ムッシャン(mukcyen)の2026年春夏コレクションが、2025年9月1日(月)に東京の渋谷ヒカリエ Aホールにて発表された。
ムッシャンは、日本生まれ、中国育ちのデザイナー・木村由佳が2023年に立ち上げたブランド。人の複雑さや時間の流動性に焦点を当つつ、映画や文学といった文化的要素を交差させ、独自の人間像を映す装いを提案している。ブランド初となる今回のショーは、真紅の月を思わせるライティングの中、円形の会場で行われた。
今季の着想源となったのは、2025年初夏に世間を騒がせた”2025年7月5日に日本で何かが起こる”という予言だ。様々な憶測と波紋を生んだあの予言を、”限りある時間を過ごすためのプロセス”と捉えた木村。この出来事が浮かび上がらせた、不確実で曖昧な未来への恐怖と、「今ある時間をどう生きるか」という問いに対して、有限的な日々を大切に過ごすための、そして突然訪れる”その日”を見据えた日常着を提案する。
このコレクションで木村が提示するのは、不明瞭な現実に対して動揺し、うろたえるような儚さや脆さではなく、身を防護し、つまずきを恐れない勇ましさの美。例えば、サイドから腕を通し、合わせから手を出すことで、けがをした際に腕を吊ることができるジャンパーは、“Xデー”に向けての備えを思わせる。
また、ドレッシーなウェアや非日常の幻想世界を落とし込んできたこれまでのコレクションとは異なり、スタイリッシュで機能的なアイテムが散見される。スタンドカラーのジャンプスーツには、肩や袖などにジッパーがあしらわれており、フォルムを変えて着用することができる。また、肩口からウエストまで大きく開くジッパーや、裾にふくらみを持たせることができるドローストリングを配したアシンメトリーなジャンプスーツも登場。着用者が求める姿に合わせた流動的なスタイリングを叶える。
ブランドを象徴するセカンドスキンは、繊細なドレープが際立つカットソーや、ホールをあしらったロングスリーブトップス、ブラトップなどに見られる。今季は保湿加工を施したキュプラ生地を重ねた仕立てで、長時間の着用に耐えるルームウェアのような肌触りと着心地を実現した。コレクション全体に散りばめられたシアーなこの素材は、リラックスした時間と身体を包み込むようでありながら、曖昧な未来にかけられたベールのようにも映る。
勇ましさの美、そして備えと防護に対する姿勢は、アクセサリーでも表現。メタルメッシュのアクセサリーは鎧のように肩や頭を守り、真紅のハーネスはスタイリングに芯ある力強さと凛とした佇まいをもたらしている。