督:永田琴
脚本:向井康介
出演:北村匠海、林裕太、山下美月、矢本悠馬、木南晴夏、綾野剛
原作:西尾潤「愚か者の身分」(徳間文庫)
主題歌:tuki.「人生讃歌」
配給:THE SEVEN ショウゲート
<あらすじ>
SNSで女性を装い、言葉巧みに身寄りのない男性たち相手に個人情報を引き出し、戸籍売買を日々行うタクヤとマモル。彼らは劣悪な環境で育ち、気が付けば闇バイトを行う組織の手先になっていた。
闇ビジネスに手を染めているとはいえ、時にはバカ騒ぎもする二人は、ごく普通の若者であり、いつも一緒だった。タクヤは、闇ビジネスの世界に入るきっかけとなった兄貴的存在の梶谷の手を借り、マモルと共にこの世界から抜け出そうとするが……。
©2025 映画「愚か者の身分」製作委員会