21_21 DESIGN SIGHTで4月27日より開催される、「テマヒマ展〈東北の食と住〉」。三宅一生とともに21_21 DESIGN SIGHTのディレクターを務める、グラフィックデザイナー 佐藤 卓とプロダクトデザイナー 深澤直人の視点から、東北の「食と住」に焦点を当てた展覧会。合理性を追求してきた現代社会が忘れてしまいがちな「時間」の概念が今もなお生き続けている東北のものづくりに焦点を当て、今後のデザインに活かすべき知恵や工夫を探る。
展覧会の詳細はこちらの記事でチェック:
東北のものづくりの魅力に迫る「テマヒマ展〈東北の食と住〉」が21_21 DESIGN SIGHTで4月に開催
開催に先立ち、この展覧会に関わる7名からのメッセージを紹介。また、関連プログラムも多数開催予定なので、併せてチェックしたい。
■佐藤 卓(さとう たく)/グラフィックデザイナー
「今、残っている素晴らしい手仕事を褒めたたえることは容易いが、どうしてこの地域に残ってきたのかを掘り下げ、そしてその精神をなんとか未来に残していく方法を探らなければならない時がきている。なぜなら、その永い間受け継がれてきた日本のものづくりの精神が、近代の合理主義により急速に消えつつあるからだ。この展覧会で、少しでも東北に残る日本のアノニマスなもの達に接していただき、日本のものづくりを今一度考えるきっかけにしていただければ幸いです」
■深澤 直人(ふかさわ なおと)/プロダクトデザイナー
「自然と季節の力を借り、それも無駄のない一つの道具として授かり、日々の恵みとして蓄え続けて行く様。この停まることのない緩やかな循環が東北の人の生きるペースである。この生活には『テマヒマ』がかかっている。しかし穏やかで強く、迷いがない。このペースは自然と共生して来た長い経験によって、エコロジカル(生態的)な営みに同期し破綻がない。…東北には今、人が見失いかけている真の豊かさの定義と、飾らない美の真髄が潜んでいると確信している」
■奥村文絵(おくむらふみえ)/フーデリコ株式会社 代表取締役、フードディレクター
「本展のために東北の山、海、里を巡り、美しくも厳しい自然を肌で感じるとともに、人々が食べ繋ぐために培ってきたこの地の食の知恵に驚きました。…震災から繋がる『食べる』の未来地図を描くうえで、懐かしい知恵と工夫は実に多くの示唆に溢れています。本展でデザイン的視点から料理した『テマヒマ』をじっくりと味わっていただき、これからの暮らしの手がかりを皆さんと共有したいと思います」
■川上典李子(かわかみ のりこ)/ジャーナリスト
「手や身体を動かし、作業の反復という時を重ねることで蓄えられてきた “知”。誠実なデザイン、信頼できるものづくりをいかに実現できるのか、さらには生活とは何かを改めて考えるべき今、『東北の食と住』は現代社会が抱える様々な課題を示すと共に、我々に多くのことを気づかせてくれます」
■トム・ヴィンセント/株式会社トノループ・ネットワークス代表
クリエイティブ プロデューサー、ナレーター、TVプレゼンター
「人々の『テマヒマ』は美しく、その『美』に出会うと同時に、背景にある日本社会の厳しい現状や、全世界に通じる多様な可能性が隠されていることに気づくきっかけになれば、何よりも嬉しいです」
■山中 有(やまなか ゆう)/映像作家
「奥会津の九十歳になる、マタタビ編み細工職人・五十嵐文吾さんは静寂の中、一日ひとりきりで仕事している。でも孤独ではない。なぜならば口ではなく、手が常に忙しく饒舌に編み細工と対話している、そんな風に感じた」
■西部裕介(にしべ ゆうすけ)/フォトグラファー
「レンズ越しに職人の作業を見つめると一定のリズムが見えてくる。それは『反復』『羅列』『一定』などのリズムであり、出来上がった製品には、多分にデザインの要素が含まれていた。そして新しい『テマヒマ』を写真で表現できればと思う」
【関連プログラム】
会場:21_21 DESIGN SIGHT 参加無料(当日の入場券が必要)
■オープニングトーク
日時:4月28日(土) 14:00~16:00
出演:岸本誠司(東北芸術工科大学東北文化研究センター)、佐藤 卓、深澤直人、奥村文絵、川上典李子
■展覧会企画チームによるギャラリーツアー
日時:5月4日(金・祝)、12日(土)、26日(土)、6月2日(土)、9日(土)、16日(土)、30日(土)
時間:各日程全て14:00~15:00。
7月以降も会期中開催予定
※この他にも会期中様々なプログラムが開催されるので、参加方法・詳細はウェブサイトや公式Twitter、Facebookの展覧会最新情報をチェックしよう。
ウェブサイト:http://www.2121designsight.jp/
【展示内容】
■ギャラリー1
映像上映:トム・ヴィンセント、山中 有 「『テマヒマ展〈東北の食と住〉』のための映像」/約30分/新作
青森県のりんごの木箱、福島県の奥会津編み組細工(マタタビ細工)、秋田県のきりたんぽ、山形県の笹巻きなどを取り上げ、東北の文化と精神を背景に生まれる「食と住」のものづくりの現場を追った映像作品。
■ギャラリー2
東北6県の「食」と「住」にまつわるものづくりから、約70アイテムの実物を制作プロセスや、西部裕介による撮りおろし写真を交えて紹介。
■「食」の展示一例
いわしの焼干し(青森県むつ市)、津軽飴(青森県青森市)、干し菊(青森県三戸郡南部町)、いぶりがっこ(秋田県横手市)、みそたまり(秋田県湯沢市)、凍みいも(岩手県九戸郡野田村)、凍み餅(岩手県一関市)、車麩(山形県東根市)、油麩(宮城県登米市)、へそ大根(宮城県刈田郡蔵王町)、寒干し大根(福島県南会津町)、東北6県の駄菓子
■「住」の展示一例
「柏戸イス」(山形県天童市)、臼と杵(山形県山形市)、秋田杉桶樽(秋田県大館市)、曲げわっぱ(秋田県大館市)、樺細工(秋田県仙北市)、津軽塗(青森県弘前市)、浄法寺漆器(岩手県二戸市)、小久慈焼(岩手県久慈市)、りんご剪定ばさみ(青森県弘前市)、竹細工(岩手県一戸市)、奥会津編み組細工(福島県大沼郡三島町)、桐下駄(福島県喜多方市)、南部箒(岩手県九戸郡九戸村)
*カッコ内は今回の展覧会のリサーチの協力地域。東北6県の生産地より一部抜粋。