バーバリーのトレンチコートの魅力を語る上で欠かせないのは、その素材である「ギャバジン」だ。「ギャバジン」は、1cmあたり100本以上もの糸を織り合わせた高密度な生地で、わずかな隙間から通気性を保ちながら、雨水の浸透を防いでくれる。また、3回の撥水加工を施すことで、より撥水性を高めている。
「ギャバジン」は、1879年、トーマス・バーバリーによって開発された。「ギャバジン」登場以前にレインウェアに用いられていたオイル引きやゴム引きの布地は、高い撥水性を備えているものの、重さや着心地の面から長時間の着用には向かなかった。その点、「ギャバジン」は軽量で通気性が良く、開発当時のレインウェアに革新をもたらしたといえる。
ちなみに1911年にノルウェーの探検家ロアルド・アムンゼン大佐が南極点到着レースにて、一番乗りを果たしていた時に身にまとっていたのも「ギャバジン」。さらに、20世紀初頭には、3度の南極探検に赴いたアーネスト・シャックルトンも防寒着として「ギャバジン」の衣服を着用していた。
「ギャバジン」は現在も、英国内のバーバリーの工場で生産されている。独自の伝統的手法や技術を踏襲しつつ、仕上げに最新技術の工程を加えることで、開発当時よりもさらに撥水性を向上させている。原材料には最高級の超長綿を採用することで、滑らかな手触りと高い耐久性を実現。色味にも厳しい基準が設けられており、熟練の専門家によるチェックをはじめ、最終工程までに数回、目視による検査が行われている。
尚、2018年に「ヘリテージ トレンチコート」をリモデルした際に、「ウエストミンスター」にのみ、より軽量化させた「トロピカルギャバジン」を使用。「ヘリテージ トレンチコート」としては初の試みとなる。
熟練の職人たちによって生み出されるバーバリーのトレンチコートは、クラフツマンシップの光る高い品質も魅力的なポイントだ。
バーバリーのトレンチコートの生産拠点は、英国北部に位置するウェストヨークシャー州キャッスルフォードの工場。伝統的な手法と最新技術を駆使しながら、完成までに100にも及ぶ工程を経て生産される。
熟練した高い技術を必要とする、数々の工程の中で最も難度が高いのは、襟付けの工程だ。首まわりにぴったりと沿うよう緩やかなカーブを襟につけるために、襟の長さに合わせて180針以上のステッチが手縫いで施されている。バーバリー社で受け継がれてきた、細やかな手法が採用されている。
また、トレンチコートのライナーには、60年代に使用されていたヴィンテージチェックを採用。注目したいポイントは、チェック柄に合わせて裏地がぴったり左右対称になっている精巧な仕立てだ。特に襟の裏地は45度の角度で斜めに縫い合わせられ、チェック柄が襟の中心で完璧に交差している。ちなみに、初めてバーバリーチェックがトレンチコートの裏地に採用されたのは1920年代のことだ。