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様々なジャンルを組み合わせる上で、それらのバランスはどのように保っているのでしょうか?

それは本能的な部分が大きいです。だからこそ、自分で作品全体の“トーン”をコントロールし、日々の撮影現場できちんと保っていくことが重要だと思っています。映画を撮影する前に作品のあるべき姿は見えているので、アクションのリアリティ、音楽のチョイス、キャラクターがどんなリアクションをするのか、演技の大・小など、自分のイメージを、スタッフとコミュニケーションを取りながら伝えていきます。

『ベイビー・ドライバー』ではカーアクションと音楽が融合していますが、そのアプローチのアイデアはどのように生まれたのでしょうか?

アイデア自体を思い付いたのは、『ショーン・オブ・ザ・デッド』を製作するよりも前のことです。21歳の時に、劇中でも使われているジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョンの「ベルボトム」を聞いて、「これはカーチェイスにぴったりだ。映画に使ったら最高だ」と思ったのがきっかけ。その時から音楽とアクションを融合させるビジョンは持っていて、長いスパンで製作できないかとずっと考えていたんですが、そこで思いついたのが、音楽なしでは生きられない若きドライバーの物語。『ベイビー・ドライバー』は、いわば音楽から生まれた映画なんです。

エドガー・ライト インタビュー|写真23

主人公のベイビーは、事故の後遺症で音楽がないと生きていけない人物ですね。

ベイビーは元々音楽を常に聴いていて、音楽を聴いている時でしか機能できないキャラクター。オリヴァー・サックスの『音楽嗜好症』という書籍の中で、人によっては耳鳴りの症状を抑えるためにずっと音楽を聴いている人もいると知って、それも参考にしています。

エドガー・ライト作品は特に、音楽との強い結びつきを感じます。最初に選曲した30曲をベースにストーリーを構成されたそうですが、監督にとっての映画と音楽の関係性とはどういったものでしょうか?

もちろん、撮る作品によってその関係性というものは違ってきますが、なにより僕は、作品の内容と音楽が共に深く作用し合っている作品が好きです。ただ、そのやり方も様々で、作品自体に物凄く良いオリジナルのサウンドトラックがある事もあれば、『ベイビー・ドライバー』のように既存曲をメインにオリジナル曲も組み合わせるケース、あるいは逆に音楽を使わないことで意味を持たせる作品もあるかもしれません。

『ベイビー・ドライバー』について言えば、全ての楽曲が、物語の中で、それぞれのシーンと合致した形で存在していること。また、(アクションシーンだからただテンポの速い曲を使うというわけではなく)全てのシーンにおいて、きちんとした理由があってその曲を使用している。これは、この映画を撮っていて自分でも気に入っている部分の一つですね。

エドガー・ライト インタビュー|写真30

どのように音楽と演技をシンクロさせたのでしょうか?

撮影前のテストの段階から、音楽を現場でかけて撮影しました。セリフがないシーンは大音量で音楽をかけ、主人公ベイビーだけが楽曲を聴いているというシーンは(主役の)アンセル・エルゴート自身がヘッドホンで楽曲を聴いて撮影しています。また、すべての登場人物が楽曲に反応しているシーンでは、皆にイヤーウィックを使用して撮りました。シーンによって手法は違いますが、全編音楽をかけながらの撮影。ここで大きなキーとなるのは、出来上がった作品で流れる音楽をキャストも実際に撮影で聴いているということです。

音楽に合わせてベイビーがオープニングのカーアクションで乗りこなすのは、スバルのWRX。

実はトヨタのカローラをオープニングで使用する予定でしたが、スタントチームからアドバイスがあり、四輪駆動車でラリーカーと同じ走りができるセダンタイプのスバルWRXを最終的に起用しました。お陰でスバルファンには大変好評です。

