ミカゲ シン(MIKAGE SHIN)が、2022年春夏コレクションを東京・渋谷ヒカリエで2021年8月30日(月)に発表した。
今季は、1920年代、建築家の野田俊彦による『建築非芸術論』に反対意見を表明した「分離派建築会」からインスピレーションを得たという。「分離派建築会」は、建築の芸術性と美学を日本で初めて主張し、新しい時代を切り開こうとした日本で初めて近代建築運動を担った組織。そんな彼らに感銘を受けたデザイナーの進美影は、混沌とする今の時代に重ねて、自分たちでこれからの時代を切り開き、可能性を模索していく、という意思表示的なコレクションを目指した。
キーワードに掲げたのは、「分離派建築会」の特徴であった“都市と田園”、そして“彫塑的なもの”。
このキーワードを顕著に表していたのが、ファブリックの組み合わせだ。アーキテクチュアルなエッセンスを加味する角のあるショルダーラインのジャケットは、上半分にフォーマル地を、下半分には田園柄を採用している。どこか懐かしいタペストリーのような田園柄は、デザイナー進美影自らが手書きしたものだ。先進的なものではなくあえて懐古的な要素を取り入れたのは、新しい道を突き進む上での迷いのようなものを表したのだという。
また、曲線や流動的なラインは、分離派建築の最たる特徴とされている。アーチ状にカットアウトされワンピースの裾、“穴のあいた”トップスなどがそれを物語る。トップスやワンピースの随所に見られる、ノットやボタンによって繋ぎ合わせられた平面的な構造は、建築からのインスピレーションを色濃く感じさせた。コートやワンピースに見られるシアーな素材のレイヤードやプリーツの立体的かつ流動的な動きもまた、彫刻的な建築を彷彿とさせる。
2つのキーワードを盛り込む以外に、今季は“芸術性”を重視した彼らに倣って、ファッションの芸術性への回帰を試みた。これはミカゲ シンのデビューコレクションから変わらない、ともに服を作り上げる職人たちへのリスペクトを意図するデザインの延長にある。ものづくりをしている人々の意匠やアート性を純粋に楽しんでほしいという思いのもと、今季は日本の麻織物などを取り入れている。