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ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)が東京・表参道に展開するエスパス ルイ・ヴィトン東京では、ケリス・ウィン・エヴァンスの個展「L>espace)(...」を、2023年7月20日(木)から2024年1月8日(月)まで開催する。
ケリス・ウィン・エヴァンスは、1958年イギリスのウェールズに生まれ、ネオンを使用した大型作品などを手がけてきた美術家だ。イメージやテキスト、光、音、ビデオなどを用いたその作品は、空間における形の顕在化への探求、あるいは知覚や認識、言語に着目するものである。また、しばしば文学に着想を得ている点も特徴だといえる。
エスパス ルイ・ヴィトン東京での個展「L>espace)(...」では、現代美術やその源泉となった20世紀の作品を所蔵するフォンダシオン ルイ・ヴィトンのコレクションから、ウィン・エヴァンスの作品を紹介。ネオンを使った作品をはじめとする5点を展示する。
ウィン・エヴァンス作品における主題のひとつが、翻訳だ。とはいえそれは、相異なる言語のあいだで交わされる、一般的な翻訳にとどまるものではない。本展で展示される「Chandeliers」シリーズの一部、《"Lettre à Hermann Scherchen" from 'Gravesaner Blätter 6' from lannis Xenakis to Hermann Scherchen (1956)》は、その一例だろう。同作は、シャンデリアの光の瞬きがモールス信号となり、テキストをあらわすものだ。
通常、言葉は「透明」なものである。つまり、ふつう読み手が紙に書かれた文章を読むとき、ページに並ぶ黒い文字を読み取り、その意味するところを受け取れば、文章はいわば消え去ってしまう。ここで、情報が文章から読み手へとノイズなく伝達されるという意味で、言葉の物質性は介在していない。しかし、たとえば強烈なフォントの文字であれば、文章の内容がどういうわけか頭に入ってこず、白いページの上に踊る文字が、黒々と、厳とした存在感をもって立ち現れることもあるだろう。
本作では、言葉がモールス信号という記号に置き換えられ、それがさらにシャンデリアの光として可視化される。本展では、テキストをネオンであらわした作品が展示されているが、翻って「Chandeliers」においては、短点と長点へとリズミカルに符号化された文章が、さらに明滅する光へと翻訳されることで、たんに言葉の意味を置き換えるにはとどまらないテキストの側面が引き出されることになる。ここでは、翻訳の、言葉と言葉のあいだの不透明性が、魅力的に立ち現れているのだ。
ちなみに、《"Lettre à Hermann Scherchen" from 'Gravesaner Blätter 6' from lannis Xenakis to Hermann Scherchen (1956)》で用いられている文章は、作曲家・建築家であるヤニス・クセナキスが、指揮者のヘルマン・シェルヘンに宛てた手紙。その末尾に記されている「思考は直線的でない」という捉え方は、ウィン・エヴァンスと響きあうものであるといえる。
一方、展示空間をクラゲのように浮遊するかのような《A=F=L=O=A=T》は、20本のガラス製フルートから構成される彫刻作品であり、建築家フランク・ゲーリーの設計によるフォンダシオン ルイ・ヴィトンの建物を音によって彷彿とさせるものであるという。
いま、この作品のタイトルに着目するならば、「A=F=L=O=A=T」とは「afloat (＝浮いている)」を意味するばかりでなく、その響きに「a flute (1本のフルート)」を含み持つものだといえる。同作の浮遊するかのような造形、そして建築と音響のあいだの翻訳関係は、このように言語の意味を宙吊りにすることにも、おぼろげに反映されているのではなかろうか。
さらに、本展では、ウィン・エヴァンスの代表作であるネオン作品から、《Sentiment》や《...in which something happens all over again for the very first time》を展示するほか、ひじょうにゆっくりと回転するため、一瞬静止しているかのように認識されうるターンテーブルの上に、松の木を設置した作品《Still life (In course of arrangement...) Il》を公開している。
ケリス・ウィン・エヴァンス 個展「L>espace)(...」
会期：2023年7月20日(木)〜2024年1月8日(月)
会場：エスパス ルイ・ヴィトン東京
住所：東京都渋谷区神宮前5-7-5 ルイ・ヴィトン表参道ビル 7F
開館時間：12:00〜20:00
※休館日はルイ・ヴィトン 表参道店に準ずる
入場料：無料
【問い合わせ先】
TEL：0120-00-1854
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