また、これは逃走車を実際に運転していた人たちから聞いた話なんですが、彼らは街中を普通に走っていて、交通の流れに溶け込むような車を使うということでした。なので、劇中で使用する車については、高級車やド派手な車ではなく、銀行強盗という目的にあった実用的な車を使おうと。そこで、アメリカで一番多く盗難に遭っている車種を調べて、それを念頭に置きながら強盗シーンに使う車を決めていったんです。

エドガー・ライト インタビュー|写真21

カーアクションのシーンは、ほぼCGを使わずに実際のドライバーを使っているそうですが。

その通りです。なぜ今回なるべく物理的なアクションにこだわったかというと、リアリズムを追求するため。作るほうも見る方も、実際にリアルでやっている方がワクワクしますから。実は観客というのは、CGに対する理解がなくても、それがリアルであるか、そうではないかが、見ていてわかるものなんです。だからCGを全く知らない人が見ても、本当にやっていると、「リアルだ」と思ってもらえる。それから、僕自身がカーアクションを作るにあたって、道路でやらずCGでやるというのは奇妙な感じがするので、実際にやってみたかったというのもありますね。

エドガー・ライト監督は、現在、母国のイギリスから拠点を移し、L.A.に住んでいるそうですね。二つの都市にはカルチャーの違いがあると思いますが、いかがでしょうか?

L.A.には非常に興味深い文化的側面があります。ただ、ロンドンに居た頃の方が、海外の映画を見ることが多かったな、とふと思うことがあるんです。特にアジアの作品については、もっと劇場で見る機会があったと思います。L.A.だと上映されたとしても1、2館で、それもすぐ上映が終わってしまう。外国映画、特にインディーズ系の作品はそうですね。

アジアの作品もお好きなんですね。過去の作品を見ると日本のエッセンスを取り入れているものもありますが、個人的にインスパイアされた作品をあげると?

『ベイビー・ドライバー』を観た人からは、鈴木清順監督の『東京流れ者』に似ているとよく言われます。そのほか、10代の時に『HANABI』や『ソナチネ』、『その男、狂暴につき』など北野武の作品を観ていました。

エドガー・ライト インタビュー|写真14

ではL.A.の魅力は?

映画以外のところでいうと、アート全般、写真、コメディー、音楽。それぞれ都市によって特徴がありますが、例えばロンドンやNYは、劇場、お芝居が強いですよね。でもL.A.の場合は、音楽とコメディーのシーンが凄く活き活きとしていて、充実しているんです。

『ベイビー・ドライバー』にもその影響があるのでしょうか?

L.A.に住んでいる事が作品に影響を与えたか、でいうと、そうではないですね。インターネットの存在が重要で、例えばTwitterでタイムラインを見ていれば、英国で起こったことも、(ユーモラスなツイートと共に)大体把握出来ますから。

僕が好きなのは、常に沢山の情報に触れて、様々な物事を沢山知っているということ。なので、どこに住むかではなく、たとえば旅をして違ったユーモアに触れたりすることで、自分のセンスが幅広くなっていくという感覚が強いし、それが作品に影響を与えていると思います。

エドガー・ライト インタビュー|写真32

続編のオファーもきているようですが、具体的なアイデアはありますか?

実は続編の話は公開前からあったのですが、実際に作品に着手するまでは続編の事は考えていませんでした。製作中は、キャラクター達について考えるのが楽しくて、彼らが今後どうなっていくのかには僕自身も興味があります。ただ、今はまだ決定しているわけではないし、実際に話は出ている、ということだけお伝えしておきます。

作品情報

映画『ベイビー・ドライバー』
公開日:2017年8月19日(土)
監督・脚本:エドガー・ライト
製作:ニラ・バーク、ティム・ビーバン、エリック・フェルナー
出演:アンセル・エルゴート、ケヴィン・スペイシー、リリー・ジェームズ、エイザ・ゴンザレス、ジョン・ハム、ジェイミー・フォックス
原題:Baby Driver

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